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第4話

مؤلف: ちょうどいい
深夜、行き交う車はほとんどない。私は速度を上げた。

陽向の言い分に従い、まずは玲奈を送り届ける。

ほどなくして、車内は私と陽向の二人きりになった。

ハンドルに視線を落とし、私は言う。

「話そう」

陽向は鼻梁をつまみ、不機嫌さを隠そうともしない。

「今じゃなきゃダメか?十数時間も飛行機に乗ってきたんだ。少し休ませろよ」

私は以前のように気遣う顔は見せず、淡々と拒む。

「ダメ。今のうちに、はっきりさせよう」

陽向は鼻で笑った。

「何を話すっていうんだ?どうせ、結婚だよな……」

陽向が皮肉を言いかけたところで、スマホの着信音がそれを遮った。

彼は電話を取り、ほんの一瞬で顔色を変える。

「わかった、すぐ行く」

通話を切るや否や、彼はドアに手をかける。

「私たちの話、まだ終わってないわ」

私はそう言って、彼を呼び止めた。

陽向は信じられないものを見るように私を見つめた。まるで、血の通わない生き物でも見ったかように。

「玲奈がトイレで転んだんだ。命に関わるかもしれない。俺が行かなきゃ!」

私はひとつ息を吐く。

「転んだなら、まず医者を呼ぶこと。診てもらえばいい。もし骨でも折ってたら、あなたより専門家の方が……」

「もういい!」

陽向は苛立ちを隠さず、怒鳴り声を上げた。

「嫉妬なんだろ?俺に捨てられるのが怖いだけだろ?じゃあ今ここではっきり言ってやる。もう別れよう。初音、お前とは終わりだ。これで満足か!」

そう言い捨て、陽向は近くのマンションへ駆け出した。

私はその背中を見送り、声にならない口の動きで答える。

「いいわ」

恋が負ければ、仕事が勝つのかもしれない。

二日後、上司から連絡が入った。

私は新しい支社に引き抜かれ、市場開拓の担当として推薦された。役職も上がり、給料もかなり良くなった。

迷う理由なんてなかった。私はすぐに承諾した。

そして、翌日の便を予約した。

その夜、仲のいい同僚たちが送別会を開いてくれた。

場所は、この街でも評判のレストランだ。

人波に紛れて入っていくと、横の個室へ消えていく陽向の背中が視界の端をかすめた。

私は目を戻す。見知らぬ人を見たのと同じだ、と自分に言い聞かせる。

けれど、あとで化粧室へ向かう途中、隣の個室から陽向の声がはっきり聞こえた。

「結婚?俺がいつそんなこと言った?

俺はこれからが本番だぞ。そんな俺が、見た目も学歴も家の後ろ盾もない女を選ぶと思う?」

ひやかす声が混じる。

「でも早瀬先輩、あなたは今の彼女と付き合ってもう十年でしょ?別れるってなったら、あっちが揉めるんじゃない?」

陽向はしばらく黙ってから、くつくつと笑った。

「そんなの簡単だよ。引き延ばしておけばいい。散々抱いてもう言いなりだし、年もいってる。俺が何を言っても従うさ。

ほら、今年の誕生日もさ、彼女は口紅が欲しいって目を輝かせてねだってきたから、まずは説教してやった。何も言い返せなかったな。あいつ、一言も言い返せなかったよ。で、当日には一本やったけど、それはフリマのパチ物、六百九十円。それを宝物みたいに喜んでさ、ははは」

個室の中で、冷やかしの笑いが何度も上がる。

やっと静まっていたはずの心に、また古い傷がこじ開けられる。

痛みは、じわじわと広がる。

私は拳を強く握りしめ、踵を返した。

会食のあと、私は家族に弁護士がいる同僚に連絡を入れた。

私は弁護士にこの十年分の支払い明細をすべて渡した。

ひと通り目を通した彼は、わずかに眉を上げて言う。

「必ず取り戻します。お任せください」

翌朝早く。

私はB市行きの便に乗った。

着陸して電源を入れると、陽向からの電話が入った。

彼の詰問は、これまでになく切迫していた。

「初音、どういうつもりだ?俺の母さんの治療費、入金を忘れただろ。こんな大事なこと、どうして忘れる?お前のせいで母さんが死にかけたんだぞ!

それから、今週、母さんのところに行ってないよな。そんなのが嫁のやることか?もう一度だけチャンスをやる。三分以内に金を入れろ。でなきゃ別れよう」

電話口の刺々しい声を聞きながら、私は今にも笑い出しそうだった。

ベッドに横たわっているのは、彼の実の母親だ。

本気で気にかけているなら、他人に催促させるはずがない。

本当に孝行者なら、とっくに自分で支払っているはずだ。私の番なんてない。

タクシーを拾い、通話画面を最後に一瞥し、私は言う。

「じゃあ、その望みどおりに、別れよう」

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