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第4話

Auteur: 銜尾(かんび)
しばらくは結婚指輪のデザインについて質問してきたり、またしばらくするとウェディングドレスはサテンがいいか他の生地がいいかと聞いてきたり……

彼が私の返信が遅いだけでそわそわと落ち着かない様子を見て、思わずぼんやりしてしまった。

成瀬は、一体いつから私のためにこんなに気を揉んでくれなくなったのだろう?

思えば、薫が現れて以来、成瀬はとても忙しくなった。国際会議だの、出張だの、会社の決裁だの、忙しい忙しいと言って、私のメッセージに返事すらくれなくなった。

だけど本当は、彼が夢中になっていたのは、薫と一緒に過ごすことだけだった。

私はその間、彼のそっけなさに怯えるあまり、ますます成瀬に依存してしまった。

きっと私がこんなに彼に執着したからこそ、成瀬は「こいつは一生俺から離れられない」と疑いもしなかったのだろう。

だから彼は私を平気で無視し、堂々と他の女を甘やかした。

【清奈、電話に出てくれ】

【清奈、お前まだ怒ってるのか?ドレスも指輪も選ばないつもりか!?】

スマホの画面に並ぶ、数えきれないほどの不在着信を無視したまま、私は空港へ向かう車の中で、成瀬に最後のメッセージを送った。

【結婚はやめる。もう連絡しないで】

ちょうどその時、薫から写真が送られてきた。鏡の前でウェディングドレスを着て自撮りしている写真。その背後のソファには、スマホをじっと見つめる成瀬の姿。

【あなたがオーダーメイドしたドレス、私がちょっと試着してみたよ。もしかして私の方が少し細いからかな?ちょっと大きいけど、似合ってるよね】

薫の見え透いた自慢が、かえって可笑しくなって、私はこう返した。

【私の使い古しがそんなに好きなら、やるよ】

ドレスのことでもあり、男のことでもある。

アナウンスが流れ、飛行機がまもなく出発するという。やっと終わったと心の中で呟いた。

けれど飛行機が滑走路を動き出したその時、搭乗口に黒いスーツ姿の屈強なガードマンたちが走り込んできて、その中心に成瀬がいた。

慌てて振り返ると、なぜか壁を隔てても私に突き刺さるような視線を感じた。

地上の人影はどんどん小さくなり、やがて黒い点になって見えなくなった。

私はようやく肩の力を抜き、十年分の青春に別れを告げた。

三時間――長いようで短い、短いようで長い時間。

飛行機が着陸し、私は待ちきれずに出口へと急いだ。

遠くから、両親がたくさんのプレゼントを抱えて待っているのが見えた。

父が私のスーツケースを受け取り、目尻の皺ひとつひとつに優しさが宿っていた。

母は花束を私の手に持たせ、涙ぐみながら言った。

「清奈、もうこんなに大きくなって……なんて可愛いの、ビデオで見るよりずっと素敵。やっと帰ってきたのね。もう二度と家出なんてしちゃダメよ……」

父は得意げに言った。

「大丈夫だ、お父さんが今回選んだお相手は絶対に気に入るぞ!

あの子、お前のこと小さい頃からずっと好きでな、清奈が結婚しないからって、ずっと待ってて彼女も作らなかったらしい。あいつが万が一お前を泣かせたら、お父さんがすぐにぶっ飛ばしてやる!うちの娘を泣かせる奴は誰であろうと許さない!」

私は無理やり笑顔を作り、母に抱きついて肩に顔をすり寄せた。

実はこの十年間、両親は何度も私を呼び戻そうとしてくれていた。

でもそのたびに、成瀬が「お前が黙って家出したんだから、ご両親はきっとまだ怒ってる。結婚して幸せな姿を見せれば、きっと許してくれるさ」と私を引き止めた。

当時はそれが正しいと思っていたけれど、今思えばなんと愚かだったのだろう。

今、こうして涙ぐむ両親の顔を見ていると、何とも言えない罪悪感と後悔が込み上げてくる。

「もう私は子供じゃないから、ちょっとやそっとで泣いたりしないよ。お父さんの見る目、信じてるから、きっと素敵な人を紹介してくれるよね」

私が今回の縁談を嫌がらないとわかると、両親は本当にほっとした顔になった。

「それならよかった。正直、あの子のことが忘れられなくて断るんじゃないかって心配してたんだ……まあ、あっちのことはもう済んだよね?ただの婚約だったし、ちゃんと伝えたならもう連絡しなくていい、下手に引きずらないようにね」

私は黙って頷いた。

家に着くと、母が張り切ってごちそうを作ってくれた。

食事のあと、私はちょっと散歩に出かけることにした。

夜が更けていく中、なぜか誰かに見られているような感覚がついて離れなかった。

その時、親友からメッセージが届いた。

【成瀬、コネ使って清奈の居場所をつかんだみたい。気をつけて!】

私はハッと立ち止まり、すぐに詳細を聞こうと返信しようとした。

その時、背後から聞き慣れた声が響いた。

「清奈」

振り返ると、そこには成瀬が立っていた!

彼はゆっくりとネクタイを直しながら、歯を食いしばって言った。

「誰に許可をもらって、勝手に逃げたんだ?

俺の――婚約者」
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