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第3話

Author: ルカ
フォトスタジオへ向かう途中、修二のスマホが鳴った。彼は通話を切った。

再び鳴ると、眉をひそめて電源を切った。

服を選んでいる最中、彼は「ちょっとタバコを吸ってくる」と口実をつけて外に出た。夏美がその後をつけた。

廊下で、修二は深く煙を吸い込み、苛立った声で言った。

「自分で行くって言っただろ。俺はいま夏美とマタニティフォトを撮ってるんだ」

言い終えた瞬間、自分の失言に気づいたようだ。

「純子、落ち着け」

マタニティフォトという言葉が純子の神経を鋭く刺した。自分の子はもういないのに、夏美の子は無事だ。どうして?

修二はスマホ越しにも純子の悲しみを感じ取れた。黙ったまま、一本、また一本と煙草に火をつける。

純子は大学を卒業してから、彼と共に、会社のために酒の席で年配の男たちを相手に立ち回ってきた。

あの夜、酔った勢いでの出来事。ベッドに滲んだあの鮮やかな色。それらが走馬燈のように、彼の脳裏を巡り、燒きついて離れない。

その後、純子は妊娠した。だが、彼は無理やり彼女を中絶に連れて行った。手術台に身を横たえた純子は、唇を噛みしめ、すべての痛みを無言で飲み込んだ。

結局、純子を傷つけたのは彼だった。

修二は深く煙を吸い込み、煙草の火を靴先で踏み消した。

「帰隠寺で待っててくれ。すぐ行く」

夏美がちょうど着替えを終えた頃、修二から電話がかかってきた。

「夏美、ごめん。会社で急用ができて……」

「大丈夫、行っていい」

三十分後、夏美は帰隠寺で修二と純子に会った。

彼は寺に二千万円を寄進し、住職に二人の子どもの供養をしてもらった。

純子は悲しみに打ちひしがれ、修二の胸に倒れ込んだ。

修二は彼女を抱きしめ、何かを呟きながら慰めていた。

二人が去ったあと、夏美はそっと近づき、彼らが残していった書類に目を通した。やがて彼女の目に留まったのは、水子供養の供養帳に記された一文だった――

【我が息子の十年の寿命と引きかえに、娘の来世の幸せを願う】

修二の息子って?

夏美のお腹の中の子は、男の子だ。どうして私の子の寿命で、修二の罪を償うというの?

夏美は魂が抜かれたように、二人が去った方向へふらふらと歩き出した。

気づけば、遊園地の入口に立ち尽くしていた。

妊娠がわかったとき、修二は喜びのあまりこの遊園地を買い取ったのだ。

彼は夏美の手を引き、メリーゴーランドに乗りながら笑顔で言った。

「もし生まれてくる子が女の子だったら、世界で一番きれいなドレスを買ってあげる。そしてお前とその子がメリーゴーランドで笑っている姿を、ずっと見ていたいんだ」

修二は夏美を連れてパイレーツシップに乗った。夏美は怖くて思わず彼の胸に飛び込む。彼は低く笑いながら言った。

「もし俺たちに息子ができたら、そいつには俺と一緒に『ママを守ること』を約束させる。もしやんちゃしてお前を怒らせたら、俺がその悪ガキをパイレーツシップやジェットコースターに連れ込んで、何度でも思いっきり泣かしてやる。心から謝るまで、絶対に許してやらないからな」

最後に、修二は夏美を観覧車へと誘った。観覧車が頂上に達した瞬間、彼は指輪を取り出し、星のように輝く瞳でプロポーズした。

「夏美、俺はたくさんの子どもが欲しい。お前とだけ。結婚してくれるか?」

夏美は顔を上げ、観覧車を見つめた。胸の奥がきゅっと締めつけられる。

彼女は力なく微笑み、背を向けて歩き出そうとしたその時、見知らぬ番号からの着信が表示された。

夏美が電話に出ると、スマホの向こうから、純子の泣き声混じりのうめき声が聞こえてきた。

「修二、やめて……触らないで。奥さんのところに行って、好きなだけイチャついてればいいじゃない。私なんか、放っておいてよ」

「聞いてくれ、純子。ここを離れる前に、どうしてもお前を抱きたいんだ。海崎市で一番高い場所でな」

夏美は思わず頭を上げ、夜空に浮かぶ観覧車を見つめた。涙がひとしずく、頬を伝って落ちていった。

純子の声はどんどん大きくなり、懇願するように言った。

「修二……お願い。私に子どもを産ませて。何もいらない。ただ、異国の地であなたの赤ちゃんと一緒にいたいの」

修二の動きが止まった。

純子は彼の前に跪き、媚びるように唇を寄せた。

「修二、ちゃんとおとなしく海外にいるって約束するから……いいでしょ?」

修二は心が一瞬だけ揺らぎ、かすれた声で答えた。

「……分かった」夏美は呆然としたままスマホを切った。

修二への憎しみが胸の奥から込み上げてくる。

浮気する場所なんて、どこにだってあっただろうに。なぜよりによって遊園地なんかで。自らの手で、二人だけの大切な思い出を、めちゃくちゃに壊してしまったんだ。

スマホの着信音が再び鳴り響く。

今度は婚約者の修一だ。

「夏美、結納金はいくらがいい?白野グループの株を51%渡す、これで足りるか?」

夏美は氷のような声で答えた。

「遊園地一つ」

私が欲しいのは、ただ一つの遊園地だけ。

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