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無意識の観察者

Author: 中岡 始
last update Last Updated: 2025-07-01 16:02:57

帰り道、車の窓の外に流れていく街の光を、瑞希はぼんやりと眺めていた。夕暮れの名残が空の端に薄く残り、フロントガラスに映る街灯が、ゆっくりと後方に遠ざかっていく。運転席の隣、ハンドルを握る理仁の横顔を、彼女は黙って見ていた。

車内には、低く抑えられた音量でジャズが流れていた。さっきまであんなに盛り上がっていたテーブルの賑わいが嘘のように、二人の間には静けさが横たわっていた。悪い沈黙ではない。ただ、言葉が必要ない時間。けれど、瑞希の胸には、淡いざらつきのようなものが残っていた。

「楽しかったね」

助手席から投げかけた声に、理仁は少し遅れて頷いた。

「ああ。志乃さんも、須磨さんも…いい人たちだった」

それだけの言葉に、どこか物足りなさを感じたのは、自分のわがままなのかもしれないと瑞希は思った。理仁はもともと多くを語らない。けれど、それでも彼の言葉には、たいてい何かしらの色があった。今夜のそれは、妙に無色だった。

「須磨さん、面白い人だったね。話も上手だし」

「そうだね。…ああいう人、苦手じゃない?」

「ううん、平気。むしろ話しやすかった。志乃も、昔のままだったし」

そう言いながら、瑞希はまた窓の外に視線を戻した。返ってきた言葉に、何のひっかかりもなかったはずなのに、どこか心が落ち着かなかった。何かを見逃したような気がして、胸の奥がふわふわと浮ついていた。

思い返せば、食事中の夫は、少し様子が違っていた。

理仁は普段、他人の話に対しても穏やかに耳を傾けるが、どこか距離を保っているところがある。けれど、今日の彼は違っていた。須磨の話を聞くとき、彼は何度か、肩ごと身体を向けていた。笑うときも、少しだけ視線が長く止まっていた。

そういえば、と瑞希は思った。須磨がバイクの話をしたとき、理仁は普段見せないような熱のこもった目をしていた。彼がああいう話題で、あそこまで楽しそうに笑うのを、今までに見たことがあっただろうか。

須磨がグラスを傾けたとき、理仁は自然な仕草でそれを真似た。言葉にしない同調。まるで無意識に呼吸を合わせるような動きだった。

「…疲れてる?」

自分でも唐突だと思いながら尋ねると、理仁は目を細めて微笑んだ。

「いや、大丈夫。…少し飲み過ぎたかも」

その笑顔には、何も不自然なものはなかった。けれど瑞希の胸には、消えない小さなざらつきが残っていた。

自宅に戻ったあとも、それは完全には消えなかった。洗面所の鏡越しに見た理仁の背中が、ほんの少し遠く感じた。リビングに戻ったときには、彼はすでにソファに座り、スマートフォンをいじっていた。指先が画面を滑るたび、瑞希はその手元に視線を吸い寄せられた。

「何見てるの?」

「うん? 写真。今日の。店の雰囲気、いい感じに撮れてたから」

「見せて」

「うん」

彼はスマートフォンを瑞希に渡した。確かに、テーブルに並んだ料理や、花に囲まれたカフェスペースの写真がいくつか残っていた。志乃と須磨が並んで笑っている写真もあった。…けれど、その中に、須磨が理仁の方に身体を向けて話している写真があった。誰が撮ったのかはわからない。けれど、その一枚の中の表情に、瑞希はふと手を止めた。

須磨の目は笑っていた。だがその視線の先にいる理仁もまた、同じ熱をたたえていた。見つめ合うというほどでもない。ただの一瞬の切り取り。でも、その目の奥にある感情の温度が、瑞希の胸を鈍く打った。

気のせいかもしれない。何も起きていない。ただの食事会。ただの人付き合い。そう言い聞かせようとするたびに、瑞希の中に沈んでいく感情があった。

理仁は、私をそういう目で見たことがあっただろうか。

それは嫉妬とか、不安とか、そんな単純な感情ではなかった。ただ、自分の知らない理仁の一面を、誰かが引き出していたこと。それが、胸の奥に、冷たい指先で触れられるような不快感となって残っていた。

彼女は深く息を吐いた。夜のリビングには冷房の風が静かに流れていた。理仁はソファで目を閉じていた。眠ったふりをしているのかもしれなかったが、瑞希はそれを確かめる気になれなかった。

ただの気のせい。でも、私の夫は…あんな目で、私を見たことがあっただろうか。

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