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184:残された者

last update publish date: 2026-02-27 19:50:31

 小夜子が去った翌朝。

 タワーマンションの広すぎるリビングは、しんと静まり返っていた。

 カーテンは閉ざされたままで、朝の光を拒絶している。

 隼人はソファに深く沈み込むように座っていた。

 あれから一睡もしていない。目は充血し、足元には無残に潰れたケーキの箱が転がっている。クリームが乾き、甘ったるい匂いが鼻につく。

 片付けなければ、と頭では思う。

 小夜子は汚れを嫌う。きちんと片付けなければ。

『旦那様。家の汚れを放置するなど、あってはならないことですよ』

 小夜子ならそう言うだろうと、ぼんやりと考える。

 でも体が動かない。

 隼人の手には、くしゃくしゃに握りつぶされた紙片があった。

 小夜子の残した書き置きだ。

 小夜子の名前が書かれた離婚届の上に、置かれていた紙。

『私は貴方の隣にふさわしい人間ではありませんでした』

 隼人はその文字列を睨みつけた。

(ふさわしくないだと? 

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