星見小学校の旧体育館で起きた怪音事件。
僕たち「星見キッズ」は、倉庫から聞こえる不気味な音と、逃げ去った謎の人物、そしてその人物が落とした「地下」と書かれた鍵を手に入れた。 次の日、放課後、僕たちは再び旧体育館に集まった。 真相を突き止めるため、そしてこの鍵が示す「地下」の秘密を解き明かすために。 「シュウ、昨日は本当に怖かった…。でも、気になるよね、あの鍵」カナエが手に持った鍵を見つめながら言った。彼女の目は好奇心でキラキラしていた。 「うん。この鍵が何を開けるのか、確かめないと。旧体育館のどこかに、地下への入り口があるはずだ」僕はメガネをクイッと直し、ノートに昨日の出来事を整理した。 「僕、録音データをもう一回聞いてみたけど、やっぱり金属音が気になる。鍵を使って何か動かしてたのかも」タクミが録音機を手に持つ。 「昨日、倉庫の奥に何かあったよね。床に落ちた音もしたし…」リナがスケッチブックを開き、倉庫の内部を再現した絵を見せた。彼女の記憶力は本当にすごい。 「よし、俺がまた先に入る! 昨日みたいな影には負けないぜ!」ケンタが気合を入れて拳を握った。 旧体育館の中は、昨日と同じく薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。僕たちは倉庫の扉に直行した。 扉を開けると、昨日と同じカビ臭い空気が鼻をついた。でも、今回はもっと慎重に進んだ。 「シュウ、床を見て! ここ、昨日何か落ちた場所だよ」カナエが指差した。 倉庫の奥、床に小さな金属の破片が落ちていた。 タクミが拾い上げて、目を細めた。「これ…錆びたネジだ。近くに何か機械的なものがあるのかも」 「地下への入り口が、機械で隠されてる可能性があるね。みんな、床や壁を調べてみて」僕は指示を出した。 リナが倉庫の壁をスケッチしながら、突然声を上げた。 「シュウ、この壁…なんか変。木の板が一部だけ新しいんだ」彼女が指差した壁を見ると、確かに他の古びた木と比べて、1枚だけ新しい板があった。 ケンタがその板を叩いてみた。 ゴン…ゴン… 「…空洞になってる! シュウ、絶対ここだよ!」 「よし、開けてみよう。ケンタ、力貸して」カナエとケンタが力を合わせて板を外そうとした。 ギシギシと音を立てながら、板が外れると、そこには小さな錠前がついた鉄の扉が現れた。 地下への入り口だ! 「この鍵、ぴったりだよ」タクミが鍵を差し込み、回した。 カチャリと音がして、扉が開いた。冷たい空気が吹き上がり、僕たちは思わず身を縮めた。 「シュウ…本当に降りるの? なんか、ヤバい感じする…」ケンタが震えながら言った。 「真相を突き止めるのが探偵の仕事だ。怖くても、進むしかない」僕はノートを握りしめ、先頭に立った。 地下への階段は狭く、湿った空気が漂っていた。タクミが持ってきた懐中電灯で照らしながら、慎重に降りていく。 階段を下りきると、そこはコンクリートでできた小さな部屋だった。壁には古い地図や書類が散乱し、錆びた棚にはガラス瓶や工具が並んでいる。 「ここ…何なの? 学校の下にこんな場所が?」カナエが驚いた声を上げた。 リナが地図を手に取った。「これ…星見小学校の設計図だ。でも、地下の部屋なんて書いてないよ。隠されてたんだ…」 「シュウ、ここの棚、動いた跡がある。誰かが最近使ってるんだ」タクミが棚の埃を指差した。 確かに、棚の周りだけ埃が薄い。その時、部屋の奥から低い音が聞こえた。 ゴトン…ゴトン… 「まただ! 怪音の正体、絶対ここにある!」ケンタが懐中電灯を向けると、部屋の隅に古い木箱が置かれていた。箱は少しだけ動いていて、中から何かが動く音がする。 「開けてみる?」カナエが僕を見た。 「うん。でも、慎重に。タクミ、録音準備して。リナ、箱の周りをスケッチして」ケンタが箱に近づき、蓋をそっと持ち上げた。 中には…大きなネズミが2匹! 驚いたネズミが飛び出し、箱がガタンと倒れた。 「うわっ! ネズミかよ! 怪音の正体、これだったのか…」ケンタがホッとしたように笑った。 「でも、待って。ネズミだけでこんな大きな音は出ない。もっと何かあるはずだ」僕は箱の底を見た。 そこには、小さな金属のリングが付いていた。リングを引っ張ると、箱の底が外れ、隠しスペースが現れた。中には、古い革のノートと、錆びた金属の部品が入っていた。ノートを開くと、かすれた文字で「星見計画」と書かれている。ページをめくると、戦時中の秘密施設についての記述が…。この地下室は、昔、軍が使っていた隠し部屋だったらしい。 「シュウ、これ…すごい発見だよ。学校の歴史に隠された秘密だ!」カナエが目を輝かせた。 「でも、誰かがここを使ってたってことだよね。昨日の影、あの人だろ?」タクミが不安そうに言った。 その瞬間、階段の方から足音が聞こえた。ドンドンと、重い足音が近づいてくる。懐中電灯を向けると、黒い影が階段を下りてくるのが見えた。昨日と同じ影だ! 「誰だ! 何してるんだ、ガキども!」男の声が響いた。 背が高く、黒いコートを着た男だった。顔は暗くてよく見えないけど、明らかに怒っている。 「まずい、逃げなきゃ!」カナエが叫んだ。 「ノートと部品、持ってくよ! 証拠になる!」僕はノートをカバンに突っ込み、みんなで階段に向かって走った。 男が追いかけてくる。 「そのノート、渡せ! お前らには関係ないんだ!」階段を駆け上がる僕たち。ケンタが先頭でドアを開け、体育館に出た瞬間、男がケンタの腕をつかんだ。 「離せよ!」ケンタが叫び、男の手を振り払おうとした。 「ケンタ!」カナエが叫び、男に体当たりした。男がよろけた隙に、僕たちは体育館の外へ飛び出した。 「校庭の奥に隠れよう!」リナがスケッチブックを握りしめながら走った。校庭の裏、茂みの影に隠れた僕たち。男は体育館の外に出て、辺りを見回している。懐中電灯の光がチラチラと動くのが見えた。 「シュウ、どうする? あいつ、絶対ヤバいよ…」タクミが震えながら囁いた。 「落ち着いて。このノートに何か重要なことが書いてあるはずだ。男が必死な理由もそこにある。まずは内容を確認しよう。そして…助けを呼ぶ」僕はノートを開き、ページをめくった。 そこには、「桜の木の下に隠された遺物」と書かれていた。 遺物? 願いの桜と関係があるのか? 男はそれを狙っているのかもしれない。 「シュウ、あいつがこっちに来る! どうする!?」ケンタが慌てて言った。 男の懐中電灯の光が、茂みに近づいてくる。僕たちの心臓はバクバクと鳴り、緊張がピークに達した。星見キッズは、この危機をどう切り抜けるのか――?(Ep3 後編 完)~緊迫する夕暮れ~10月下旬の夕方、星見小学校の文化祭が終わろうとしていた。5年1組の教室で片付けを終えた星見キッズは、楽しい一日を振り返りながらホッと一息ついていた。しかし、シュウのカバンから見つかった「校内に爆弾を設置した。午後5時に爆発する。星見キッズ、探してみな。――名無しの挑戦者」と書かれた犯行文が、状況を一変させた。時計はすでに4時47分を指しており、残り時間はわずか13分しかなかった。校内放送で緊急事態が伝えられ、生徒と保護者たちはホールに集められた。警察の佐藤刑事が到着し、シュウたちに状況を確認した。「君たちが見つけた手紙だな。爆発まで時間が少ない。危険だが、協力してほしい。爆発物処理班を呼ぶが、校内を調べてくれ」「分かりました。星見キッズで手がかりを探します!」シュウが決意を込めて答えた。「班に分かれなさい。危険を感じたらすぐに戻るんだ」佐藤刑事が厳しく指示した。星見キッズは迅速に行動を開始した。シュウとカナエが1階を、ケンタとリナが2階を、タクミが技術室でカメラ映像を確認する役割に分かれた。時計は4時50分を過ぎ、緊迫感が高まっていた。夕陽が校舎の窓を赤く染め、静まり返った校内に緊張が漂った。 ~1階の捜索~シュウとカナエは1階の教室や廊下を急いで調べ始めた。文化祭の装飾が残る廊下で、靴音が響いた。シュウが懐中電灯で隅々を照らしながら言った。「爆弾は目立たない場所に隠されてるはず。カナエ、机の下や棚を見て」「うん、シュウ! 気をつけて…」カナエが震えながら机の下を覗いた。3年2組の教室に入ると、窓際に置かれた花瓶の下に小
~文化祭の賑わい~ 10月下旬、星見小学校の文化祭当日がやってきた。 校庭には色とりどりのテントが立ち並び、保護者や地域の人々で賑わっていた。校舎の窓には生徒たちが作った装飾が飾られ、秋の陽光が校内を明るく照らしていた。 5年1組の教室では、星見キッズが準備した「射的ゲーム&紅葉アート展示」が大盛況だった。教室の入り口には、ケンタが作った木の板にゴールが描かれた射的ゲームのコーナーが設けられ、子供たちが順番待ちをしていた。 タクミが効果音を流し、「ゴール!」という音が響くたびに歓声が上がった。 「シュウ、見て! めっちゃ盛り上がってる!」ケンタがサッカーボールを手に笑った。 「うん、ケンタ、よく頑張ったね。みんな楽しそう」シュウがメガネをクイッと直し、満足そうに頷いた。 教室の奥には、リナが描いた紅葉の絵と林間学校の写真が展示されていた。保護者たちが絵を眺めながら、「素敵な絵ね」「林間学校の思い出が伝わってくる」と感想を述べていた。 リナがスケッチブックを手に微笑んだ。 「田村くんの笑顔、絵に込めたんだ。見てくれて嬉しい」 カナエはチケットを配りながら、クラスメイトと協力して運営していた。「シュウ、射的ゲームの景品、お菓子が人気だよ! もっと補充しなきゃ!」 「了解、カナエ。倉庫から取ってくるよ」シュウが倉庫へ向かった。 タクミはタブレットで照明を調整し、展示コーナーを美しく照らしていた。「シュウ、照明の色変えてみる? 紅葉がもっと映えるよ」 「いいね、タクミ。暖かい色でお願い」シュウが戻ってきて笑顔で答えた。 5年1組の出し物は
~林間学校からの帰還~10月中旬、林間学校から帰った星見小学校の5年生たちは、重い心を抱えながらも日常に戻っていた。林間学校の3日目に起きた田村悠斗(ゆうと)くんの殺人事件は、星見キッズにとって忘れられない出来事だった。犯人の松本翔は逮捕されたものの、動機はまだ明かされておらず、シュウたちの心にはモヤモヤが残っていた。学校に戻った初日、教室の窓から見える桜の木は秋の色に染まり、校庭には落ち葉が舞っていた。シュウは席でノートを開き、林間学校の事件を振り返っていた。「松本くんの動機…。まだ分からない。田村くんのためにも、真相を突き止めたい」カナエが隣に座り、優しく声をかけた。「シュウ、考えすぎだよ。警察が動機を調べてくれるって。文化祭の準備が始まるから、少し気持ちを切り替えよう?」「うん、そうだね。文化祭…。田村くんの分も楽しみたい」シュウがメガネをクイッと直し、ノートを閉じた。担任の田中先生が教室に入り、黒板に「文化祭準備」と大きく書いた。「みんな、林間学校は大変だったけど、文化祭で楽しい思い出を作ろうね。5年1組の出し物、今日決めよう!」文化祭の出し物決め教室が一気に賑やかになった。ケンタが手を挙げて元気よく言った。「俺、サッカーの射的ゲームやりたい! ゴールに見立てた的を狙うやつ!」「いいね、ケンタ! でも、みんなが楽しめるように、いろんなアイデアを出してみよう」カナエが笑顔で提案した。リナがスケッチブックを持ち上げて言った。「紅葉の絵を展示するの、どうかな? 林間学校の思い出を絵にして、みんなに見せたい」「林間学校か…。いいアイデアだね、リナ。癒される展示になりそう」シュウが頷いた。タクミがタ
~3日目の朝と決意~ 10月12日、林間学校3日目の朝、森の自然の家の空気は冷たく澄んでいた。 2日目の朝、大浴場でクラスメイトの田村悠斗(ゆうと)くんが全裸の状態で遺体として発見された事件は、星見キッズに深い衝撃を与えていた。 昨夜の調査で、麻酔と消毒液を使った巧妙なトリックが浮上し、医務室と換気口が次の手がかりとされた。 警察の協力のもと、シュウたちはこの日、真相を解き明かす決意を固めていた。 宿舎の部屋で朝日が差し込む中、シュウはノートを手に仲間たちと作戦を立てた。 「昨日、麻酔と消毒液がトリックの鍵だと分かった。今日は医務室を詳しく調べ、換気口の外を確認する。田村くんのためにも、犯人を絶対に見つけるよ」 「シュウ、怖いけど…一緒に頑張ろうね」 カナエが手を握り、緊張した笑顔を見せた。 「うん、星見キッズならできる。真相に近づこう」 リナがスケッチブックを手に頷いた。 「俺、力になる! 田村くんの仇を取るんだ」 ケンタが拳を握り、気合を入れた。 「データでサポートする。トリックを解くよ」 タクミがタブレットを手に準備した。 朝食後、警察の佐藤刑事から許可が出た。 シュウたちは田中先生と一緒に医務室に向かった。医務室は宿舎の端にあり、白いカーテンと消毒液の匂いが漂っていた。 棚には包帯や薬が並び、冷蔵庫には注射器と薬剤が保管されていた。医務室の証拠シュウが冷蔵庫を開けると、麻酔薬の瓶が一つ欠けているのに気づいた。 「この麻酔薬、
~2日目の朝と事件の発生~ 林間学校2日目の朝、森の自然の家の空気は清々しく、紅葉に染まった森から鳥のさえずりが聞こえてきた。 星見小学校の5年生は、前夜のキャンプファイヤーの興奮が残る中、2日目の予定は自然体験学習とクラフト作りを楽しみにしていた。 「星見キッズ」も、宿舎の食堂で朝食のパンとスープを食べながら談笑していた。 「シュウ、今日のクラフト作り、楽しそうじゃない? 木工細工とか作ってみたい!」カナエがパンにバターを塗りながら笑顔で言った。 「うん、僕も楽しみだよ。自然の中で何か作るの、初めてかもしれない」 シュウはメガネをクイッと直し、ノートをカバンにしまった。 「俺、弓矢みたいなの作って、サッカーよりカッコいい遊びをしたいな」 ケンタがスープを飲んで元気よく言った。 「紅葉の葉で絵を描くの、いいアイデアかも。スケッチに活かせそう」 リナがスケッチブックを手に持って微笑んだ。 「Wi-Fiないけど、写真で記録しておこう。自然の家のデータ、面白いかもしれない」 タクミがタブレットをいじりながら呟いた。 その時、食堂のドアが勢いよく開き、クラスメイトの山口くんが青ざめた顔で飛び込んできた。 「大変だ! 大浴場で…! 田村が死んでる!」 部屋に一瞬静寂が広がり、シュウたちは立ち上がった。 「田村くんが…? 行くよ、みんな!」 シュウが先頭に立ち、大浴場へ急いだ。 カナエが後ろで震えながら言
~バスの中でのたわいのない会話~10月上旬、秋の気配が深まる朝、星見小学校の5年生は林間学校に向けてバスに乗り込んだ。目的地は山間の「森の自然の家」で、紅葉に染まる森と清流に囲まれた場所だった。「星見キッズ」は、窓辺に座りながら興奮気味に話をしていた。バスのエンジン音が響き、車窓には田園風景が流れていく。「ねえ、シュウ! 紅葉がきれいそうで楽しみだよ。星見計画のことは忘れて、思いっきり遊ぼうね!」カナエが窓の外を指さして元気よく言った。「うん、そうだね。自然の中でリフレッシュするのもいいかも。たまには頭を休めたいし」シュウはメガネをクイッと直し、ノートをカバンにしまった。「俺、キャンプファイヤーが楽しみだ! 森の中でサッカーしたら、めっちゃ気持ちいいだろうな」ケンタがサッカーボールを膝に置いて笑った。「スケッチするの、楽しみだな。紅葉の色をちゃんと描けるか、ちょっと緊張するけど」リナがスケッチブックを手に持って微笑んだ。「自然の家のWi-Fi、使えるかな? 夜にゲームでもしてみたいんだけど」タクミがタブレットを手にいじりながら呟いた。その時、隣の席から声がした。「シュウたち、林間学校って何するんだろうね?」振り返ると、クラスメイトの田村悠斗(ゆうと)くんがニコニコしながら話しかけてきた。悠斗はサッカー部で明るい性格の人気者で、ショートカットの黒髪が特徴だった。「悠斗! お前も楽しみだろ? ハイキングとかキャンプファイヤーがあるみたいだよ」ケンタがボールを軽く蹴って笑った。「うん、楽しみだよ! 特に川遊びがいいな。魚でも釣れたら最高だ」悠斗が目を輝かせて言った。「魚釣りか…。僕、釣り竿持ってくればよかったかも」シュウが少し後悔したように呟いた。「大丈夫だよ、シュウ。自然の家に道具があるって