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【第44話】観察者の不快

Author: 櫻恭史郎
last update publish date: 2026-08-19 18:10:07

 観覧席からフロアへと続く階段を降りながら、カイルは隣を歩く華奢な女の姿を、冷ややかな視線で観察していた。

 結い上げられた髪は丁寧に整えられ、細く白い首筋を美しく際立たせている。確かに、整った顔立ちをした美人ではある。だが、立ち振る舞いや全体の雰囲気にはどこか幼さが残っていて、社交界の練達者の中では、どうも見劣りする。

 兄上はずいぶんとこの女を気に入っているようだったが、一体どこにそこまでの価値を見出しているのか……。

 カイルには皆目見当がつかなかった。

 美人など、この会場を見渡せばいくらでも転がっている。

 しかも、隣を静かに歩いている女——セラは、カイルに対して愛想笑いの一つすら見せない。お世辞を口にするわけでもなく、ただ差し出された腕に手を添え、連れられるままに無言で歩いているだけだった。

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