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第2話

Author: 匿名
数人の冷たい視線が私に注がれた瞬間、体がこわばり、喉まで出かけた言葉が詰まってしまった。

ただ、荷物を取りに来ただけだったのに。

ただ、ちゃんとお別れを言いたかっただけなのに。

「何しに来た?」

どうしていいかわからず立ち尽くしていると、隼也が別荘から出てきた。手には、ぬいぐるみを持っている。

それは、私たちが十八歳のときに交わした思い出の品、婚約の日に失くして、ずっと戻ってこなかったあのぬいぐるみだった。

「……隼也」

心の奥から希望が湧き上がり、私は思わず手を伸ばした。

けれど、その瞬間、ぬいぐるみは隼也の手から放たれ、真っ直ぐにゴミ箱へと投げ込まれた。

「用件は?」

冷えきった顔で問う隼也。私は空中に残ってしまった右手をそっと引き下げ、胸の奥がギュッと締めつけられた。

十八歳のあの日、彼は言っていた。

「命を落としても、このぬいぐるみだけは手放さない」

それを自らの手で捨てたということは、もう彼の命の中に、私はいないということだろうか。

「もう話は済んでるはずだ。婚約した相手は、西園寺家の本当の娘。

お前は、他人の人生を勝手に奪っただけだ。俺が結婚するのは、美優だ。

まだ理解できないのか?なにをしに来た?」

予想通りの展開だ。あの日「一生大事にする」と言った彼は、もうどこにもいないみたい。

「……ただ、荷物を取りに来ただけです」

声を押し殺して答えると、屋敷の中から嘲るような声が飛んできた。

「戻ってきたと思ったら、少し言われただけで拗ねたのか?

お前に何の権利がある?この二十年、苦労してたのは美優の方だぞ?」

智貴が苛立ったように隣の別荘から出てきて、私は慌てて頭を下げる。

「……ごめんなさい」

本当に、申し訳ないと思っている。赤ん坊の時に取り違えられたのは私のせいじゃない。でも、その恩恵を受けて生きてきたのは紛れもなく私だった。

「大丈夫、お姉ちゃんが戻ってきてくれてよかった。この数日、本当に心配だったんだから。

お兄ちゃんも隼也さんも悪いよね、ちゃんと探しに行ってってお願いしたのに」

最後に現れたのは、西園寺美優(さいおんじ みゆう)だった。

ここ数日で「お嬢様らしさ」の練習をしていたのだろう。

でも、長年の栄養不足のせいで、その姿はどうにもチグハグだった。

本来、それは私が背負うはずだった姿。

「私が悪いんです。探しに来なかったのは正しい判断です」

罪悪感から、私はさらに深く頭を下げた。

美優は慌てた様子で私の手を取って、早口で言葉を重ねる。

「お姉ちゃん、そんなこと言わないで!みんなの言葉なんて気にしないでよ。

ここはずっと、お姉ちゃんの家だよ……生活を壊したのは、美優の方なんだ」

そう言って、美優はぽろぽろと涙を流した。

その姿に呆気に取られていると、私は隼也に勢いよく突き飛ばされた。

「何度言わせるんだ。お前が戻ってくるたびに、美優は傷つく。

俺たちが渡した金じゃ足りなかったか?一生、外にいてくれないか?」

かつて、彼はあれほど私を気遣ってくれた。

かつて、彼はあれほど美優のことを嫌っていた。

その頃の私は、西園寺家のたった一人のお嬢様。

美優は、ただのインターン、隼也の見習い秘書だった。

智貴も美優のことを嫌っていた。

なぜなら彼女は隼也と一番長く一緒にいる女性で、私たちの関係に亀裂を生む可能性があるから。

隼也もまた、なんでも失敗を繰り返している彼女を「使えない」ものと評した。

それが、いつから変わったのだろうか。

たぶん、美優がミスをしたときに、隼也が優しく笑いかけた頃から。

その後、智貴との関係を改善させるために、隼也は何度も美優を連れて西園寺家に通った。

そしてついに、智貴も「彼女の優しさ」に心を許した。

ほんの些細なことばかりだった。でも、以前の私は気にしなかった。

なぜなら、私は彼らにとっての宝物で、誰もその座を脅かすことはできないと信じていたから。

まさか、婚約ひとつで、私は天から地へと堕ち、彼女が「西園寺家の本物のお嬢様」として、のし上がるなんて……

運命なんて、どこまでも皮肉だ。

「理央、俺は隼也ほど冷たくはない。ただ一つ、条件がある。

戻ってきても構わないが、美優をいじめることだけは、絶対に許さない。いいな?」
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