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国家機密に人生を捧げたら、兄と婚約者が壊れた

国家機密に人生を捧げたら、兄と婚約者が壊れた

Par:  匿名Complété
Langue: Japanese
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婚約が決まったその日、兄は見知らぬ少女を家に連れてきた。 「この子こそが、本当の妹だ」と―― 兄は私を責め、彼女から奪った二十年を返せと罵った。 婚約者も「本物の妻は彼女だ」と言い、私を見捨てた。 私は家を追われ、かつて私のために用意された別荘まで、彼女に譲られていた。 そして、兄と彼女、そして婚約者は三人で優雅に旅行へ―― 私の誕生日になって、ようやく彼らは私の存在を思い出す。 だがその時、私はもう国家の十年機密プロジェクトに参加していた。 姿を消した私に、彼らは二度と会えない。 それでも、本来なら幸せだったはずの彼らは、なぜか……後悔していた。

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Chapitre 1

第1話

「西園寺くん、もう決めたのか?

今回のプロジェクトは完全隔離になる。行ったら、もう家族には会えないぞ」

研究所の所長の声に、ぼんやりとしていた意識が現実に引き戻された。目元にはまだ涙の痕が残っていた。

この数日間、西園寺家ではいろんなことが起こった。研究所の誰もが知っている。

私、西園寺理央(さいおんじ りお)はただの偽物だ。

「今回のことはお前にとって大きな衝撃だったと思う。

でも、感情に流されてはいけない。これは、お前自身の人生だ」

所長は私の目に浮かぶ悲しみを見て、手を後ろに組み、同情的な表情を浮かべた。

「ご心配ありがとうございます、所長。

でも感情的になって決めたわけじゃありません。最初すぐに答えなかったのは、ただ家族と離れたくなかったからです。

今は……ここまでこじれてしまって、私が離れるほうが一番いいんです」

そう答えながら、所長の視線の届かないところで、そっと涙を拭った。

悲しかった。

でも、どこかでほっとしている自分もいた。

たぶん、ずっと心の中でこうなると分かっていたんだ。

みんなが傷つくくらいなら、早めに私の代わりができた方がいい。

「……わかった。お前を信じる。体には気をつけろ。出発は半月後だ」

所長はそれ以上引き止めず、静かに肩を叩いてくれた。

それが、今の私に必要な慰めだということを分かってくれていたのだ。何も言わずとも、彼はずっと私の味方でいてくれる。

「ありがとうございます」

一礼して研究所の建物を出ると、中の仲間たちが一斉にこちらを見た。

身分がバレてから、彼らはずっと私のことを心配してくれていた。

彼らの目には、私がここまで来られたのはすべて努力の賜物だった。

でも兄・西園寺智貴(さいおんじ ともき)は、会社の公式サイトに「理央が今の地位を得たのはすべて西園寺家のおかげだ」と書き込み、私は彼らを責める資格も、何かを言う立場すらないと思わされた。

「理央ちゃん、家にはもう帰らない方がいいんじゃない?」

「そうよ、うち空いてる部屋あるよ。どうせもうすぐ出発するんだし、わざわざ戻って辛い思いすることないでしょ?」

みんなが口々に優しい言葉をかけてくれた。けれど私は静かに首を振った。

「だからこそ、帰らなきゃいけないの」

私が背負ったものを返しに行かないといけない。智貴の言葉は酷かったけど、確かに私は、彼の本当の妹の人生を二十年以上奪っていた。

それは、私の罪であり、私の借りだ。

「理央……」

みんなはまだ何か言いたそうだったけれど、私は笑顔を作り、一人一人と抱き合った。

「大丈夫。忘れたの?私、しぶとさだけは自信あるんだから。どんな実験でも最後にはちゃんと成功させてきたんだから。信じてね!」

そう言って、拳を握って「ファイト」のポーズを取ってから、家へと向かった。

西園寺家はこの研究所からそう遠くない。というのも、この研究所自体が智貴と私の婚約者・篠原隼也(しのはら しゅんや)の出資で建てられたものだからだ。

彼らは私のそばにいるために、研究所のすぐ近くにそれぞれ別荘を建てた。二つの家は隣り合っていて、どちらもかつての私の「家」だった。

今、そのどちらにも私の部屋はない。帰ってきた私に対する使用人たちの目も冷たい。

「智貴様がおっしゃいました。理央様はもう西園寺家の人間ではありません。そんな顔で戻ってきて、何のつもりですか?」

「他人様の二十年もの人生を奪っておきながら、まだこうして平然と戻ってこられるとは……本当にご立派ですね」
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