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新矢識仁
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Novels by 新矢識仁

地味なコア一個しか宿らないと思ったらチートみたいでした

地味なコア一個しか宿らないと思ったらチートみたいでした

十五歳。それはコアを見、宿すことができる年。同化したコアの色によって異能を使えるようになり、それによって将来が決まるこの世界で、僕が手に入れたのは何にも使えそうにない色だった。 しかし、この色、実は裏があるようで……? 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
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Chapter: 第185話・すべては終わり
 十年後。 瑞希と一緒に、バスを降り、少し歩く。 辿り着いたのは、十年前から更地になったままの場所。「おう、来たか」 壮は僕と瑞希の姿を見つけて、軽く手を挙げた。「お前らも毎年律儀だな。こんな跡地に来るなんて」「それを言うなら壮だって」 あの時、学園長と地下研究施設全てを失った弧亜学園は、秘密の研究で全人類のコアを消したのではないかとの疑いをかけられ、国連に全ての研究データなどを没収された。 しかし、肝心なことは、羽根さんは自分の命と一緒に持ち去ってくれたので、残っていたのは動かすコアのないコアコンピュータだけだった。 学校が廃校になって、十年。 更地にされた学園に、僕たちは、一年に一回やってくる。「人のうわさも七十五日」 瑞希が呟いた。「弧亜学園が叩かれて、コアがなくなって。人類どうなるかと思ったけど、案外コアがなくても生きていけるものなのね」 跡地に花を置いて、瑞希は呟いた。「なんだか、あの時のことが、夢みたい……」「でも、覚えてるだろ?」 こうやって、人類が滅亡を免れた日に、花を手向けにやってくる。 羽根さん。長田先生。学園長。地下にいたコア生物や新人類、そして、ココ、ナナ。「僕たちが墓場まで持って行けば、それでこの一件は水の泡。もう誰も、コアがあったことなんか思い出さなくなる」「そうね……」 しばらく僕たちは合掌した。「飲みにでも行くか?」「まだ日中だよ?!」「いいだろが、今日は記念日だ。飲んでいいんだ、俺的に」「相変わらずね、壮君は」「はん、そう簡単に変わってたまるかよ」 僕たちは、歩き出した。 だから、気付かなかった。 木陰に、緋色の光を放つ何かが、落ちていたことに……。                         完
Last Updated: 2025-12-03
Chapter: 第184話・コアを染めて
『私の間違いは正されたのですね』 突然、合成音が聞こえた。「何、この声」「羽根さん」「羽根?!」 まだ人間の姿を取り戻せていない長田先生があちこちを見る。『ありがとう、丸岡くん』「羽根さん……これで、終わったんですね?」『まだ、終わりじゃないわ』 合成音は静かに告げる。『新しい人類の道をやり直さなければ、同じことはまた起こる』「どうすれば……?」『全てのコアを、ナナに命じて、貴方のコアの望みのままに、透明に、そして、無に』「……って、それって、地球からコアが消えるってことか?」 彼方くんの問いに、羽根さんは、是、と答えた。『このままコアを残しておけば、人類が成長する限りいずれは誰かが私と同じ結論に辿り着き、同じ結果を導き出す。そして、その時に貴方が、そして透明なコアがあるとは限らない』「無茶だろそれ。今の人類の研究や実験は、ほぼすべてコアか、対コアとして進んでる。コアが突然なくなれば、インフラにも影響がデカい」『そこは、人間の可能性に賭けるしかないわね』「無責任だな」『私のいない未来だもの』「なら生き延びて新しい道を示せよ」『私と言う存在がある限り、人類はコアを諦めない。人造コアの研究すら始まろうとしているのに、唯一残ったコアの繋がったスーパーコンピュータなんて、戦争を起こしてでも勝ち取りたいものよ』「長田先生は……それでいいですか」「私は長生きをし過ぎました」 人間の姿も取れない、黒茶の平面の生き物は、そう言った。「コアがなければ生きていけない身体……見ての通り、もはや人類ですらない。私たちこそ旧人類。コアなき世は、君たちが創るべきです」「丸岡くん……」 渡良瀬さんが、泣きそうな顔で言った。「それって、先生も、先生の妹さんも、死んじゃうってことよね……? やだよ、そんなの……」「死ぬんじゃありません」 平面の黒茶の一部がむくりと伸びあがり、渡良瀬さんの頭を軽く叩いた。「元に、あるべき姿に戻るだけです。私たちは死にませんよ。本当のことを誰も知る必要はない、ここにいる三人だけが知っていればいい」「カピパラ……いや、長田」 彼方くんは、ちょっと唇をかんでから、言った。「散々悪口言って、悪かったな」「気になさらず。君こそ変わりました。君と丸岡くんを教えられたことは、私の誇りです。渡良瀬さんが死んでほし
Last Updated: 2025-12-03
Chapter: 第183話・透明に
「まだ覚えていてくれたんですかー」 学園長の一部、金色の光の中から、その声は聞こえた。「色々あり過ぎてー、新しい相棒も手に入れたみたいだからー。私のことなんて、忘れちゃったかと思ってましたー」「忘れるわけないさ」 あの日。弧亜合格を教えてくれたのは、ココだった。 お節介で図太くて図々しくて気紛れで……でも。「君は、僕の、コア監視員だよね」「何を……」 学園長が何か言おうとしたけど、金色の光が強くなってそれを止めた。「それは、今でも有効?」「そりゃーそうですよー。私を仕込んだのは|救世主《メシア》ですけどー、私と言う存在を形作ったのは丸岡さんですものー。私はー、意識ある限りー、丸岡さんをー、監視しますー」「じゃあ、今僕の考えていることは分かるよね」「丸岡君?!」 長田先生の不安に歪む声に笑いかけて、そして僕は恐らくココがいるだろう場所を見た。「協力してくれるかい?」「難しいですねー」 当然、上手く行くとは思ってなかった。ココは学園長が生み出したコア生物だから。「でもー」 いつもの調子で、ココは言った。「丸岡さんがー、私のことを一生覚えていてくれるって約束してるならー。それならー、協力するかもしれませんねー」「!!」 学園長は目を丸くする。 僕が乗っている長田先生も、一瞬震えた。「バカなこと言うなよ、ココ」 僕は笑った。「確かに僕らの繋がりは半年もなかった。だけど、一緒にいた、一番気にかけてくれた相手を、僕が忘れるわけないじゃないか」「そうですかー」 ココの声は楽し気に聞こえた。 そして、金色の光がぞわぞわとまだらに光る色を押しのけていく。 学園長の胸部の、ちょうど真ん中。「絶対の絶対ー、死ぬまでー、忘れないでー、下さいねー?」「忘れないよ。忘れられるものか」 僕は透明のコアを、光の渦の中心に向かって突っ込んだ。「だって、僕らは、相棒だったんだから」「ぅあっ!」 もう一度、悲鳴。 透明のコアを、学園長の胸部に直接押し付ける。「染まりたいんだろ? 染めてやるよ……透明に!」「やめっ、やめてっ、いやっ」 コアの触れた胸から、学園長の肉体が透明になっていく。「やっと手に入れた肉体なのに……やっと手にした結果なのに! こんな所で! 旧人類に!」「君たちが新人類となる夢は破れた」 僕は透明に染め
Last Updated: 2025-12-03
Chapter: 第182話・ラスボス最終形態
 次の瞬間、パッと暗闇が消え、あの時と変わらない距離で、全身に無数の色をまとわせた学園長がいた。「随分前衛的になっちまったな」「まだらですね」「もう……私は、間違いを犯さない」 学園長……無数の色の集まりは、明らかに僕たち四人を狙っていた。「私が……最終存在となる」「その色で妹を語らないでほしいですね!」「行くぞ渡良瀬っ」「分かってる!」 渡良瀬さんは、限界ギリギリまで、他者鎮静化の光をたくさんたくさん生み出した。 危機において、精神や肉体は時に実力以上の結果をもたらす。それはどんな生き物でも同じこと。 渡良瀬さんの力を、彼方くんは|空気弾《エア・バレット》の先端につけて、様々に軌道を変えて打ち出した。「ゥア……ア……」 明らかに、まだらに染まった光が色を失っていく。 他者鎮静化とは、僕の透明コアに近い能力だった。色を一時的に奪うことで相手の力を弱める。そんな彼女と僕が、そしてそれを弾丸の先に乗せて撃ちだせる彼方くんとが、受験で出会ったのは偶然か? あるいは学園長が何か企んだのかもしれないけど、助かった。 これで、随分色を削れる。 僕は長田先生の背中らしき所に捕まって、光の弾丸を受けて悶える学園長のすぐ近くまで進攻していた。「ナナ!」(はい!) 今の僕には分かる。透明なコアが、全てを透明にしたいという欲望を持っていること。 上手く手綱を取って長田先生にその力を向けないようにしながら、僕は右手を伸ばす。 透明なコアが見える。 学園長を取り巻く《《色》》は、それが必要なものだと判断して手を伸ばしてくる。 でも、触れる度、色が怯えて遠ざかっていく。「いいのかしらねぇっ?!」 学園長の狂喜に満ちた笑みが、そのまだらの顔に妙に映えた。「この光は貴方達と同じ人間、光が消えればその人間も死んだことになる! ふふ、まあ同士討ちが当たり前の最低種族だから、脅しにもならないかもだけどっ!」 言いながら、学園長は手を伸ばす。僕の透明コアを手に入れるために。「あなたの中にいる全員が、あなたに従っているとは思えない」 そして、僕は呼んだ。「ココ」
Last Updated: 2025-12-02
Chapter: 第181話・ラスボス戦
 長田先生の静かな声にも、焦りがにじんでいた。「世界中の人類についているコアを呼び集め、新たな人類の一部として目覚めさせようとしているんでしょう」「新たな人類の、《《一部》》?」「なるほどね」 僕はすぐに納得がいった。「学園長がなろうとしているのは、間違いを犯さないために無数の判断装置がついた究極の精神体。世界中の人類の意識を奪えば、そしてその意識を支配下に置けば、間違いを犯さない永遠の支配者と成り得る」「全人類を支配下に置いたところで間違わないとは思えないけどな」 彼方くんの言葉に僕は頷いた。「そこまで追い詰められたってことだけど……」「だけど、世界中のコアを集めるってことはさ、ゲームで言えばラスボスが、残り一桁のヒットポイントを全回復したってことじゃない?」 暗い中、僕のコアが放つ光に浮かび上がった渡良瀬さんの顔は、見るまでもなく真っ青。「全回復どころか攻撃力に防御力もアップさせただろうね。だけど」 僕は渡良瀬さんに向かって笑いかけた。「負ける気は、ない」 それより、と僕は黒い壁を見る。「長田先生、先生は大丈夫なんですか?」「私はコア肉体を私の支配下に置いた存在」 長田先生は少し苦し気で、でも正確に答えてくれた。「あの《《妹もどき》》がどれだけコアを呼び集めようと、僕の心臓や脳とも同化しているコアは、僕から離れれば死ぬ時だと分かっているから、離れません。結果、こうして君たちをあいつの影響から庇えますが……あいつが完全体になって襲い掛かってきた時、君たちを守ることができるか自信はありませんね」「それなら大丈夫です」 渡良瀬さんと彼方くんの顔がこちらを向く。長田先生の意識もこちらを向いていることが分かった。「今のはラスボスの第一段階、第二段階だった。そして今、最終段階になろうとしている」「なんか手があるんだな」「あるよ。君たちが無事でよかった。長田先生がいてくれてよかった。僕一人じゃ相当てこずった」 そして、僕は作戦をみんなに伝える。「なるほどな」「……頑張る」「その役目は引き受けました」 その時、地面が揺れた。「地震?」「いいや、足踏み」 僕が呟く。「先生、地球中の人類の意識を、あいつは取り込んだんでしょう」「はい」 ああ、久しぶりに長田先生の「はい」が聞けたな。最初に聞いた時はバカにされてるん
Last Updated: 2025-12-02
Chapter: 第180話・追い詰められて
 僕は、金色の鞭を掴んで全力で引っ張った。 学園長は慌てて鞭を放す。色なき浸食からギリギリで逃れながら、僕を見ていた。 |創造主《クリエイター》を名乗り、|救世主《メシア》を名乗ったあの余裕の笑みは何処にもない。 ただ、自分を裏切った者たちに対する恨みがあるだけ。「くっ、このっ!」 学園長の行動は読めた。彼方くんの|空気弾《エア・バレット》のように攻撃を仕掛けながら、隙をついて僕からコアを奪い取る。 だけど、そううまくはいかせない。 僕は、僕の内から溢れ出す透明コアの力を、空気のように操った。 学園長が生み出した以上の透明の弾丸を用意して。「死になさいっ」「そっちの方だ!」 同時に金と透明の弾丸の嵐が互いに襲い掛かった。 透明の弾丸をすり抜けて僕を狙ってきた金色の弾丸は、僕の右肩口や足にぶつかり、血を噴き出させる。「……痛いね」 笑って、呟いた。「でも、分かったから、いいか」「何が……やられておいて、何が分かったのかしら?」 もちろん学園長に教える義理はない。ただ、透明に侵食させて力を失う能力は、どうやら無意識の内には出せないらしい。あくまで僕が意識してでないと無理なのか。 だけど、僕が受けたのは数発。しかもまだ透明コアを狙っている学園長は僕を本気で殺そうとはしていないから絶妙に急所を外してきている。 アドレナリンが噴出しているのか、痛くも痒くもなく、僕は笑う。「次の攻撃と行こうか」 僕は左足を引きずって前に出た。 学園長を覆う金色の光が、随分と弱くなっている。「負けない……私たちの力を借りなければ、歴史すら刻めなかったような生き物に、私は負けない……!」「僕も負けない」 笑って、言う。「全人類を背負う気はないけど、何人かの大切な人を助ける為なら、全人類だって救って見せる」「その全人類が消えたらどうなるでしょうねえっ!」「丸岡君! こっちに!」 ケガをしていない左肩を掴んで引っ張ったのは、長田先生だった。「丸岡っ」「丸岡くんっ」「三人とも、動かないで!」 長田先生は自分の身体を丸めるようになりながら巨大化し、すっぽりと僕らを覆った。 外で何が起きているのか。「先生……学園長は今、何を」「旧人類のコアを集めようとしているんです」
Last Updated: 2025-12-02
生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど

生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど

 傍から見れば不運で不幸、と思われる人生を真面目に生きた十九年。それが、あの世に逝った瞬間に大きく切り替わった! 何と、ファンタジーな異世界で、『生神様』と呼ばれる存在になってしまう! 降臨した神殿にいた神子と共に、神様として、この世界を破滅から救い、そして新しい俺の世界として創り直して見せる!  「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しております。
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Chapter: 第90話・名づけ
 俺を育ててくれたおじさんも言っていた。困っている人がいて、今自分が助けられる状態にあったら可能な限り助けなさいと。それはいずれ回り回って自分の所に帰ってくるから。ただし、見返りを求めて助けた途端に、それは意味がなくなるとも。 俺はおじさんのその言葉を胸に刻んでいる。 あの日、シャーナさんが世界を救ってくれと言って、この手に救う力があったから、俺は世界の【再生】を決めた。 エルフが、ドワーフが、ヒューマンが、助けてくれと言ったから救ってきた。 それだけのこと……なんだけど。『だが、理不尽にも遭っている、そうだろう?』 ……確かにな。 ビガスの人々は、俺の力を見て明らかに怯えていた。 エルフの長老は、あからさまにドワーフやヒューマンを蔑視している。 ここは決して理想郷ではない。 だけど。 この世界を救って、みんなが仲良くなれれば……もしかしたら、この世界は、理想郷になれるかもしれない。 誰も、理不尽に悔やむことがないように。 皆で、幸せに生きていける世界に。『お前の本当の望みは、皆が理不尽に遭わず幸せに生きられる世界か』 火蜥蜴に言われて,ようやく俺が本当に欲しかったものを探し当てた。 俺が目の前で両親を亡くした時のように、理不尽に大事なものを失わずに済むこと。 人間はいずれ死ぬ。世界はいつか滅び、神と呼ばれている俺もいつかは消えるだろう。 だけど、理不尽で大事なものを失わずに済む世界ならば、創れるんじゃないかと。 俺はそう思ってたんだ……。『それは困難な道だぞ?』 火蜥蜴は笑い含みに言う。 分かってる。 エルフとドワーフのように種族間で諍いを起こしている人たちもいる。 このまま俺が強くなっていけばビガスの人々のように俺は怯えられる存在になるだろう。 でも。 レーヴェとドワーフが少しでも分かり合えたように。 原初の神殿で守られている子供たちのように。 困難な道だけど、決して不可能ではないはずだ。 俺はそう思う。そう信じている。『甘いな』 甘いかな。いや甘いな。すごく甘い。 だけど、それが俺がやりたいことだった。『そうか』 そうだ。 ……って、いつの間に俺は頭の中で火蜥蜴と会話してたんだ?!『全く、生神は疎い』 どんくさいって言われちゃったよ……。『では、我はお前の神子となろう』「え?」 
Last Updated: 2026-01-10
Chapter: 第89話・この世界に来た理由
 ゲーム好きな友人が見せてくれた本の中に出ていた、炎の精霊、火蜥蜴。 炎の守護獣だ。 蜥蜴にも小竜にも見える火蜥蜴は、ちろちろと火を吐きながら笑う。『なるほど、無窮山脈も随分と力を失ったようだ。我の力を受け取りながらも炎水を神鉱炉まで上げる力がないのだね。もう少し我の目覚めが遅ければ……』 火蜥蜴は俺をチラッと見た。『このまま炎もろとも我が消え去ったか、あるいは我を封じる力が暴走して無窮山脈を巻き込んで噴火したか。どちらにせよ世界の破滅が一層早まったであろう』 いや、どちらにせよって言っても選択肢によってはエライ違う結果が出るぞ?! 火山が休火山になってそのまま力を失ったならゆっくりとした滅びだけど、この無窮山脈が噴火したら文字通りとんでもないことになってたぞ?! 少なくともドワーフは全滅。この規模の火山だったら下手すれば森エルフの聖域まで噴煙が届いて火が陰り、世界中暗くなっていたかもしれない。 まさに黙示録の世界だ。「……とりあえず俺的には世界滅ぼしたくないんで、目覚めてくれて嬉しいです」『くくく、眠りにつく時は、二度と目覚めることのなきようにと願ったものだが……嬉しいと言ってくれれば我も嬉しい』 その声は、耳に届くのではなく、直接脳みそに伝わっているようだ。『さて、ここまで炎水が失われれば、文字通り無窮山脈も終わりを迎えかけているわけだが……生神よ、お前はどうしたい?』 へ?『我は人間とは違う。神の力を継ぐ炎の守護獣。故にお前が何処から何故に来たかも知っている。何処かの世界での生を全うし、その心が認められて神としてこの世界に来ることとなったのだろう?』「知ってんの?!」『知っているとも。神とはそうして世界を訪れ、救うもの』「じゃあ、俺がいた世界にも神はいる……あるいは、いた、のか?」『ああ、そうだとも。神のいなかった世界はない。神を決める存在が何者か迄は知らぬが、かつて生きた世界でかくありきと望んだ世界を、呼ばれた世界で創り上げるのだ』「じゃあ……なんで生まれた世界じゃできないんですか?」『我を生み出せし神は言っていた。己が生まれた世界であれば、必ず邪心が入っただろう、生前の心を失くさない限り世界を平等になど扱えぬと』 なるほど……確かに。 俺は真面目に生きてきたつもりだけど、嫌いな奴もいたし苦手な奴もいた。もしそ
Last Updated: 2026-01-10
Chapter: 第88話・火蜥蜴
 ……いや。  ぼこっ。  ぼこっ、ぼここっ。 何かが沸き立つ音。 そして、見通しの眼鏡を使っても歪む視界。 これは……。 少しずつ向こうが白く見える。 眼鏡は視界の邪魔をしない。 遠くを見るスキル【遠視】でじっと目を凝らすと、炎水路の果て、赤く白く熱を発する空間があった。 その真ん中には、黒い岩で造られた神殿。 周囲の溶岩が神殿を守るように取り巻いている。 守護獣の居場所はあそこか? 自在雲で行けるか? とりあえず雲の進行速度を遅めて、少し溶岩から離れるように上に浮いた。 神衣がなければ、今頃熱死していたかもな。自在雲も神具じゃなけりゃ蒸発してたかも。 そっと溶岩の上を通りかかると、突然熱が渦を巻いた。 なんだ? 見回して。 溶岩が高波のように伸びあがって四方からこっち目掛けてきている! やべぇ、どうしよう、何か使えるか、俺の防御魔法は木壁だけだし、いや、水流もあるなでもあれは攻撃だしいやそれを防御に生かせばとりあえずどうにかしなければ!「|水壁《ウォーター・ウォール》!」 自在雲に乗った俺の周りに水の膜が張り巡らされ、突き抜けてこようとした溶岩と同士討ちして黒い岩と化した。「た、助かった……」 と思って、思い直す。「白き神衣って、炎からも守ってくれるんだっけ?」 咄嗟の新防御魔法が出来たけど、意味がなかったらしい。「ま……まあ、自在雲がヤバかったかもしれないし、これはこれで」『これはこれで、ではないだろう?』 凛とした声が届いた。 男か? 女か? どちらともとれる不思議な声。『焦って力の無駄遣いをしたのは間違いないだろうに』「いや、分かってるけど、とりあえず納得させなきゃね」 誰とも知れない相手に言い訳して、そして俺は慌てて顔を上げて目の前の神殿を見た。「もしかして、あんた……炎の守護獣か?!」『だけど、ここまで来れる力の主がここへ来たということは、我が目覚めなければならない時が来たということだろうね』 敵意がないようなので、神殿の床に降りて自在雲を戻した。 熱気は神殿の奥から発せられている。 俺は恐る恐る前進した。 神殿の一番奥に、炎を球にしたような珠が捧げられていた。 そういや、俺が落ちてきた原初の神殿も、そっくりな形してたような……。『もしお前がここへ来られる力の主ならば、こ
Last Updated: 2026-01-09
Chapter: 第87話・炎水を求めて
 マントを羽織って、神鉱炉の上に立ち。 透過するイメージを持つ。 すると、すーっとエレベーターで降下していく感覚。 ……真っ暗。 そりゃそうか、岩の中だし、光もないし。 一応眼鏡はかけているから、見下ろせば炎水路と呼ばれる炎水を導く水路は視認できるので、無事に辿り着けはしそうだ。 今のところ真下に向かって続いている。 しかし、何処まで続いているのか……。 俺が来た居住区は、無窮山脈の中腹付近にあった。中腹と言っても世界一高い山脈、エベレストなんざ屁でもないって感じで高い山の中腹から、溶岩が流れているような地下まで行くのは時間がかかるだろう……。 一応白き神衣を着ていれば熱気や炎からは守られるだろうけど、そこに行くまで時間がかかりそうだなあ。 炎の守護獣ってどんなものなんだろう。炎と言うと、有名なのは不死鳥フェニックスとか……? いや、フェニックスは鳥だから大地のドワーフとは相反するだろうし……。 と、視界に違和感を感じて降下を止めた。 穴が斜め下に曲がっている。 俺はその穴に沿って移動する。 随分降りた気がするが……もう数百キロ単位は降りた気が……結構時間も経ってるし……そう言えばこれまでトイレとか行きたいとかならなかったな……食べ物は食べれたけどお腹空いたとかはなかったし……。 ぼーっと考えてると熱くなってきた。 ……いや、精神的なものじゃなくて、実際に熱を帯びて来たって言うか……俺が熱出したってわけじゃなきゃ……。 間違いない。 確実に周囲が熱くなっている! てことはあれだ、溶岩地帯に近付いてるってことか? 神衣が守ってくれるって言ってたけど、そういや靴は革靴のままだった。神衣の加護は足も込みか? 唐突に視界が広まった。 と、唐突に落下の感覚っ! そうか、透過のマントの移動能力は透過中だけなんだっ! 足元に不安があるから慌てて自在雲を引っ張り出す。  ぼふっ。 雲にキャッチされて、やっと俺は安心して辺りを見回せた。 ……あれ? てっきり溶岩地帯に落ちてきたと思ったのに、辺りは真っ暗。 じゃあ、あの熱は何なんだ? 振り向いて、眼鏡をかけなおして俺が降りてきた炎水の通る道を見た。 炎水の道は床らしき所で、真っ直ぐ奥に向かって伸びている。 ここを通って来ていたってことか? この先に行くのか。 何がある
Last Updated: 2026-01-09
Chapter: 第86話・新しい神具
「俺はこの山脈の一番地下まで降りて行って炎の守護獣を起こして炎水を持ってこなきゃならないってことか」「おとぎ話だけど本当かどうかは分からない」「神が実在していた世界でそこまでしっかり伝えられた伝承がただのおとぎ話ってことはないだろ」 はあ~。 思わずため息が出た。「下まで潜るしかないかあ……」「ぅなー」 っと、そう言えば。 灰色虎は岩山の王者とか神の獣とか呼ばれていたけど、守護獣とはどう違うんだろう。 ヘルプをタップすると、すぐに回答が出る。 聖獣、神獣は、人間が神の使いとして崇める獣。神に等しい力を持つこともあるが、神そのものではない。 守護獣は、神の創り出した存在を守るために生まれた獣。守護神の力を受けた守護するものの化身でもある。 つまり、炎の守護神は炎の化身でもあるってことか。 神が去ると共にほとんどの守護獣もモーメントより去ったが、特に人間に親しい守護獣は眠りについたりしてこの神亡き破壊の時をやり過ごしていると言う。 炎の守護獣も、そんな一頭なんだろう。「う~ん」「今更悩むことはないのでは? シンゴ様」 レーヴェが声をかけてきた。「真悟様はこの世界を再生するために降臨されたはず。ドワーフの守護でもある炎の守護獣様を見過ごすつもりはないだろう」「まあね。ただ……」 俺は息をついた。「俺一人で行くしかないらしい」「シンゴ?!」「ぅなお?」「何故だ」「多分、この地下は溶岩地帯だ」 俺は神鉱炉の穴を指して言った。「溶岩ってのは俺の世界での炎水のことで、この底ではマグマがぐらぐら沸き立っていると思う。俺はこの服で守られるけど、水の属性魔法を持っていても全員熱と炎から守れるとは思えないし」「そう……か」「ドワーフのことを任せきりにするのは心が痛むが……」「気にすんな。【再生】は俺の仕事だ」「それなら、あれが役立つかもしれんな」 鉱山長が「持って来い」と子供ドワーフに合図した。 ドワーフ……最初にアシヌスを受け取ったあの子だ……は栗毛のアシヌスに乗って駆け去り、すぐに戻ってきた。「これ! リウスと一緒に見つけたお宝!」 ヤガリくんが目を見開く。「まさか、神具か?」「多分そうだと思う」 ボロボロの布のようなものと、枠だけ残った眼鏡。「ボロボロなのに破れないし壊れないから、もしかしたら神具かも知
Last Updated: 2026-01-08
Chapter: 第85話・神鉱炉
「ここが神鉱炉だ」 案内されたのは、採掘区からも居住区からも離れた開けた場所だった。 何か大きな建物と熱気を期待していたけど、熱気もないし建物らしい場所もない。……確かに鉱山の中だから建物を建てる必要はないだろうけど……。「がっかりと言った顔だな」「あ、ごめん」「いや、謝られる必要はない。あちらに普通の溶鉱炉はあって、そこは稼働しているんだが、鉄や金銀が限度、神聖銀やその他の特別な鉱石は神鉱炉でしか加工できないから、まだ完璧にこの鉱山は再生されたわけではない」「う~ん……」 俺は思わず考えてしまった。「属性のことか?」 ヤガリくんに言われて、俺は頷く。「神鉱炉に足りないのは熱……つまり炎。俺の属性の中には炎がない。となると、神鉱炉を復活させるのは……」「とりあえず見てはくれないか?」 言われ、俺は炉の中を覗き込んだ。 炉には……穴? 深いぞ。 かーなーりー深いぞー?「神聖なる|炎水《えんすい》が、昔は無窮山脈の一番奥に眠る「炎の道」と呼ばれる場所から導かれていた」 エンスイ? 即座に端末でタップしたところ、「溶岩」と言う回答が出てきた。 なるほど、溶岩ね。「世界が滅びに導かれ、炎水も沸き出す量が減り、終いにはこの通りだ。炎水がなければ神の鉱石は加工できない」「う~ん……」 俺は頭をガシガシ掻いた。「溶岩……炎水が枯れ果てたって可能性もあるぞ……。とすると、やっぱり炎の属性がいるなあ……」「炎水果てる時、神は炎の守護獣を目覚めさせる」 ぼそりと鉱山長が呟いた。「何それ?」「無窮山脈に昔から伝わるおとぎ話だ」 炎の守護獣。 炎の属性を持つ神獣?「工場長さん、詳しく教えてくんない?」「……俺もしっかりとは覚えてないんだが、この無窮山脈にずっと伝わっていてな」 ……無窮山脈の真の財宝は、炎水である。 世界の始まりの時、ドワーフの守護神は、炎の守護獣を使わして、地の最も奥底に流れる炎水を神鉱炉まで導き上げた。 炎の守護獣はそれを認めて長き眠りについた。 地の滅びの時、炎水が枯れ果てたなら、新たなる神の訪れを待て。 神は地の奥底へと赴いて、炎の守護獣を目覚めさせ、世界の再生と共に炎水を導き上げるだろう。「……って話だ」「あー……つまりだ」 俺は頭を抱えたくなった。
Last Updated: 2026-01-08
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