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last update Dernière mise à jour: 2025-12-03 19:55:52

「……はぁ」

 私は観念して、その場にしゃがみ込む。

「分かりました。追い出しませんから」

「……ほんと?」

「本当です。今日はもう遅いですし、電車もないですし」

 言い訳を並べ立てると、彼は安堵したようにふにゃりと笑った。その笑顔は、テレビで見る営業スマイルの百億倍、無防備で破壊的だった。

 そのまま、彼は電池が切れたように横倒しになった。安物のラグの上に、高級スーツのまま転がる。ものの数秒で、スースーと規則正しい寝息が聞こえ始めた。

 よほど疲れていたのだろう、気絶するように深い眠りへ落ちている。

 でも――私のスカートを握った左手だけは、決して離そうとしなかった。

「……どうしよう、これ」

 私は、動くに動けなくなっていた。スカートを掴まれたまま、体育座りをする。

 目の前には、世界が恋する綺更津レンの寝顔。

 スーツは汚れだらけ、涙の跡も目立つ。

 それでも、やっぱり。悔しいくらいに美しい。

 長い睫毛が頬に影を落としている。形の良い唇が、わずかに開いていた。

 無防備すぎる。ここがもしセキュリティ万全の高級マンションならまだしも、鍵も心もとないボロアパートだぞ? 不審者
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