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壊れた夢の向こう側で
壊れた夢の向こう側で
Author: ポプラ

第1話

Author: ポプラ
ピッ

青木拓海(あおき たくみ)にかけた十数回目の電話が、ようやく繋がった。

私、森川楓(もりかわ かえで)が口を開こうとした瞬間、耳元に冷たい声が響いた。

「何の用だ?」

「拓海……ファッションショーがもうすぐ始まるの。あなた、私の初ステージを見に来るって約束してくれたよね。今どこにいるの?」

「そのことか?急用が入った。行けない」

「でも、前に必ず来るって――」

最後まで言い終える前に、通話は一方的に切られた。

私は呆然と、暗くなったスマホの画面を見つめた。

その時、ニュースのトップ記事が表示された。

#金融界の大物、人気女性タレントを守るためパパラッチを暴行

思わずタップする。

映像に映っていたのは、照明を落とした高級ホテルのロビーだった。

汐里紗代(しおり さよ)は一人で涙を流していた。

そこへあるメディアの記者が近づき、取材を断られてもなお、写真を撮りながら執拗に質問を浴びせていた。

その瞬間――

拓海が画面の中に現れた。

彼は険しい表情で記者に近づくと、拳を振り下ろした。

相手のカメラが床に叩き落とされるまで、何度も。

そして次の瞬間には、傷ついた宝物を抱きしめるように紗代を腕の中へ引き寄せ、その場を去っていった。

コメント欄は称賛の言葉で埋め尽くされていた。

【かっこよすぎる!!】

【これこそ本当の愛って感じ】

「森川さん!いよいよあなたの出番です。準備をお願いします!」

私はスマホを置き、濡れた目元を拭って深く息を吸った。

これが、彼の言う「急用」だったのだ。

彼は知っていたはずだ。私が、彼に国際舞台へ立つ瞬間を見届けてほしいと、どれほど願っていたか。

私は昨日のことを思い出した。

彼の初恋相手の帰国パーティーで――

ただ一台の車が、紗代の腕にかすりそうになっただけで、彼は腕の中にいた私を勢いよく突き飛ばし、私を車の前へ放り出した。

そして、彼はすぐに紗代を抱きしめた。

「紗代、大丈夫か?痛くないか?」

彼が彼女を心配そうに見つめるその瞳に、地面に倒れた私の姿は少しでも映っていたのだろうか。

我に返ると、会場には礼儀正しい拍手が響いていた。

私は顔を上げ、堂々とランウェイの中央へ歩いていく。

最後のデザインを身にまとい、披露しようとしたその時――

指先に鋭い痛みが走った。

私は動きを止めた。

気づいてしまった。

衣装の内側には、無数の細かなガラス片が縫い込まれている。

歩くたび、動くたび、それらが私の肌を切り裂いていく。

観客席には、ファッション界の名だたる審査員たちが並んでいた。

このショーは、私が何年も待ち続けた夢の舞台。

数え切れないほどのデザイナーが憧れながらも、決して立つことのできない場所だった。

これは私にとって、たった一度のチャンス。

どんな理由があっても、途中退場など誰も受け入れてはくれない。

そう分かっていたから――

私は痛みに耐えながら、最後までショーをやり遂げた。

一つ一つの動きが、腕と身体に新たな傷を刻んでいく。

ショーが終わる頃には、私の肌は傷だらけになっていた。

それでも私はプロとしての笑顔を崩さず、優雅に観客へ向かって一礼した。

――

舞台裏へ戻った瞬間、私はようやく、激しい痛みに顔を歪めた。

助手は慌てて私を近くのクリニックへ連れて行った。

両腕も、胴体も、無数の傷で覆われていた。

特に手首には、大量のガラス片と裁断された鋭い金属片が食い込んでいた。

医師は慎重に異物を取り除き、傷の処置と包帯を施した。

詳しい検査の結果――

医師は静かに告げた。

「手首の神経が損傷しています。これまでのように細かな服飾デザインの仕事を続けるのは、難しいかもしれません」

その瞬間、ずっと張りつめていた私の心は、完全に崩れ落ちた。

長い間、私を支えていた強がりも、もう保てなかった。

助手が何度も慰めてくれた後、警備担当者が、一人の見知らぬ女性を連れてきた。

「森川さん、防犯カメラの映像を確認したところ、この女性があなたの作品にガラス片と金属片を縫い込んだ人物です」

その女は少しも動揺していなかった。それどころか、挑発するように口角を上げた。

私はこの顔を見たことがない。明らかにデザイン業界の競争相手ではない。

震える声で、私は尋ねた。

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