Share

第 426 話

Author: 一笠
それから、スタジオの外で、輝は凛の車に乗り込むと、後部座席に渚が座っていることに気づいた。

「姉さん、なんで彼女を連れてきたんだ?」輝は露骨に嫌な顔をした。

渚は彼に白眼をむき、イヤホンを取り出して耳に差し込み、腕を組んで座席に深く座り込み、目を閉じて眠りについた。

その様子を見て、輝は内心穏やかではなかった。「俺はお前の兄だよな?なんでこんな態度を取るんだ?」

「彼女は今日一日忙しかったんだから、少し眠らせてあげて」

凛は車を始動させながら、軽く説明した。「一緒に写真展の成果を見に行くのよ。少しは勉強になるでしょ」

「いや......」輝はむっとして、二人を交互に見つめた。「まさか、この格好
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1057 話

    凛が微笑んだ。聖天は、世界が輝きを増したように感じた。......1ヶ月にわたるヨーロッパ旅行が終わっても、凛はまだ授賞式の夜を忘れられなかった。妊娠後期になるにつれ、体は重くなっていったが、それでも凛は毎日撮影の仕事に忙しく、充実した日々を送っていた。その間、朔の裁判も行われていたが、判決は弁護士の予想とほぼ同じだった。その日、テレビでニュースが流れていた。「綾辻朔死刑囚の死刑が、本日午前に執行され......」その時、梓には朔の最後の瞬間が見えた気がした。ちょうど凛の検診中だった梓は、一瞬、動きを止めてしまった。凛は梓の手を握り、優しく言った。「梓、これで本当に自由になっ

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1056 話

    結婚式の後、聖天は凛と新婚旅行で海外に出かけた。ヨーロッパのカフェで休憩していると、弁護士から電話がかかってきた。「本日の公判は順調に進みました。このままいけば、あと1ヶ月で手続きが完了し、判決が下されるでしょう。綾辻さん、おそらく死刑は免れないかと。自首したあの『ウルフ』という男は、おそらく無期懲役、優奈さんに関しては......7、8年の懲役になると思われます」......弁護士は公判の様子を詳しく説明していたが、コーヒーを運んでくる凛の姿が目に入ると聖天は、「分かりました。残りは任せます」とだけ返事をした。凛も今日は公判の日だと覚えていたので、コーヒーをテーブルに置き自分も座

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1055 話

    二人は微笑みながら見つめ合った。この光景に、参列者たちは皆、深く感動した。雪は涙を拭いながら呟く。「聖天が凛と結婚できたことは、もちろん聖天にとっての幸せなんだけど、私たちにとっても大きな喜びね......」ふと視線を向けると、慶吾もこっそりと涙を拭っているのが見えた。雪に見つめられたことに気づいたのか、慌てて手を止め、背筋をピンと伸ばす。雪は涙を拭うと、微笑んで言った。「もう誰もあなたのことなんて見ていないんだから、泣いたってどうってことないわよ」「泣いてなんかない。こんなめでたい日に、なぜ泣く必要があるんだ?」慶吾は鼻をすすり、真面目な顔で言った。「目にゴミが入っただけだ」雪は

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1054 話

    真っ青な空には白い雲が浮かんでいる。昨日の夕方から、続々と招待客が島に到着し、別荘地にチェックインしていた。普段裕福な暮らしをしている彼らも、島の装飾に驚きを隠せなかった。島全体が美しく飾り付けられ、甘い雰囲気に包まれている。青と白を基調とした花々が桟橋から式場となる芝生まで敷き詰められていた。今までの霧島家はパーティーを開く際、仕事関係の人だけを招待していた。しかし今回は、雪が芸能界の重鎮たちを招待していた。それに、美雨も凛を応援するために多くの芸術家仲間を招待したのだった。招待客リストが完成した時、慶吾は思わず驚いた。「島が人で溢れかえってしまうんじゃないか?」すると輝が驚き

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1053 話

    「来る途中慶吾と話したの。夏目家を出て、霧島家に嫁ぐという決断をしてくれたあなたを、私たちは絶対に裏切らないようにしよう、って。それに今、あなたは妊娠しているのよ。これから10ヶ月もの間、とても大変だと思うし、出産だって命懸けのことなの。だから、もし私たちにできることが少しでもあるのなら、何でもさせて欲しいなって思って」雪は凛の肩に手を置きながら言った。「もしあなたが断ったら、私たちは悲しいわ。あなたのために何かしたいの」ここまで言われたら、もう断ることなんかできないだろう。凛は少し考えてから頷いた。「ありがとうございます。お父さん、お母さん」慶吾夫妻はすぐに満面の笑みになった。「そう

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1052 話

    笑いを堪える凛の声に、聖天はほっと胸を撫で下ろした。「何か良いことでもあったのか?」「うん」凛は手に持った妊娠検査の結果を見ながら、嬉しそうに言った。「そんなに私に会いたいんだったら、聖北病院まで来て」本来であれば、拘置所から聖北病院までは車で1時間ほどかかるのだが、期待に胸を膨らませた聖天は50分もかからずに到着した。車を停め、遠くから入口に立っている凛の姿を見つけた聖天は、すぐに車を降り、彼女に向かって大股で歩いて行った。凛は幸せそうな笑顔で、両手を広げ、聖天の胸に飛び込んだ。「私、妊娠したの」「なんだって?」聖天は驚き、凛の肩を掴んで少し突き放した。「もう一度言ってくれ」そ

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 760 話

    『Fan』の9月号の表紙撮影が迫っていたため、凛は聖天との些細な口論に構っている暇はなかった。スタジオでの仕事を手配した後、志穂に連絡して雑誌社の場所を確認し、電話で菖蒲が表紙撮影を承諾したことを伝えた。志穂は喜び勇んで、早速凛の到着を待ちながら会議の準備に取りかかった。そして、凛と会うと、言葉を交わす間もなく、早速会議を始めた。ファッション誌業界では、9月号は最も重要な号であり、表紙はその中でも特に重要だ。そして『Fan』は今年創刊されたばかりの新雑誌であり、最初の9月号の重要性は言うまでもない。志穂は凛の帰りを待っていたため、表紙を決めるまで1ヶ月も残っておらず、編集部員は皆、

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 750 話

    8月末、夏の終わりを告げるように、秋の気配が少しずつ感じられる頃だった。凛は映画の撮影を2週間早く終え、出発前夜、秋司はビールを2ケース用意し、瑶子と一緒に凛の見送りに来た。この4ヶ月、秋司は自分の目に狂いはなかったと確信し続けていた。今回の仕事は、監督としてのキャリアの中で、これ以上ないほど刺激的で充実したものだった。「凛、俺は......本当にあなたの大ファンなんだ......」少し飲みすぎた秋司の顔は、砂漠の強い日差しと風に長く晒され、ゴツゴツしていた。今は赤黒く、素朴な男といった感じで、まるでその土地で生まれ育ったようなたくましい男のようだった。「この映画は、想像をはるかに超

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 786 話

    「え?」礼は唖然とし、箸を持つ手が震えた。梓の方は落ち着いていて、さらりと「よかったね、おめでとう」と返した。「え、ちょっと待って......」礼は思わず声を詰まらせた。「急にどうしたの?」礼の驚きようを見て、凛はバツが悪そうに笑った。「私も、びっくりしちゃいました」全部落ち着いてからみんなに話そうと思っていたのに、聖天は待ちきれなかったみたいだ。さっきキッチンで彼が言った言葉を思い出して......まあ、こんなに素敵な彼氏なら、隠しておく理由もないから。凛は聖天の手を握り、優しく微笑んだ。「急だったでしょう?でも、この決断に至るまでは、いろいろありまして。ですから、私たちは

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 768 話

    瑶子は足を止め、状況を理解する間もなく、翔にダイニングルームへと促された。「おばさん、残ってご飯を食べないと、おばあさんが怒るぞ」こうして、瑶子は促されるまま、ダイニングテーブルについた。すぐに使用人が箸と温かいスープの入った茶碗を運んできた。灯りに照らされ、湯気がふわりと立ち上っている。翠はすかさず言った。「これはおばあさんが作ってくれたスープだよ。すごく美味しいんだわ!」「ゴホン......」和子は咳払いをして、翠を諭すように言った。「食事中は静かにしなさい。余計なことを言わずに、ご飯を食べなさい」翠はバツが悪そうに肩をすくめ、箸を取り上げた。逆に翔は口数が多くなった。「お

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status