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第 456 話

Author: 一笠
インターホンを押そうか迷っていると、ドアが突然開いた。

聖天の姿を見て、凛は一瞬、呆然とした。

「何か用か?」

問いかけに、我に返った凛は、「ええと......ご飯はもう食べましたか?ちょうど、おかずを作りすぎでした」と言った。

「まだだ。行こう」

そう言うと、聖天は凛を避けて、慣れた様子で隣のマンションに入っていった。

彼の後について行きながら、凛は不思議に思った。聖天、最近ますます遠慮がなくなってない?お世辞一つも言わないなんて。

ダイニングテーブルにつく聖天を見つめ、凛は少し躊躇してから向かいに座った。彼にスープを注ぎ、自分のペースで話し始めた。「あなたの計画は何なのか、私にはわかりませ
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