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第 689 話

Author: 一笠
【早く離婚して、一人で輝いて!】

......

コメントが画面を埋め尽くす中、清子は演奏に集中し、画面に目を向けることはなかった。

煌はスマホから目を離さずに、ギフト送信機能が依然としてクローズされたままだった。

三日前、彼はSNSのトレンドで清子の名前を目にした。興味を持って辿っていくと、彼女がすでに自宅に戻った直後から配信を始め、SNSで静かに注目を集めていたことを知った。

自分が病院で苦しんでいた時、清子はネット上で人気者になっていたのだ。

最初、視聴者たちは同情心から清子に注目し、いつ離婚するのかと様子を伺っていた。

だが、彼女の指先からこぼれ落ちる音色に、やがて人々は心を奪われていく
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