LOGINそれはダメだ。母親として、息子に迷惑をかけるわけにはいかない。「家が狭くて、住み心地が悪かったから臨璽山荘に引っ越したのよ。だって広いお屋敷の方がいいでしょ?」凛に疑われるのを心配し、雪はわざとらしく満面の笑みを浮かべた。しかし、そんなわざとらしい笑顔は、かえって不自然だった。凛はその嘘を見破りながらも、柔らかな笑みを浮かべて言った。「お屋敷はアパートよりも快適ですもんね」......夜、時間通りにインターホンが鳴った。凛はドアを開け、聖天を見て微笑んだ。「霧島さん、ますます時間通りになってきたね」「ん?」聖天は軽く眉を上げ、凛の笑顔に何か隠されていることに気づいた。「何か
30分ほど経つと、雪がファイルを閉じた。「とりあえず、これは私が預かっておくから。また連絡させてもらうわね」一度雪を断った以上、そう簡単にはいかないだろうと分かっていたので、志穂に焦る様子はなかった。「はい」その後、志穂は夫人たちとファッション業界の話題で談笑しつつ、さりげなく相手を持ち上げた。しかし、それは全く嫌味ったらしくなく、むしろ夫人たちは気を良くした。そしてあっという間に、志穂は夫人たちの心を掴んだ。しかし、雪は上の空だった。片手をファイルに置きながら、このプロジェクトはそもそも凛が仲介してくれたものだから、一言もなく出資を決めるわけにはいかないよな、と考えていた。そして
「二宮さん」自分の名前を呼ばれ、雪は振り返った。そこに立っていたのは、志穂だった。きちんとしたスーツ姿で、にこやかに微笑んでいる。前回の出資を断られたことを思い出し、雪は面白くない顔をした。「あら、鈴木社長。こんなところまで来て、どうしたの?」「どうしてもお会いしたくて。こちらでお茶会を楽しんでいらっしゃると伺い、会いにきてしまいました」志穂は微笑んで言った。「今日の支払いは私が持ちますので。みなさん、好きなだけ召し上がってください」他の夫人たちが喜んで頷こうとしたその時、雪が嫌味ったらしく言った。「お茶菓子代くらい、私にも払えるから、鈴木社長は気を使わなくたっていいのよ」夫人たち
一方、別荘に戻った優奈は、門の外に見慣れない車が数台停まっているのに気づく。車から降りると、門が開け放たれ、潮がスーツ姿の男たち数人を連れて家の中を見て回っているのが目に入った。「一体何をしているの?」優奈はそう叫ぶと、彼らの方へ早足で向かっていった。優奈の勢いに驚いたのか、男たちは顔を見合わせたり、中には後ずさりする者もいた。「奥様、この家、本当に売るんですか?」「私たち、正直言えば揉め事の原因になりそうな家は買いたくないんですよ。後々面倒なことになりますから......」......潮は慌てて男たちをなだめた。「心配しないでください。この家はうちの息子のものですから、私に決
「私は身内の人間ではないので、佐藤社長の私生活に口出しする資格はありません。ですが、ビジネスパートナーとして、佐藤社長にはずいぶん助けてもらいました。その恩もあるので、あなたの一方的な話を聞いて、協力関係を解消するなんてことはできかねます」「あら、冗談ですよ。そんな、怒らなくてもいいじゃないですか」優奈は拗ねたように言う。しかし、志穂の表情は和らぐことなく、優奈を睨みつけていた。「そうですね。煌はもういないんだから、私も諦めないといけません」優奈は自分が妥協したように言っているが、その声にはなんだか皮肉が滲み出で、全く感情がこもっていない。「あの委任状は、煌が私に残してくれた唯一のも
記者会見の会場を後にして車に戻った優奈は、いまだ納得がいかない様子だった。今日こそ浩二と偶然を装って出会い、顔を売るつもりだったのに......先程の様子だと、浩二は凛たちと食事に行く気満々みたいだった。計画は水の泡。しかし、頭には別の考えが浮かんだ。「『ファン』雑誌社へ」そう指示を出すと、優奈は窓の外の宣伝ポスターに目をやった。凛の単独ポスターが、やけに目に刺さる。一体、凛のどこがいいっていうわけ?どうしても理解できない。以前はいつも自分が凛より優位に立っていたのに、今では凛の方がずっと華々しい生活を送っている。一体いつの間に、こんな風になってしまったんだろう?車が走り出し、ポ







