Mag-log in「さよ、もう帰れと言うてくれるな。さすがにキツイ」神城はそう告げてしまう。その言葉を言わせた原因は己にあるとわかってはいるが、口にしてしまった。「それは…あんたが言わせなきゃいいことだ」小夜は少し考えたが、そう言い切った。「そうだな。気をつけよう」神城は小夜のその言葉に、小さく笑いながら頷いた。「小夜…小夜を俺にくれぬか?」神城の言葉に小夜は、「わちしは蒼真さまのものでっしゃろ?」そう返した。神城は少し驚く。そして、その身体を抱きしめ、「そうだな。俺のものだ。小夜も、暦も…そして、俺は小夜にやろう」と囁いた。その囁きを聞き、小夜は涙を零した。決して叶わぬと思っていた願い。この男は、こんなにもすんなりと叶えてしまう。「せやったら…空蝉を…奪ってくれなはれ…」小夜の手が神城の頬に触れる。「俺は空蝉が欲しいわけじゃない。さよ、お前だから欲しいんだ」神城は小夜のその手に己の手を添え、ハッキリと言い切った。それは揺るぎない想い。だから今宵も、小夜から空蝉を奪うという宣言でもあった。「わちしかて…元帥はんには興味ありまへん…そぉまが欲しいんどす」小夜も、わざと同じように告げてくる。身分も、何もかも必要ないのだと…。ただ、お互いの存在が欲しいのだと…。神城は小さく笑うと小夜を引き寄せ、首の後ろに手を添えると、小夜の唇を奪った。「んっ、ふぅ、ぁ」小夜は思わず声を漏らした。何度も触れ合う口付けは、次第に深いものへと変わる。唇が離れれば、どちらからともなく透明な糸が引く。神城は小夜の簪をそっと外した。はらりと落ちる髪。その一房を手に取り、唇を寄せた。簪を窓辺の箱の上に置くと、神城は軍服の上着を脱ぎ捨てた。「小夜、今宵のお前も綺麗だ」と、囁くように告げると、小夜の打掛を脱がせた。一枚、また一枚と着物を脱がせていく。少しずつ露になっていく小夜の身体。空蝉を剥がされていく。「…そぉま…」小夜は神城の名を呼び、その細い腕を彼の首へと回した。そして、自分から口づけた。今はただ、ただ、触れ合いたかったのだ。「んっ、ふぅ、ん」甘く滲む吐息が、静寂の中に広がっていく。「んっ、ぁ、ダメっ、ん、」肌襦袢の上から胸の飾りを弄られ、吸われる。それだけで、ぞくりと腰にクル。空蝉は幾度となく抱かれてきた。客の
小夜は自分の気持ちを落ち着かせるように息を吐くと、神城に向き合い、ゆっくりと座った。神城もまた、小夜と向き合うように静かに腰を下ろした。暫くの沈黙。「誤解を招いたようだが…。今日は部下の婚儀があった」神城が静かに口を開く。小夜はそれを静かに聞いていた。「この白い軍服は我々にとっては礼服だ。誤解されても仕方がない」女将にも驚かれたしな、と神城が言う。その言葉に、「あん人…知っとって…言わへんかったな…」と、小夜がボソリと呟く。「酒の匂いがするのも、他の女の匂いがしたのもそれが理由であって、決してやましいことはしていない」と、神城が続ける。「そない、どうとでも言えるやない」と、小夜が吐き捨てるように言った。口ではどうとでも言える。確かにそうである。「俺は言ったはずだ。小夜が、暦がいいと」小夜の言葉に、神城はハッキリと自分の気持ちを口にする。「そないなこと、誰が信じられますん? 空蝉やよ、わちし」小夜の眉間にしわが寄る。裏切られた気持ちの方が強い。いくら真実を言われようとも、信じ切れないのだ。自分が空蝉だから…。花街に身を染めた空蝉だから…。「俺はこの花街に身を置く小夜だから…あの奥道で気高く生きる暦だから惚れたんだ」神城は小夜の手を取り、ジッとその瞳を見て告げる。実に実直な男らしい言い方である。「な、何を、言うて…」小夜は言葉に詰まる。以前言われた言葉と同じ意味だが、今は違う重みを持って胸に響いた。「なにをって…俺がどれだけお前を好いているかをだ」小夜の言葉に、神城はハッキリと答える。「そないなこと、空蝉に言う言葉やあらへんよ…」小夜は逃げていた。怖いのだ。本当に…。裏切られるのが…。空蝉でありながら惚れてしまったからこそ、目の前の男に裏切られるのが怖い。だから小夜は…逃げた。己の気持ちから目を背けたのだ。だが、そんな小夜を見透かしたかのように、神城が続けた。「俺は空蝉に惚れたつもりはない」神城の言葉に、ズキリと小夜の胸が痛む。小夜は神城から視線を逸らした。「俺は空蝉の殻を被った小夜に…暦に惚れたのだ」そっと小夜の頬に触れ、神城が続ける。「暦…俺はお前が好きだ。お前自身が好きなんだ」優しい手つきで小夜の頬を撫でていく大きな手。「…バカ…だろ、あんた…」絞り出すように告げ
店の暖簾をくぐれば、女将が少しだけ驚いた顔をした。「ようこそ、元帥はん。今日はいつもとちごたカッコして、それに飲んではります?」女将は微かに香る酒の匂いにも驚いていた。「部下の婚儀がありました。いつもよりは飲まされました」神城は苦笑を浮かべながら、理由を口にした。「あの子、泣かせんといてくださいよ」女将は小さな溜め息をついた。「勿論です。本来なら着替えるべきだったんですが…すぐにでも顔が見たかったので…」神城は素直に頷き、この姿で来た理由を口にした。「あの子、誤解しますやろな…。そういうの疎いさかい…」奥道育ちのあの子には縁のない話やからと、女将が呟いた。「そうなったらちゃんと話します」神城はそう告げると、頭を下げた。「あの子、もう少ししたら来はりますから、部屋でまっとてください」女将はそう告げると、神城をいつもの部屋へと案内した。神城はもう一度、頭を下げると、いつもの部屋へと向かった。 小夜はいつものように、店の暖簾をくぐり、中へ入った。店に来た小夜を見た女将は、少しだけ複雑そうな顔をする。「どないしたん?」そんな女将に小夜が声をかけるが、女将は少しだけ考え、「なんでもあらへん。覚悟決めて行っておいでや」とだけ告げた。小夜は意味がわからず首を傾げるが、「お客はん、待っとるさかいに、早う行き」と急かされ、小夜は戸惑いを胸に抱えたまま部屋へと向かった。部屋の扉を開ければ、あの打掛が用意されていた。それだけで、誰がいるのか小夜にはわかった。約束などもらってはいない。それでもこうやって定期的に来てくれる。小夜には、それが嬉しかった。小夜は打掛を身にまとい、部屋の中へと歩みを進めた。そして、いつもの場所に男はいた。「ようこそ、おいでやす」と、声をかけたものの、小夜は戸惑いを隠せなかった。いつもと違う、白い軍服。そして、なによりも男から香る酒と香油の香り。小夜の声に反応するように、ゆっくりと振り返る男。普段よりも嬉しそうなその顔に、小夜の心が悲鳴を上げた。「約束もないのに来てしまいました」と、小夜を見て神城が告げる。「わちしと神城さまとでは、約束など…ないやないですか…」答える小夜の声が震えた。約束などないのだ。小夜は空蝉だから。「なにを言う、自分は…」「帰ってくれなはれ」神城の言葉
お互いの気持ちを知り、本当の意味で結ばれたあの日から、幾日かした吉日。空は晴天。今日は神城にとって、大切な日でもあった。「元帥、お時間です。向かいましょう」佐怒田が北野と共に神城の所に出向き、声をかけた。「わかった、行こうか」神城は立ち上がり、二人に向き合った。「やっぱり元帥がそれを着ると、イケメンがさらに引き立ちますね」北野が神城の姿を見て、告げてくる。いや、今ここにいる三人が同じ軍服を着ているのだが…。長身で、程よく筋肉のついた神城が着る礼服である白の軍服は、普段のモノよりも神城の顔の良さを引き立てていた。「喜んでいいことなのか? それは…」北野の言葉に、つい神城が聞いてしまう。「もちろんです」「今日の婚儀に参加する女性たちも、ほっておかないでしょう」と、佐怒田と北野が言い切った。「勘弁してほしいな、それは…」神城はそんな二人の返事に、心底うんざりとした顔になる。神城の心の中には、すでに決めた人がいるのだ。それなのに言い寄ってこられれば、迷惑でしかない。約束を違えるつもりなどないのだ。本気で…。三人は新谷の婚儀が行われる会場へと向かった。 会場で手続きを済ませた三人は、新谷の元へと足を運んだ。事前に、この時間に来てほしいと頼まれていたのだ。挨拶をしたいからと…。新谷の親族が集う、小さな部屋へと通された。「元帥、佐怒田上官、北野上官、ありがとうございます」新谷は三人を見て、頭を下げた。「頭を上げなさい、新谷。今日は君の祝いの席だ」神城は頭を下げた新谷に、よしなさいと手を振った。それにご挨拶を、と神城が告げる。「元帥、紹介します。自分の両親と、妻となる美佐です」新谷は傍らに控えていた三人を、そっと手で示した。「神城と申します。部下の佐怒田と北野です。この度はおめでとうございます」神城は深々と頭を下げた。「息子がいつもお世話になっております。一度お会いして、お礼をと思いまして…」新谷の父親が神城たちに頭を下げた。「頭を上げてください。新谷はいつもしっかりとした働きをしてくれているので、我々も助かっております」神城は新谷に助けられていると、両親や花嫁に告げる。新谷は恥ずかしそうに頭を掻いた。「慎吾さんの上司の方が、こんなに優しそうな人たちで安心しました」花嫁が微笑みながら、そう言った。
「んっ」小さな声と共に、小夜の瞼がふるりと揺れた。そんな小夜の頬を、頭を、そっと優しく撫でていく手。言葉などなく、ただ、本当に大切にしていると、その手が物語っていた。「…んッ…そぉ、ま、さま?」少しだけ眉間にしわを寄せ、眩しそうに小夜が薄目を開けた。「もう少し、寝てても大丈夫だぞ」神城はそっと小夜の額に手を添えながら、低く穏やかな声で言う。「…そぉ、ま、さま、や…今日、も…いて、くれ、はった…わぁ…」まだ少し眠気を纏った声で、小夜が嬉しそうに告げてくる。「あぁ、約束だからな」神城はそんな小夜の額に、小さなキスを一つ贈る。「おぉ、きぃ」小夜が嬉しそうに微笑んだ。神城はそんな小夜を抱きしめた。あぁ、愛おしい我が空蝉よ。どうかその瞳を涙で濡らさないでくれ…「そぉ、ま、さま?」神城の行動に、不思議そうな声を出す。「いや、寝起きの小夜も美しいなと思ってな」噛み締めていたのだ、この幸せを…。と神城が告げれば、小夜が頬を染める。「いじ、わるや、わぁ、そぉ、ま、まさ」神城の胸に顔を埋めて、小夜はそう言葉にならない声を漏らした。神城は小夜のうなじにかかる髪を退かしながら、「小夜には、意地悪をしたくなる」と、低く笑った。そして、現れた項に唇を寄せた。「んっ、ぁ、そぉ、ま、んん」小夜の唇から吐息が零れ落ちる。うなじ、首筋、肩口と落とされる口づけ。ふるりと小夜の身体が震える。その先の行為に期待するかのように。「いいのか?」耳元で熱く、低く問われ、「んっ、ぁ、せきに、ん、とうて、くだされ、ぁ、ん」小夜は少しだけ潤みだした瞳で神城を睨んだ。「勿論、責任は取ろう」神城は小さく笑うと、小夜の唇を親指で拭い、己のそれを重ねた。後は、刻が許すまで、ふたりはお互いを求め続けた。この逢瀬が、次なる逢瀬までの繋ぎと言わんばかりに…。「ほぅ」と、小さな息を吐き、少しだけ気怠い身体に着物をまとっていく。「すまぬ、ムリをさせたな」と、神城は小夜が着物を着るのを手伝いながら言った。「さすがに…やりすぎだと思うぞ俺…嬉しいけどさ…」小夜ではなく、暦が答えた。「仕方がない。気持ちが通じたのだ、高ぶってしまうだろ」神城は後ろから小夜の身体を抱きしめ、その頬に唇を寄せる。「あんたがここまで…俺のこと好きでいてくれたのには驚いた
「ぅ、ん、ぁ、ぁ、ん、ぁ」散々、じらされ、いかされた。今宵の神城は意地悪だと思った。自分の反応を楽しんでる。そう思えてさえくる。だが、それが嫌なわけじゃない。そんな神城に、確かに愛されていると感じることが出来ているのだ。「ひっ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ」声が止まらなかった。己の中で蠢いていた指が抜かれ、代わりに入ってきたのは男の熱い塊。小夜の指が神城の背に爪を立ててしまう。「大、丈夫、か?」汗で張り付いた小夜の前髪を退かしながら神城が問えば、「ん、ぁ、へい、きぃ、ぁ、ぁ、」潤んだ瞳で返事を返してきた。「なら、いい」神城は現れた額に唇を寄せると、小夜の腰を引き寄せた。「ひ、ぁ、ぁ、ん、ぁ、やぁ、ん、ぁ」厭らしく動く腰、容赦なく攻めてくる快楽。逃れても逃れても、逃れきれずに、また溺れていく。「ぁ、ぁぁ、ひぅ、ぁ、やぁ、ダメっ、ぁ、ぁ、ぁ」深く中を抉られ、胸の飾りを噛まれ、吸い上げられる。両方一度に与えられる快楽に、小夜がなく。淫らに、妖艶に、艶やかに、その白い身体を紅に染め、なく。「ぁ、ぁぁ、そぉ、ぁ、ん、ぁ、まぁ、ぁぁ、ん、ぁ、」小夜の手が、指が、神城の背を何度も傷付けていく。行き過ぎる快楽にその身体を震わせ、その大きな背に抱き着き、傷をつける。「ぁ、ぁ、やぁ、ぁ、ぁぁ、ん、ぁ、」逃れるように打掛の上を泳ぐ身体は、神城の腕に捕らえられ、逃げ場を失う。こんなにも違うものなのか?気持ちが通じ合うモノとは、こんなにも違うものなのだろうか?「ぁ、ぁ、そぉ、ま、ぁ、ん、ぁ」その名を口にすれば、すっと嬉しそうに目が細められる。その顔が、表情が、いつになく漢の顔で、小夜は頬を染めた。「さよ」その言葉と共に、唇が塞がれる。さよ、そのたった一言が小夜の心を軽くする。空蝉ではなく、小夜ではなく、暦でもなく、自分という人物を全部ひっくるめて呼んでいるのだと…。小夜は神城からの口づけを受け止めながら、そっと首に腕を回した。「ん、ふぅ、ぁ、ぁ、ぁぁ、んぁ」もう何度目かわからぬ口づけは、甘い痺れを小夜の全身に広げていった。「ん、ぁ、ぁ、そぉ、まぁ、ぁ、だめっ、もぉ、ぁ、ぁぁ、ぅん、ぁ」小夜自身が限界だと声を上げる。「あぁ、共にな」その言葉に、神城が小夜の腰を引き寄せ、深く抱きしめた。「ぁ、ぁぁ、ん、ぁぁ、ダメっ、ぁ、







