Share

夜風に醒める心
夜風に醒める心
Author: いちご味いも団子

第1話

Author: いちご味いも団子
豪奢な洋館の中、壁に反射する冷たい光が、山城彩花(やましろ あやか)の姿をまだらな影の中に沈めていた。

彼女は「嫁ぐ」と書かれた紙切れを強く握りしめ、指先の関節が白く浮き上がっている。

母の美佐子(みさこ)がそっと彼女の肩に手を置いた。

「彩花、こっちを引いたなら結婚の準備を始めなさい。一週間後には――」

言葉を遮るように、彩花は涙で赤くなった目を上げた。

「私はもう翔真と婚約してるのよ!どうしてくじ引きの結果一つで、佐伯家に嫁がなきゃならないの?」

母が答えるより先に、父の正一(しょういち)が険しい顔で前に出た。

「山城家と佐伯家の政略結婚は避けられん!お前の妹が見つかったばかりなんだ。あの子を遠くへ嫁がせるわけにはいかないだろう?

それに佐伯の御曹司は気分屋だ。あの子のように世間知らずでは、到底太刀打ちできん。お前が代わりに行くしかないんだ。

忘れたのか?二十年前、お前が妹を見失ったせいで、どれだけ大騒ぎになったと思っている。償う気持ちがあるなら、これがその機会だ!」

ひとつひとつの言葉が、重い鞭のように彩花の胸を打った。

娘であることに変わりはないのに、妹を庇うためなら、彼女を犠牲にするのは構わないというのか。

あの日、まだ六歳の自分に妹を守れるはずもなかった。

もし父が商談にかまけて、二人を遊園地に置き去りにしなければ、あんなことは起きなかったはずなのに――

けれど矛先はいつも彩花へと向けられ、彼女は罪悪感に縛られて生きてきた。

美佐子は追い打ちをかけるように告げる。

「彩花……翔真くんがあなたに冷たくなったこと、気づいているでしょう?それでも縋りつくつもりなの?」

鼻の奥が熱くなり、言葉が詰まる。

妹の美月(みづき)が家に戻ってからというもの、両親は彼女ばかりを気にかけた。

彩花も必死に償おうと、部屋いっぱいになるほどの宝石や服を惜しみなく贈り続けた。

だが美月は「見せつけるためだ」と敵意をむき出しにし、被害者ぶった芝居まで打っては両親の同情をさらっていった。

やがて両親の心は完全に妹の側に傾き、彩花は次第に孤立されていった。

唯一の救いは、幼なじみの藤原翔真(ふじわら しょうま)だけだった。彼だけはずっと自分を信じ、味方でいてくれる――そう思っていた。

けれど、いつからか翔真の口から頻繁に妹のことが出るようになった。

「お前の妹は本当に手がかかるよな。展覧会くらい自分で行けばいいのに。彩花は気が利くし、あの子より何倍も優しいよ」

口では愚痴を言いながらも、彼は喜んで美月のために動き、彩花を何度も置き去りにした。

沈黙を貫く彩花に、正一は苛立ちを募らせる。

広間を落ち着きなく歩き回り、何度もポケットからタバコを取り出してはしまった。彩花がいくら頼んでもやめなかったタバコを、美月のひと言であっさり断ったことを思い出し、胸の奥に苦い痛みが広がる。

やがて父は立ち止まり、冷え切った声で告げた。

「一千億を持たせてやる、それが嫁入り道具だ。ほかに望むものがあるなら言え。これ以上の譲歩はできん」

彩花は顔を上げ、感情の読めない瞳で父を見つめた。

その時、ポケットのスマホが震える。

画面には、美月からのメッセージ。添付されていたのは、指輪をはめた二人の手の写真。見間違えるはずがない――隣の手は翔真のものだった。

大きく息を吸い込み、彩花は涙を飲み込んだ。目に浮かんだのは、澄んだ氷のような決意。

「わかったわ、佐伯家に嫁ぐ。一千億は明日、私の口座に振り込んで。

……それと、翔真には絶対に知らせないで。嫁ぐのが私だって気づかれたくないの」

厳格な父の顔に、初めてほっとした笑みが浮かんだ。

「当然だ」
Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 夜風に醒める心   第27話

    翔真が再び目を覚ましたとき、病室に彩花の姿はなかった。彼の苦笑が漏れる。「やっぱり……嫌われてるんだな」だが次の瞬間、弁当を手に彩花が入ってきて、ベッドの上の彼を見て目を丸くした。「もう起きたの?ちょうどご飯を持ってきたところよ」「てっきり、もう帰ったのかと……」彩花は小さく笑って首を振る。「だって私のせいで怪我したんでしょ。あなたが目を覚ますまでは帰れないわ」そう言ってから表情を引き締める。「でも勘違いしないで。感謝なんてしない。こんな厄介ごとを招いたのも、結局はあなた自身なんだから」翔真は視線を落とし、苦々しく唇を噛んだ。確かにその通りだ。しばし沈黙のあと、掠れる声で問う。「彩花……俺たち、本当にもう戻れないのか?どれだけ謝っても、やり直すことはできないのか?」彩花は静かにうなずく。「翔真、私たちはもう終わったの。あなたも、そろそろ新しい人生を始めるべきよ」翔真は苦笑した。彩花を失った時点で、翔真の人生はもう終わっている。新しい何かを始められる気などしなかった。「それでも信じられないよ。彩花が佐伯を……赤の他人を簡単に好きになるなんて……」その名を聞いた瞬間、彩花の表情に初めて心からの笑みが浮かんだ。「恭介は『他人』なんかじゃない。彼はね、小さい頃からずっと私のことが好きだったの。六歳のとき、遊園地で美月とはぐれて、ベンチに座って泣いていた私のそばに、最後までいてくれたのが彼だった。そのとき住所だけを交換したけど、お互いに本名は知らなかったの。けれど彼はそれから毎月手紙をくれて……ずっと陰から私を見守ってくれていた。両親は美月ばかり可愛がって、いいものは全部彼女に回していたでしょう?でもね、不思議なことに美月が欲しがった物は、必ず誰かが高値で競り落とした。……あれは全部、恭介だったの。もし私が翔真に失望していなかったら、きっと気づけなかった。そう思うと、ある意味では翔真のおかげなのかもしれない。あなたがいたから、私は本当の幸せを見つけられたの」翔真の目から、とうとう涙が零れ落ちた。自分の愚かさこそが、彼女を永遠に遠ざけてしまったのだ。「……そろそろ行くわね。医者の話では、あなたは全身複雑骨折で、二か月は安静が必要だって。その間は、ご飯を持ってきてあげる」「もういい……

  • 夜風に醒める心   第26話

    彩花が背を向けて歩き出そうとした瞬間、翔真がまたしても立ちふさがった。「待ってくれ、彩花。俺が美月に優しすぎたことを怒ってるんだろ?妹なのに親しくしすぎたのは確かに俺が悪かった。どうか……もう一度だけ許してくれ。二度と同じことはしないって約束するから」返事のない彩花に、翔真は声を落とし、必死に縋る。「彩花……頼む、許してくれないか?」「……嫌よ」短く放たれた拒絶。その鋭い一言が胸に突き刺さるよりも早く、背後から美月の声が響いた。「やっぱり……翔真くん、お姉ちゃんに会いに来てたのね!昨日の言葉、全部嘘だったの?」振り返った翔真の眼差しは鋭くて冷たかった。「お前……俺をつけてきたのか!」美月は翔真の言葉を無視し、畳みかけるように叫んだ。「昨日は『お姉ちゃんのことは忘れて、私とやり直す』って言ったじゃない!海外旅行に行こうって約束までしたのに!どうしてまたお姉ちゃんに会いに来たの?翔真くんはいつもそう。お姉ちゃんと付き合ってるときに私と親しくして、今度は私と付き合ってるのに、お姉ちゃんを忘れられないなんて!」怒りはついに彩花へと向けられる。「お姉ちゃん、法律上翔真くんと結婚しているのは私よ。あなたに入り込む余地なんてないんだから、もう彼に近づかないで!」翔真が慌てて前に出る。「違う!彩花、俺たちはもう離婚協議書にサインをした。今の俺は自由なんだ」「離婚協議書?そんなのいつ――」美月が反射的に言いかけ、すぐに顔色を変えた。「昨日の書類……保険じゃなくて、離婚協議書だったってこと?」彩花はうんざりしたように二人を見据えた。「あなたたちが離婚していようと私には関係ないし、くだらない喧嘩も聞きたくない。いい加減に出て行って。じゃないと警察を呼ぶわ」「彩花……」必死に縋る翔真の姿は、むしろ美月の心を深く抉った。なぜ彼は自分ではなく、いつも彩花ばかりを見ているのか――その答えが彼女には見つからない。彩花が黙り込むと、翔真は観念したように肩を落とした。「……わかった。もう行くよ、怒らないでくれ。また改めて話そう、な?」疲弊しきった顔で、翔真は掠れた声を絞り出す。その目の縁は赤く、今にも崩れ落ちそうに弱々しかった。「彩花……頼む、何か言ってくれ」彩花が口を開くより早く、美月が懐から果物ナイ

  • 夜風に醒める心   第25話

    「これは……何?」「お前にこれを見せたくて呼んだんだ。今度、お前を連れて海外旅行に行こうと思ってる。そのために保険の契約が必要でね」美月の顔が一気に輝いた。「本当!?ありがとう、すぐにサインするね!」一枚目に署名したあと、翔真はページをめくって指先をとんとんと叩いた。「ここも。それからこのページも」美月は眉をひそめる。「保険って……こんなにたくさんサインが必要なの?」詳細を確かめようとしたその時、翔真が美月の手を押さえた。「……美月ちゃん。まさか俺を疑ってるのか?」彩花が佐伯家へ嫁いでから、翔真が「美月ちゃん」と呼ぶことはほとんどなくなっていた。普段はぶっきらぼうに名前を呼ぶか、そもそも口にもしない。だからこそ、その一言は不意打ちのように胸に響いた。「そんなわけないわ。私が一番信じてるのは翔真くんよ」彼の口元にわずかな笑みが浮かび、美月は胸を高鳴らせながら最後のページにサインした。翔真はすぐに書類を閉じて脇に置く。「翔真くん……ねえ、今夜はここに泊まっちゃだめ?私、行くところもないし、一人は心細いの」翔真は一瞬も迷わず首を振った。「だめだ」美月の指先がぎゅっと丸まる――また断られた。以前も彼の家に泊めてほしいと願った時、同じように断られたのを思い出す。何かがおかしいと感じながらも、理由はつかめなかった。「でも……」「今日はもう遅い。隣のホテルに部屋を取ってあげる、そこで休んでくれ」あまりに冷たい言葉に、美月は口をつぐんだ。ようやく彼が少しだけ心を開いてくれたと思えたのに、ここで拗れてしまえば、すべてが水の泡になる。未練を残しながらも、美月は出口へ向かった。翔真が引き止める気配を見せることはなく、結局彼女は何も言わずに部屋を出ていった。翌朝。翔真が目を覚ますと、二日酔いの鋭い痛みが頭を突き刺した。だが、横になっている場合ではない。もっと大切なことが、彼を待っていた。彼はスーツケースを開け、奥から一着のスーツを取り出す。かつて彩花にプロポーズしたときに着た、大切な一張羅だった。あのときの記憶を呼び覚ませば、彼女の心も動くはず――そう信じていた。ナビの案内に従って向かった先の庭園で、彩花が花を手入れしている姿を見つける。木漏れ日が彼女の頬を照らし、その光景はあまりに穏やかで

  • 夜風に醒める心   第24話

    翔真がふらつきながらホテルへ戻ったのは深夜だった。部屋に漂う冷え切った空気が、彩花がもうここにいないことを突きつける。ベッドの縁に崩れ落ちるように腰を下ろし、手に残っていた半分の酒瓶を見つめる。「酒ってやつは、苦しみを忘れさせてくれるんだろ……?頼むから裏切るなよ」そうつぶやくと、一気に飲み干した。直後、頭に鋭い痛みが走り、胃の奥が焼けるように熱を帯び、額からは冷や汗が滲む。翔真は震える手でスマホを取り出し、彩花の写真を指先でなぞった。「彩花……会いたい……」その時、ドアベルが鳴り響いた。酔いの靄が一気に吹き飛び、胸が高鳴る。「……彩花だ。きっと彩花が来てくれたんだ。そうだ、あの子は昔から頭が良かった。俺の居場所を教えなくても、必ず見つけてくれる……」だが、次の瞬間、胸の奥に嫌な予感がよぎり、眉間が自然と寄った。扉を開けると――そこに立っていたのは美月だった。翔真の表情にうっすらと不快の色が浮かぶ。「……どうしてここに?」「明日会おうって言ったじゃない。急に何かあったのかと思って、心配で来たのよ」美月は翔真の顔を見て、眉をひそめた。「ひどい酒臭さ……どれだけ飲んだの?」翔真は黙って彼女の顔を見つめた。かつては甘く見えていたその笑顔も、今の彼にはもう何の輝きもない。この顔を見るたびに、彼女が何度も彩花を傷つけたことが脳裏に浮かぶだけだ。彩花のほうがずっと優秀で優しいのに、どうして自分が美月を選んでしまったのだろう。そう考え込んでいると、美月が心配そうに手を振る。「翔真くん、大丈夫?具合でも悪いの?」翔真は何も言わず、無言で部屋に入れるように身を引いた。中に入った美月は、床に転がる空のウォッカ瓶に気づき、目を見開いた。「翔真くん、正気なの!?女一人のために、ここまでしなくてもいいでしょ!私、お姉ちゃんよりそんなに劣ってるの!?」翔真は言い返そうとしたが、それよりずっと大事な用を思い出し、美月に微笑みかけた。その笑顔を見た瞬間、美月の胸が高鳴った。――翔真が自分に笑ったのは、いつ以来だろう。彼女は思わず翔真の胸に飛び込む。「翔真くん……お姉ちゃんはもう佐伯家に嫁いだのよ。彼女のことを忘れて、私と一緒にやり直そう?これから子どもを産んで、普通の家庭を築こうよ。ね、そう

  • 夜風に醒める心   第23話

    周囲はいつの間にか静けさを取り戻し、残されたのは美月と翔真、二人きりだった。翔真はふらつきながらも立ち上がり、遠くへと歩き出す。美月が慌てて彼の手を掴んだ。「翔真くん、どこに行くの?」翔真は乱暴に振り払っても、彼女は必死にすがりつく。「私も一緒に行くわ!」「邪魔だ!」次の瞬間、美月は強い力で突き飛ばされ、砂浜に倒れ込んだ。尖った小石が手のひらを裂き、赤い血がにじむ。それでも翔真は振り返ることなく、ただ遠ざかっていった。残された美月は、痛みに耐えきれずその場で泣き崩れた。やがて翔真は街のバーにたどり着いた。強い酒を注文し、運ばれてきたグラスを一気に喉へ流し込む。カウンターの向こうから、バーテンダーが心配そうに声をかけた。「お客様、そんなに強いお酒ばかり飲んでいると体に悪いですよ。もう少し軽いものに変えましょうか?」翔真は首を横に振る。グラスを重ねるたび、頬は赤く染まり、目の焦点も定まらなくなっていた。「いい……もっと持ってきてくれ」飲めば飲むほど、彩花の姿がはっきりと浮かんでくる。共に過ごした日々が鮮やかに蘇る一方で、もう手の届かない現実が胸をえぐった。やがて彼は耐えきれず、声をあげて泣き崩れる。「彩花……俺が間違ってた。身勝手だった。あの時、ちゃんと一線を守るべきだったのに……俺が……俺がお前を失ったんだ……」しゃがれた声で泣き続けても、どれだけ酒をあおっても、彩花の記憶は消えてくれない。アルコールのせいか、それとも苦しさのせいか、胸の奥が焼けるように痛み、全身から力が抜け落ちていく。その時、不意にスマホが震えた。翔真は飛びつくように画面を覗き込み、一瞬、目が希望に輝く――彩花からかもしれない。だが表示された名前を見た瞬間、その光はあっという間に消え去った。「……もしもし、母さん」「翔真?彩花に何度電話しても繋がらないの。あなたと一緒にいるの?今日お父さんがオークションでね、大きなブルーダイヤを落札したのよ。世界にひとつだけの宝石だって。彩花が気に入るかどうか、見せてあげたいわ。もし気に入らなくても、他のを探してあげるから心配しないで。もうすぐ結婚なんだから、お祝いとして何か用意してあげないとね。あなたってほんと幸せ者よ、彩花みたいに賢くてきれいで、私たちにも優しい子

  • 夜風に醒める心   第22話

    「佐伯、お前のやり方は卑怯だ!俺と彩花は幼なじみだぞ。こんな時に横から割り込むなんて、どういうつもりだ!」翔真の言葉を最後まで言わせず、彩花が恭介の前に立ちはだかった。その声は、これまで見せたことのないほど鋭い。「私はもう恭介の妻よ。あなたとはとっくに終わった。だから二度と近づかないで」翔真は、彩花が他の男のためにここまで強い言葉を吐くのを初めて目にした。胸がざわつき、気づけば涙があふれていた。「彩花……本当に俺を捨てるのか?二十年も一緒に育ってきたのに、どうしてそんな残酷なことが言えるんだ?絶対嘘だよな?まだ俺のことを想ってるはずだろ?今はただ怒ってるだけで……落ち着いたら、また話せるよな?それでもだめなら……どうすれば許してくれる?なんだってするよ!」縋りつくように必死で言葉を並べる姿は、捨てられた子どものように痛々しかった。だが彩花は一歩も退かず、まっすぐに翔真を見据える。「翔真、私はもうあなたを愛していない。それに……どうして妻のいる男を受け入れられると思うの?」言葉を浴びた翔真は、一瞬反論しかけて、はっと思い出す。「そうか……美月ちゃんと入籍したことか。あれには意味なんてない。ただ、彼女の願いを聞いてやっただけだ。今すぐ離婚する!だから待ってくれ、彩花。必ず戻るから!」そう言い放ち、翔真は美月の手を強引に引く。「行くぞ、今すぐ役所へ!」だが美月は必死に手を振りほどいた。「行かない!お姉ちゃんの言った通り、私はもうあなたの妻なの。自分の立場を弁えて!」「じゃあどうすれば離婚してくれるんだ!最初は夢を叶えるだけ、気が済んだら別れるって言ったじゃないか!どうして約束を破る!」口論の最中、翔真ははっと悟った――入籍は美月の策略だった。弱々しいふりをして近づき、自分に婚姻届を書かせたのだ。美月は冷ややかに笑った。「ふん。翔真くんだって、お姉ちゃんに『一生守る、永遠に愛する』って約束したことがあるでしょ?でもそんなの、口にした瞬間しか効力がないのよ。あなたがその約束を破ったのなら、私だって同じことをしてもいいはずでしょ?」美月に言い返され、翔真は苛立ちを抑えきれず、深く息を吐いた。彩花に言い訳しようと振り向くと、すでに彼女は恭介と車に乗り込んでいた。「彩花!」慌てて

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status