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第 263 話

Author: 江上開花
周囲は人々のざわめきで賑わっていた。

しかし、この瞬間、亜夕美の世界には、目の前の静樹しかいなかったかのようだ。

亜夕美は自分の心臓が激しく脈打つ音を聞いた。ドクン、ドクンと、男の言葉一つで、ようやく整頓したばかりの彼女の心はかき乱された。

「86番、86番の方はいらっしゃいますか?」

その時、店員が番号を呼ぶ声が聞こえ、亜夕美は我に返った。

慌てて手を挙げた。「ここにいます、行きます!」

そう言って、彼女は身をかがめて静樹が立ち上がるのを手伝おうとしたが、静樹は直接彼女の手を握り、その力を借りて立ち上がった。立ち上がると、彼は自制するように手を放した。

亜夕美は彼のそばにぴったりと寄り添い、
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