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2.愛のために

ผู้เขียน: 神木セイユ
last update วันที่เผยแพร่: 2026-09-14 07:29:26

 透の車が走り去って行くのを手を振り見送った蓮花は、父親の墓の見えるベンチに座り、ぼんやりと菊の花を眺めた。

 嫌でも考えてしまう養父の事 。

 滝川  丈太郎は数多くの医学本出版で脚光を浴びた学者である。大学で教鞭を取り始めた頃、妻に先立たれ、子のいない滝川は養子として蓮花を引き取った。

 その養父が進行癌で要治療になった時、蓮花は既に透の起業資金を出資したばかりだった。

 ──もし、資金提供をしていなかったら ? ──滝川 丈太郎《父》は助かった….… ? 

 そんなifの世界線の話を考えてしまう。今でも透に資金提供したのは良かったのか ? だが、あの時期でなければ透が軌道に乗れなかった。

 勿論、こんな悩みは透にも相談できない。ただこの命日になる度に、蓮花の心の奥底でモヤモヤとした気持ちが生まれる。

 今更どうしようもないというのに。

「── ! ──〜〜〜 !! 」

 誰かが遠くで騒いでいる。

 霊園のそばには遊具のある大きな公園も隣接している。

 一際甲高い叫び声に、蓮花はフフッと笑った。

「お墓参りに来た子供かな ? そうだよね、子供は飽きちゃうもんね」

 prrrrr.prrrrrrrr♪

 蓮花のバッグから聞こえる着信音。

 そのメッセージは久々に思える雨宮博士からだった。

『レン、いま暇 ? 』

『はい ! お元気でしたか ? 』

 返信を返すとすぐに既読が付いた。

『比較的テンションは高いかな。

 鈴峯研究所は無事 ? 見て欲しい動画があるんだけどいい ? 』

「……無事 ? 一体なんの話…… ? 」

『何かあったんですか ? 鈴峯は今も稼働中のはずです。夫が今出勤しました』

 雨宮博士の送ってきたメッセージに違和感を感じる。どうして鈴峯研究所の無事を気にかけるのか。

「……」

 透の言ったASTERの変化。

 蓮花も報告せずにはいられない気持ちだった。まずは確認のメッセージを打ち込む。

『三年前の例の件でしょうか ? 』

 本来、こんなやり取りは許されないことだ。だが、雨宮博士もかなりの熟練だ。悪い事にはならないと蓮花は信じている。

 メッセージ着信音はすぐに鳴った。

『会って話せる ? 近くまで行く』

「……雨宮博士が…… ? 」

 彼女は殆ど外出を好まない。宅配やオークション好きで、旭飛研究所に泊まり込みの生粋の探究心優先人間だ。何度も労働時間オーバーで怒られているが本人は気にもしていない。

『ショッピングロード沿いのカフェはどうですか ? 結婚記念日の用意があるんです』

『OK ! 』

「ふぅ……」

 慣れ親しんだ現場の空気も懐かしいと思ってしまう。丈太郎の死をきっかけに休職中になったが、透がいることで人生は上向きだ。

 何一つ不自由のない生活ができている。

「みんな、元気かな〜。復職してすぐに赤ちゃんなんて出来たら……。案外重いもの持つし、気を使わせちゃうもんなぁ」

 それでも時々、旭飛研究所の所員達に会いたくなる波が襲って来るのだった。

「それに今更、透さんになんて言えばいいか。嘘をつき続けるのも……」

 □□□□□□

 蓮花は雨宮博士を待つ間、老舗の判子屋で高級万年筆が売られているのを目にして悩んでいた。

 持ち手が象牙で出来たシックで一点物の美麗な万年筆。

「……これなら人前で使っても……。でも高いかなぁ……いや、もうそういう物を持つのが相応しい立場だし……」

 透も最早、誰に紹介しても恥ずかしくない男になった。

 付き合いたて当時、安定した環境、収入で研究に打ち込んでいた蓮花からみて、透は社会人になりたてのまま彷徨っているようにみえた。

 とにかく起業に研究所を選ぶのは茨の道で、まず必要なのは金、金、金。疲弊しきった頃、最終試験のように襲ってくるのが人脈の有無。

 透は一代でそれを築き上げた成功者である。

「うん。これにしよ ! 」

 結婚記念日のプレゼントとして、蓮花はこの万年筆を選んだ。

 結婚当初はマンションも無理をして買った。

 今はその分を取り戻す期間。

 あまりに無理をしたせいか、養父の治療にかかった費用の半分も蓮花は未だ貯蓄出来ていない。

 透も勿論そうだろう。

 メディア露出は多いものの、知名度が上がっても収入源の研究所はなににしても、解析から開発までそう短期間とはいかない。更に謎の生命体 ASTERのせいで、最重要機密情報を有する研究所となってしまった。

 研究がどうなっているかなど、今日初めて透の口が滑らせた情報だ。

 あの未知の──後にASTERと名付けられた──謎の生命体の搬入を境に、鈴峯研究所は要塞に変貌したのだ。

 清潔感のある明るい未来をイメージしたフロント内装から一転、対爆庫のように分厚く重々しい物に取って変わっていった。

「ラッピングはサービスです。何か、袋にお入れしますね」

「ありがとうございます ! 」

 華やかなリボンが見え隠れする小さな紙袋を提げた瞬間、背後を救急車が一台通過していく。ガラスに写る赤色灯の数に、蓮花は思わず振り返って路上を見る。

 遠くから、もう一台の救急車が右折していくのが見え、その後続車も緊急車両が何台も列をなし、蓮花の目の前を通っていく。荒々しいサイレンが頭の中までジリジリと揺れるような大きな音を立てていく。

 蓮花はぼんやりと見ていると、店員もまた目を丸くし窓の外を見ていた。

「なんでしょう…… ? 事故とかですかね ? 」

「……びっくりしますよね。大きな事故や災害じゃないといいですけど」

「そうですね。ラッピングありがとうございます」

「いいえ。お気をつけて」

 蓮花は足取り軽く歩道へ出た。

 すぐに角から姿を現した長身に丸眼鏡をかけた雨宮博士を見つけた。

「雨宮博士 ! 」

「レン ! 久しぶり〜 ! 

 あら、綺麗なプレゼント ! 」

「そうです ! 今年は万年筆を選んだんです」

「もう〜。甘い生活してるわねぇ〜わたしにも分けてよね〜」

「あ……そうだ。ドレスも忘れてた……」

「大丈夫。歩きながら話すから。その前に、送った動画、見てくれた ? 」

「すみません、まだ」

 蓮花は歩道の端に寄ると、雨宮博士からのメッセージに添付された動画をタップした。

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