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第2話

作者: ちょうどいい
花々で埋め尽くされた高いステージの上で、昴は情感たっぷりに歌っていた。

私は入口の陰に立ち尽くし、胸が引き裂かれるように痛んでいた。

【余生は君とともに、生きるも死ぬも寄り添って……】

なんて聞き覚えのある歌なのだろう。

その曲は昴が自ら作ったものだった。私にも何度も、何度も歌ってくれた。

最初は、私たちの結婚式で。

最後は、彼が崖から落ちる直前だった。

私は必死で彼の手首を掴んでいた。彼は私を見つめ、かすれた声でこの一節を歌い終えると、自分から私の手をほどいた。

彼が私に残した最後の言葉は、「瑞希、余生は短すぎる。来世でまた君に寄り添うよ」だった。

あれ以来、私はどんな歌も聴けなくなった。

どんな旋律を耳にしても、脳裏によみがえるのは、あの日彼が歌い上げたあの声ばかりだった。

けれど今は幻なんかじゃない。彼は本当にステージの上で歌っている。ほかの女に向かって――自分の新しい妻に。

喉の奥を激しいむず痒さが襲い、私は必死に口を押さえて咳き込んだが、あふれてくる血までは抑えられなかった。

やっとのことで顔を拭い終えたときには、ステージの上ではもう指輪の交換が始まっていた。

「彩花、君が望むものなら、俺は何だって叶えてあげる」

昴がゆっくりと言った。

胸の奥を誰かにぐっと握り締められたようで、理由のわからない焦りが込み上げる。

そして彼は指輪を手に取り、祈るような面持ちで彼女の指にはめた。

「これは、君への誓いを込めたダイヤの指輪だ。どうかこれからの人生を、ずっとそばで一緒に歩んでいけますように」

目の前が不意に真っ暗になり、私はその場に崩れ落ちた。

かつて私だけのものだったすべてが、こうして一つずつ彼に塗り替えられ、彩花の名前に置き換えられていく。

彩花に一文無しで久我家を追い出されてから、私は両親も、友人も……すべてを失った。

私にはもう、昴しかいなかった。

その彼が死んだあと、思希までいなくなった。

もともとこの世で私は何ひとつ持っていなかった。ただ思い出だけを支えに、かろうじて息をつないでいた。

なのに今、その思い出さえも彼の手で打ち砕かれてしまった。

「お姉さん、大丈夫ですか?」

招待客のひとりが私を起こし、水の入ったコップを差し出してくれた。

ぼやけていた視界が少しずつはっきりしてきて、私は礼を言った。

彼女は明るく笑った。

「こういうドラマみたいな理想のカップル見て、興奮しちゃったんですか?私はもうとっくに見慣れてますけどね!」

私が口を開く前に、彼女は目を輝かせながらSNSの画面を見せてきた。

「知らないんですか?真田社長って彩花さんにすっごく甘いんですよ!海の上の日の出を見たことがないって彩花さんが言っただけで、島を丸ごと貸し切って、一緒に日の出を待ったんですから!」

私は画面を見つめたまま、コップを握る指に力を込めた。顔は青ざめていた。

それは昴が墜落して亡くなってから、七日目のことだった。私は彼に少しでもましな墓を用意してやりたくて、あの島の港で荷運びの仕事をして金を貯めようとしていた。なのに警備員に立ち退けと言われ、蹴り飛ばされた。

避けきれず、私は冬の凍てつく海水に落ちた。三日三晩高熱にうなされ、肺がんはさらに悪化した。

「それにこれも!彩花が急にこの町のスイーツを食べたいって言ったら、真田社長、市立病院の20億円規模の契約まで蹴って、専用機で買いに行ったんですよ!」

ガシャンと音を立てて、コップが床に落ち、粉々に砕けた。

私の思希……あのとき、市立病院はあの子を治せると言っていたのに。特殊な治療装置さえ届けばって!

なのに発作を起こしたその日、本来届いているはずの機器は病院になかった。出資者が土壇場で資金を引き揚げたと言われた。

あんなに温かくて、やわらかくて、あんなに聞き分けのいい子だったのに!

あの子はそうして、私の腕の中で冷たく、硬くなっていった……

息を引き取る間際まで、小さな手を懸命に持ち上げて私の涙を拭ってくれた。「ママ、泣かないで」って!

私は刃物でえぐられるように痛む胸を押さえ、ばっと顔を上げて、すでに式を終えたステージの上の二人を見た。

するとちょうど、彩花と視線がぶつかった。

「あら、これって瑞希お姉さまじゃない?」

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