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夫は私を地下の暗室に閉じ込めた後、狂った

夫は私を地下の暗室に閉じ込めた後、狂った

By:  苺春樹Completed
Language: Japanese
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夫の幼なじみが飲酒運転で私の両親を轢き殺した。 通報しようとした私の目を、夫は布で覆い、地下の暗い部屋に連れ込んだ。 それからの3年間、私は日の光を一切見ることなく、数えきれないほどの苦痛と屈辱に耐え続けた。 毎回拷問の後、冷たく刺さるような夫の声が耳元に響いてきた。 「思真、まだ彼女を憎んでいるのか?」 そんなある日、冷たい床に這いつくばり、電話の向こうに向かって必死に懇願した。 「もう憎んでない!本当に憎んでないから!」 電話越しに聞こえてきたのは、夫の朗らかな笑い声だった。 そして迎えに来たその日、私は夫の抱擁をそっと避けた。 無感情のまま離婚を切り出したとき、今度は夫が狂ったようになった。

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Chapter 1

第1話

湿った暗い地下室の片隅で、私は片足を引きずりながら座り込んでいた。

背後の壁は冷たく湿っていて、服をじっとりと濡らしていた。

突然、扉が開き、外から差し込む光に思わず目を覆った。

近づく足音に気づき、反射的に奥へと身を引いた。

「奥様、天城社長が迎えに来るようおっしゃいました」

歩み寄ってくる声の方を見ると、それは天城行章が長年雇っているボディーガードだった。

私は目を伏せ、小さく一言返した。

「わかった」

無理やり体を起こし、片足を引きずりながら数歩歩くと、ボディーガードが驚いた顔をした。

「奥様、足が......」

私はズボンの端をぎゅっと掴み、顔を伏せたまま呟いた。

「前に棚が倒れてきて......たぶん骨が折れてる」

ボディーガードは驚きに目を見開いた。

「どうして天城社長に言わなかったんですか?」

私は苦笑いを浮かべて答えなかった。

何を言えというのだろう?

行章に伝えたところで、私を病院に連れて行くことも、医者を呼ぶこともないだろう。

「支えます」

ボディーガードは複雑な表情を浮かべながら手を差し出し、私を支えながらゆっくり歩き始めた。

地下室を出て少し歩いたところで、車から降りてくる行章と川崎佳乃の姿が目に入った。

「行章、ほらね?私、言ったでしょ?絶対にわざと可哀想なふりをして、あなたの同情を引こうとしてるのよ。見てよ、こんな短い距離なのに、ボディーガードに支えさせてるんだから」

佳乃の言葉に、行章がこちらを振り返った。

何も言わないまま、その目には嘲るような得意げな色が浮かんでいた。

彼は足早にこちらに近づき、目の前で両腕を広げた。

その瞬間、私は強く身をすくませ、とっさにその腕を避けた。

地面にしゃがみ込み、足の激痛も忘れて体を縮めながら、震える声を漏らした。

「もう叩かないで......お願い、叩かないで......ごめんなさい、ごめんなさい......!」

行章の腕は空中で止まり、彼は信じられないといった表情を浮かべていた。

ゆっくりと腕を下ろし、私の前で立ち尽くしたまま動かなかった。

「これは一体どういうことだ?」

彼は隣に立つボディーガードに厳しい声で問い詰めた。

しかしボディーガードも、私の予想外の反応にあまりに驚き、一瞬呆然としていた。行章に聞かれてようやく我に返り、口を開こうとしたその瞬間――

「行章!」

佳乃の鋭い声が響き、行章はそちらに顔を向けた。

その瞬間、ボディーガードの言葉は喉元で詰まり、飲み込まれてしまった。

「天城思真、もしかして行章があなたをここに反省させるために閉じ込めたことを恨んで、こんな芝居をして罪悪感を抱かせようとしているのかしら?

もうやめなさい。そんな見え透いた芝居をするくらいなら、私を濡れ衣で陥れたあの件についても、行章も私ももう何も言わないから」

「あの件」という言葉を、佳乃は特に強調した。

その瞬間、私はぼんやりと震えを止めた。

佳乃は満足げな笑みを浮かべながら続けた。

「ほら、行章。私の言った通りでしょ?」

私はその場で立ち上がることもせず、ただうずくまったままだった。

行章の声が冷たく響いた。

頭上から、彼が淡々と口を開いた。

「思真、三年も経ってまだ反省が足りないというのか」

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