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第2674話

Auteur: かおる
あそこの男たちの多くは、振る舞いが粗野で、体格ばかりがごつくて無骨な野蛮な連中だった。

そんな荒くれ者たちの中で、仁志の存在はまるで泥の中に落ちた宝石のように、ひときわ目を引くものだった。

彼は若いだけでなく、顔立ちもずば抜けて整っていた。今の正常な社会に置いたとしても、少なからぬ女たちがこぞって身を投げ出してくるだろう。ましてや、戦乱が頻発するX国のような場所であれば、言わずもがなである。

仁志はまさに、すべての女たちから血眼になって奪い合われていた。彼と一夜を共にするために、薬を盛ることさえ厭わない者もいたほどだ。

しかし、女たちがどんなに色目を使おうとも、仁志は終始動じることはなかった。

そのため多くの者が、彼は男が好きなのではないかと憶測した。後に八雲が仁志と親しくしており、八雲自身の顔立ちも悪くなかったことから、彼ら二人を恋人同士だとでっち上げて噂にした者さえいた。

何を思ったのか、八雲はまた言った。「お前、あいつに彼氏ができたら、あいつの気が散って、お前への注意が減るのが心配なんじゃないのか?

だったら、いっそのことお前自身があいつの彼氏になっちまえばいい。

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    もし仁志と美咲が過去に二人きりで誕生日を祝ったことがあるのなら、こうしたキャンドルディナーの演出なども、とっくに経験済みのはずだ。そこまで考えると、星の胸は何かでチクリと刺されたかのように痛んだ。そばにいた彩香が彼女の様子がおかしいことに気づき、小声で言った。「星、どうしたの?」星は視線を戻した。「……何でもないわ。あっちの照明が……少し眩しかっただけよ」彩香は音もなくため息をついた。彩香は腕時計の時間を確かめると、こう言った。「もう少ししたら、仁志とあの『高橋美咲』とかいう女が来るだろうから、私は先に船を降りるわね」彼女は星を見た。「星、岸で待ってようか?」星は言った。「いいわ。船長に船を出すよう手配しなきゃならないし、花火も上げなきゃいけないから、おそらくしばらくは戻れないと思う」彩香はそれを聞いて、ますます星のことが不憫になった。彩香は何か言いたげに星を見つめ、何度か口を開きかけたが、結局はまた黙り込んでしまった。「……そう。分かったわ。何か私に手伝えることがあったら、いつでも電話してね」彩香はすぐに立ち去った。それから間もなくして、仁志がやって来た。星は甲板の上に立ち、遠くからこちらへ向かってくる仁志の姿に気がついた。彼女の目には、仁志が着ているあの白いシャツが、自分が彼に買ってあげたものであることがはっきりと映った。しかし、星の予想に反して、仁志は美咲と一緒に来ることはなく、たった一人でやって来たのだ。仁志はクルーズ船に乗り込むと、辺りを見回した。甲板には、暖かな黄色の星型のイルミネーションがたくさん吊るされていた。海面から吹き抜ける風が、潮の香りのする水気と初秋の微かな涼しさを運んできて、それらの明かりを優しく揺らし、まるで宙に浮かぶ星の連なりのようだった。クルーズ船の上は、極めてロマンチックで美しく飾り付けられていた。たとえ仁志がこれまで恋愛をしたことがなかったとしても、そこから漂う濃厚な愛情の気配は、はっきりと感じ取ることができた。星は仁志の前へと歩み寄った。仁志が確かにたった一人で、後ろに誰もついてきていないのを見て、星の心には大きな驚きが走った。彼女は小声で尋ねた。「仁志。一人で来たの?」星の問いかけを聞いて、仁志はここでようやく、星が「友

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    あそこの男たちの多くは、振る舞いが粗野で、体格ばかりがごつくて無骨な野蛮な連中だった。そんな荒くれ者たちの中で、仁志の存在はまるで泥の中に落ちた宝石のように、ひときわ目を引くものだった。彼は若いだけでなく、顔立ちもずば抜けて整っていた。今の正常な社会に置いたとしても、少なからぬ女たちがこぞって身を投げ出してくるだろう。ましてや、戦乱が頻発するX国のような場所であれば、言わずもがなである。仁志はまさに、すべての女たちから血眼になって奪い合われていた。彼と一夜を共にするために、薬を盛ることさえ厭わない者もいたほどだ。しかし、女たちがどんなに色目を使おうとも、仁志は終始動じることはなかった。そのため多くの者が、彼は男が好きなのではないかと憶測した。後に八雲が仁志と親しくしており、八雲自身の顔立ちも悪くなかったことから、彼ら二人を恋人同士だとでっち上げて噂にした者さえいた。何を思ったのか、八雲はまた言った。「お前、あいつに彼氏ができたら、あいつの気が散って、お前への注意が減るのが心配なんじゃないのか?だったら、いっそのことお前自身があいつの彼氏になっちまえばいい。そうすれば、あいつはお前にもっと尽くしてくれるだろうさ。お前も大手を振って、あいつの周りを飛び回るハエどもを追い払えるってもんだ。それに何より……」八雲は声を落とした。「お前らが一線を超えちまえば、あいつはますますお前にベタ惚れになるはずだぜ。それはお前が、あいつにアプローチしてくる連中を何人追い払おうと、デートを何回ぶち壊そうと、遥かに効果的だ。……今日はいい機会だ。あいつもその気があるみたいだし、その気になってやったらどうだ?」仁志は微かに眉をひそめた。八雲はまた言った。「お前ってやつは、頭はキレるくせに、女心ってもんが絶望的に分かってないな。星野さんがお前のためにこれだけのことをしてくれてるんだ、それがどういう意味かまだ分からないのか?相手にいつまで自分から動かせる気だ?こういうことまで女からリードさせなきゃならねえのか?」八雲は彼をちらりと見た。「まさか、あいつに対して少しもその気がないなんて言うなよ」仁志は無言のままだった。八雲はまたしても話題を変え、面白そうに笑った。「だけど……もしかすると今夜、星野さんが自分自身をプレゼントとして

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    仁志は漫然と手の中のワイングラスを揺らしており、どこか上の空のようだった。「何を考えてる」「お前と星野さんのことだよ」八雲は彼を見た。「お前は何度もあいつのデートを邪魔して、あいつのそばにいる男を追い払ってるが、一体どういうつもりなんだ?」仁志は言った。「彼女には、俺の治療をしてもらう必要があるからな」八雲は言った。「お前の治療をしたからって、あいつが彼氏を作るのに何の影響もないだろう」仁志は言った。「彼女に気を散らされたくないんだよ」八雲は鼻で笑った。「そいつは傑作だな。どうにも言い訳にしか聞こえないぜ?」そこまで言うと、八雲は話題を変えた。「数日前、星野さんの親友の中村彩香がクルーズ船を貸し切ったんだが、運良く俺の傘下の会社の船だったんだ。だから、あいつらがクルーズ船を借りて何をしようとしているのか、ちょっと人をやって様子を探らせたんだ。まさか、あいつらが船を借りたのが、誕生日の会場をセッティングするためだったとはな」八雲は彼を見つめ、意味深な笑みを浮かべた。「調べてみたが、あいつらの誕生日は今からまだずっと先だ。身内の親戚や友人たちも、近いうちに誕生日を迎える奴はいない。……最近誕生日を迎えた唯一の人間は、お前だけだ」八雲の声は低く散漫だった。「星野さんは、お前の誕生日祝いをやり直すつもりなんじゃないか?」仁志は否定しなかった。「……おそらくそうだろう」八雲は端正な眉を軽く上げた。「その星野星って女、お前にはずっと随分と良くしてくれてるみたいだな。お前の病気を治してくれたり、旅行に連れて行ってくれたり、今度は誕生日祝いのやり直しか」仁志は伏し目がちになり、指先でグラスの表面を優しくなぞった。バーの薄暗い黄色い明かりが彼の横顔に落ち、完璧で滑らかな顎のラインを縁取っていた。彼の表情には相変わらず波立ちがなく、まるで八雲の言葉などどうでもいいかのようだった。しかし八雲は長年彼を知り尽くしており、仁志がどのような人間であるか、誰よりも分かっていた。この男は根っからの薄情者で、何に対しても執着を持たず、すべてがどうでもいいと考えているのだ。感情や仕事、さらには自分自身の病気に対してさえ、彼はどこか投げやりな態度を持っていた。八雲は自分のグラスを手に取って一口すすり、

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    このような振る舞いは、もはや過剰な親密さをアピールしている。しかし、今は公共の場であり、何より智也が目の前にいるため、星も何かを言い出すわけにはいかなかった。レストランを出た後、いつもは外向的で明るく話し好きな智也が、珍しく押し黙っていた。仁志は彼に向かって、礼儀正しく尋ねた。「橘さんは現在どこにお住まいですか?よろしければ、僕たちが車でお送りしましょうか?」僕たち……『僕たち』というそのたった一言が、智也を完全に蚊帳の外に追いやる。「結構です」智也は無理に笑みを作って言った。「自分一人で帰りますから。ここの夜景はとても綺麗なので、少し散歩してから帰るつもりです。お二人はこの後、用事があるんでしょう?なら早く行ってください。大事な用事を遅らせちゃいけない」智也がそこまで言うのを見て、星は頷いた。「分かったわ。コラボの件で何か疑問があれば、いつでも電話して」智也は頷いた。星は智也に別れの挨拶をすると、仁志の車に乗って去っていった。智也はその場に立ち尽くし、車のテールランプが自分の目の前から完全に消え去るまで、じっと見送っていた。星は助手席のサイドミラー越しに、智也の姿が次第に小さくなり、ついには夜闇に消えていくのを見ていた。なぜだか、彼女はその男の背中に、ひどく哀愁のようなものを感じ取っていた。星はゆっくりと視線を前に戻し、車を運転している仁志の横顔を見た。仁志の表情は淡々として波立ちがなく、先ほどの自分の行動に何ら不適切な点があったとは全く思っていないようだった。星は本来なら仁志に注意するつもりだったが、どう切り出せばいいのか分からなかった。もしかすると、あれは彼にとってただの無意識の気遣いだったのではないだろうか?もし自分が突然そんなことを持ち出せば、かえって自意識過剰で気にしすぎているように見えるのではないか?星は数秒沈黙した後、ふと言った。「来週末は空いてる?」仁志は前を向いたまま尋ねた。「何か用かい?」星は言った。「前に約束したでしょ。あなたの誕生日祝いをやり直すって。もし週末に用事がないなら、その日にしない?」仁志は元々、滅多に誕生日を祝うことがなく、美咲や寧輝たちと知り合った後でさえ、皆で集まって適当に食事をする程度だった。彼にとって、いわゆる誕生

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    彼はゆっくりと歩いてきた。星は智也と話していたが、視界の端に、すらりとした人影がこちらへ向かって歩いてくるのを捉えた。星が顔を上げると、そこには見慣れた人物がいた。星は時間を確認した。まだ二十分ほどしか経っておらず、料理は運ばれてきていない。仁志はまず星に軽く挨拶をすると、すぐにその視線を智也へと向けた。「橘さん。お邪魔ではありませんか?」二人は昨日すでに顔を合わせているため、改めて紹介する必要はなかった。智也は仁志がやって来たのを見て、礼儀として席から立ち上がった。智也は微笑んで言った。「いいえ。人が多い方が賑やかでいいですから」二人は二、三言、当たり障りのない挨拶を交わすと、それぞれ席についた。星は奥の席に座り、仁志はその隣に腰を下ろす。そして智也は、仁志の向かいに座った。なぜか、この席順を見ると、星はどうしても妙な違和感を覚えてならなかった。幸いなことに、仁志も智也もそれぞれ洗練された大人の対応ができるため、空気が冷え込むようなことはなかった。数分後、店員が料理を運んできた。星は仁志を見た。「私の頼んだものがあなたの口に合うか見てみて。まだ食べたいものがあるなら、追加で頼んでもいいわ」仁志は言った。「いいよ。君が頼んでくれたものは全部好きだから」二人の向かいに座る智也は、このやり取りを見て、その瞳を微かに揺らした。彼らはどうやら……親しげな雰囲気のようだ。智也の瞳の奥に、無意識のうちに複雑な感情が浮かび上がった。彼は星に少なからず好意を抱いており、大学時代には彼女に激しくアプローチしたこともあったが、当時の星は学業に専念しており、恋愛をする気が全くなかったため叶わなかった。今、ようやく星と再会できたことで、彼は再び星を振り向かせたいという期待を抱き始めていた。星と彼は趣味も似ており、仕事における共通の話題も多かった。星の自分に対する印象も、決して悪くないことを彼は感じ取っていた。今はまだただの先輩後輩の段階に留まってはいるものの、多くの恋人は友人関係から発展していくものだ。智也も、それほど焦る必要はないと考えていた。しかし今日、星とこの『溝口仁志』という男との接し方を目の当たりにして、智也の中に明確な危機感が自然と沸き起こってきた。昨夜、大学の同級生が星

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    同席している相手への礼儀として、星はまず智也に尋ねたのだった。智也の同意を得た後、星はようやくスマホを取り出し、再び仁志に電話をかけた。発信音を聞いている最中、星はふと思った。たとえ自分が仁志を誘ったとしても、彼が来たがるとは限らないのではないか。もしかすると、彼は見知らぬ人間と一緒に食事をするのが好きではないかもしれない。安請け合いするのが早すぎたのではないだろうか?数回コール音が鳴った後、仁志が電話に出た。「星野さん?」星は小声で尋ねた。「もうこっちに向かってる?」「ああ」星は探るように尋ねた。「どうせ一人で食べるつもりだったんでしょ。だったら……こっちに来て、私たちと一緒にご飯を食べない?」電話の向こうで、しばらく沈黙が流れた。星は彼が嫌がっているのだと思い、それならいいと言おうとした。だがその時、仁志の声がゆっくりと響いた。「分かった」星は言った。「じゃあ、あなたが来るのを待ってから注文するわね」「いや、先に注文してくれ。僕を待たなくていい」と仁志は淡々と言った。星はそれでは少し悪いと思い、こう言った。「やっぱりあなたが来てから注文するわ。少し待つくらい構わないもの」仁志は言った。「あのレストランはいつも料理が出てくるのが遅い。僕が着いてから注文したら、おそらく一時間は待つことになり、中島先生との治療に影響が出る……僕の分も先に適当に頼んでおいてくれ」星も考えてみると、確かにその通りだった。彼女は尋ねた。「何か食べたいものはある?」仁志は答えた。「好き嫌いはないから、君が適当に見繕って頼んでおいてくれ」星は言った。「分かったわ」電話を切った後、星はレストランの店員を呼び、注文の準備をした。智也が怪訝そうに尋ねた。「友達は来ないのかい?」星は答えた。「あと三十分くらいで着くそうよ。このレストランは料理が出てくるのが遅いから、先に注文しておくの。そうすれば料理が運ばれてくる頃に彼も着いて、時間を無駄にせずに済むから」このレストランは、注文してから料理が出てくるまでに三十分は待たなければならず、本当に仁志が到着してから注文したのでは、時間が遅くなりすぎてしまうのだ。智也は星を見た。「……それでいいのかい?相手に失礼にならないかな?」「大丈夫よ」星

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