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第34話

Author: かおる
雅臣はふいに思い出した。

清子の事故現場で星から電話がかかってきていたような気がする。

だがあのときは状況が切迫していて、彼は電話に出る余裕がなく結局そのまま切ってしまったのだった。

そう思い至り、雅臣は星にかけ直した。

「プルルル......プルルル......」

長く呼び出し音が鳴ったが誰も出なかった。

自動的に切断されるまで鳴り続け雅臣の眉間には深いしわが寄っていった。

さらに何度か電話をかけてみたが、やはり応答はなかった。

――昼間、彼が電話を切ったせいで、わざと無視しているのか?

勇が言っていた。「女は甘やかしすぎちゃいけない」

どうやら、彼は今まで星に甘すぎたようだ。

だから何度もこうして無視されるのだ――

病室では、枕元に置かれたスマホが「ブーッ、ブーッ」と鳴っていたが、星はすでに深い眠りに落ちていた。

翌朝、ようやく目を覚ましたとき、画面にいくつかの不在着信が残っているのを見つけた。

彼女は冷めた目でそれを見つめ、口元に皮肉な笑みを浮かべると、

無言のままスマホを元の位置に戻した。

それから約30分後、病室の扉がノックされた。

交通課の警察官が数人、事故の調査のためにやって来た。

星は自分が遭遇した状況を率直に話した。

「私が曲がろうとしたとき、相手が急に減速せずに突っ込んできたんです」

警官たちは彼女の証言を書き留めたあと、こう確認した。

「星野さん、あなたが相手にぶつかったのではなく、相手があなたにぶつかったと、そうおっしゃいますか?」

その質問に星はどこか引っかかる違和感を覚えた。

彼女は尋ねた。

「もしかして......相手は、自分の過失を否定してるんですか?」

交通事故にはどちらに責任があるかを明確にする必要がある。

警官は包み隠さず答えた。

「はい。今回の現場は少し人里離れた場所でして、防犯カメラも設置されておらず、現時点ではどちらに責任があるか判断がつきません。まずは当事者双方の証言を取ってからの判断になります」

星は尋ねた。

「相手も同じ病院に入院してるんですか?」

「はい、ここが事故現場に一番近い病院なので」

警官は一瞬言葉を切ってから続けた。

「相手の車の持ち主は、あなたが先にぶつかってきたと主張しています。現在、目撃者や証拠の収集を進めていますので、何かわかり次第ご連絡いたします」

「お手数をおかけします」

星は丁寧にそう言った
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