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第397話

Author: かおる
かつて、彼は全力を尽くしてその初恋相手を手に入れた。

そのために常軌を逸したことまでやり、すべてを彼女に捧げた。

だが交通事故で突然視力を失ったとき、彼女はあっさり別れを告げ、国外へ去っていった。

失明の衝撃と恋人の裏切りに彼は打ちのめされ、命を絶とうとしたことさえある。

そのそばで支え続け、励まし、看病したのが凛だった。

二人が正式に恋人になったのも、その頃だった。

三年前、彼の視力は治療で戻り、去年には家業の会社を継いだ。

そして今年――初恋相手が帰国した。

凛はこれまでの経緯を一から語った。

同情を買うためではなく、自分がもう後戻りしない覚悟を伝えたかったのだ。

長い年月を無駄にし、これ以上時間を捨てるわけにはいかない。

彼女は履歴書をいくつも送り、面接にも通った。

だがどこへ行っても拒まれた。

やがて、同情した人事担当者から真実を耳打ちされた。

――凛は触れてはならない人の逆鱗に触れたのだと。

その人物が誰か、凛にははっきりわかっていた。

だからJ市にはもういられない。

彼女はS市へ活路を求めてやって来た。

ただし、履歴書の輝かしい経歴はもはや過去のもの。

長く舞台を離れた彼女には、かつての優位性はなかった。

「......わかったわ」

星の声が、凛の思考を遮った。

「星野さん、じゃあ......採用していただけるんですか!」

凛の瞳が一気に輝く。

星は微笑みながら頷いた。

彩香は口を開きかけたが、結局ため息とともに飲み込み、何も言わなかった。

翌週の月曜からの勤務が決まると、凛は心から嬉しそうに顔を輝かせた。

その瞳は久しく失っていた光を取り戻し、きらきらと輝いていた。

凛が去ったあと、彩香はようやく思いを口にした。

「星......凛はJ市の人間なのに、わざわざこっちで職探しをしてた。

あの必死な様子、絶対に向こうで嫌がらせを受けてたんだと思う」

敏腕マネージャーとしての直感は鋭い。

「しかも、さっきの話......元恋人が家業を継いだって言ってたでしょ?

十中八九、そいつが裏で手を回してるわ。

そんな人間を受け入れたら、私たちも狙われるかもしれない......ほんと、どうして世の中はこんなに恩知らずのろくでなしが多いのかしら」

彩香は苦々しく吐き捨てる。

「善人の姿はどれも似たよう
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