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第475話

Author: かおる
清子が雅臣と勇を外へ追い払った時点で、星にはおおよその予感があった。

――どうせまた、清子が陰険な手を使うつもりだと。

そこで星は、そっとスマホの録音機能を作動させておいた。

実のところ、もっと前に清子から電話があった時点で、彼女がまともに済ませるはずがないと分かっていた。

最近、清子は星にことごとくやり込められている。

スタジオを奪い、作曲を強いたとはいえ、その代償に二十億円を失った。

勝ち誇ったように見せかけて、実際は大した勝利ではない。

むしろ星は、その二十億円を手にして小金持ちになり、活動の資金を得た。

冷静に考えれば、もし昔のように高値で買ってくれる買い手が現れたなら、彼女たちだって事務所を手放していたかもしれない。

だが欲しがったのが清子と雅臣だからこそ、星は絶対に渡すわけにはいかなかった。

ここ数度のやり合いの後、清子がさらに仕掛けてくるのは目に見えていた。

だから星もすでに備えていた。

清子の手段は決して高明ではない。

だが彼女は決して自ら汚れ役を買わず、常に他人を使う。

だからこそ、先ほど自ら突き落とすとは星も想定していなかった。

監視カメラが壊されているとはいえ、思いもよらぬ場所に目撃者がいる可能性はある。

一度でも露見すれば、築き上げてきた「善良なお嬢様」という仮面は音を立てて崩れる。

それでも強行に及んだ――それだけ清子は追い詰められ、焦り、冷静さを失っていた。

そして焦れば焦るほど、隙を見せるものだ。

ただ、ひとつだけ誤算があった。

星は手の中のスマホを見下ろし、瞳にかすかな光を宿した。

――水に濡れて、電源が入らなくなっている。

先ほど確かめたが、起動できなかった。

録音は残っているはずだが、その場で清子を突き崩すのは難しい。

とはいえ、修理すれば問題はない。

星は動じなかった。

視線を上げて清子の顔をうかがう。

すでに清子は自ら崩れかけていた。

そこで星は、あえて虚を突いた。

「清子――本当に再生していいの?」

その一言に、清子の瞳が一瞬揺らいだ。

彼女は星が録音する癖を知っている。

実際、以前にも何度か録音されたことがあった。

なぜ忘れていたのだろう――清子は血の気が引くのを感じた。

たった今、自分が口走った言葉。

もし雅臣に聞かれれば、信頼は一瞬で失墜する。

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Comments (1)
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しょう
ことを大きくして、作曲の件から下ろしてくれればいいのに。
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