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第518話

Author: かおる
「――あなた、誰?」

星がふいにそう言った瞬間、輝の表情が一瞬だけ固まった。

まさか、自分のことを知らないのか――そう思いかけたその刹那、星は静かな声で続けた。

「どうして、あなたの言うことを聞かなくちゃいけないの?」

その一言で、彼女が知らないふりをしているのだと気づく。

挑発だ。

輝の口元がわずかに吊り上がる。

冷えた笑みが、その端正な顔に陰を落とした。

「星野。

祖父や凛に気に入られたからって、俺が手を出せないと思うなよ」

――なるほど、誠一が嫌うのも無理はない。

この女は、本当に人を苛立たせる。

星は薄く笑みを浮かべた。

「本当に手を出せるなら、わざわざそんなこと言わないでしょう?

どうして葛西先生や凛の前で私の正体を暴かないの?

――できないんじゃなくて、やらないだけでしょ?」

言葉は柔らかい。

だがその裏に、鋭い棘が隠れていた。

彼女は昔から、こういう男が一番嫌いだった。

とくに、輝のように恩を仇で返すタイプの男。

雅臣のような男は、たしかにろくでなしだ。

だが彼は、少なくとも自分がろくでなしであることを隠さなかった。

輝は違う。
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