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第9話

Penulis: かおる
星が振り返ると、傲慢そうな若い男が数人の仲間とこちらに向かって歩いてきた。

星はすぐに男の正体に気が付いた。

山田勇(やまだ いさむ)。雅臣の友人であり、清子を心から慕う一人でもあった。

星が雅臣と付き合い始めた日から、勇は事あるごとに彼女を見下し、冷ややかな嘲笑を浴びせ続けた。

清子が戻ってきてからは、なおさら調子に乗り、清子と雅臣の間の使い走り役を買って出ていた。

清子が少しでも体調を崩すと、勇はすぐに雅臣に電話をかけ、彼を呼び出した。

彼は何度も星に、清子に妻の座を譲るよう迫った。

勇は星の前に立ち、嘲るような視線を向けた。

「専業主婦、家で大人しく夫の心を掴む方法でも勉強してればいいものを、こんなところで何をしているんだ?人前に出て飲み歩くなんて、専業主婦のすることじゃないだろう」

星は、教養と知性を備わりながらも、同時に家事も完璧にこなしていた。

非の打ち所がないほどだった。

それを知った勇は、星を「専業主婦」と呼ぶようになった。

それからというもの、雅臣の周りの友人たちは皆、星に会うたび、星の事を「専業主婦」と呼ぶようになった。

勇の態度と口調は非常に人に不快をもたらすもので、彩香は眉をひそめた。

星の表情も険しくなった。

その様子を見た勇は反省するどころか、むしろ口笛を吹いて、わざと大げさに星を見つめて面白がっていた。

「おやおや、また怒ってるのか?専業主婦、まさかこんな冗談も通じないのか?」

勇の仲間たちも、囃し立てた。

「そうだそうだ、雅臣の妻であるくせに、度量が狭すぎるんじゃないか?雅臣に恥をかかせるなよ!」

「勇が言ってることも間違ってはないだろ?お前は家で夫と子供に仕えるだけの専業主婦なんだろ?」

「当たり前だろ、専業主婦ごときが清子と張り合うなよ。清子はA音楽大学を卒業してるんだぞ!」

「A音楽大学を知らないのか?世界トップ5に入る音楽大学なんだぞ!」

それを聞いて、彩香は星を見た。

「清子もA音楽大学出身?聞いたことないんだけど……」

勇は彩香を一瞥し、鼻で笑った。

「世間知らずだな。お前の知らないことなんて、山ほどあるんだよ。いい子ちゃんなんだから、もっと外に出て、世の中の事を勉強したらどうだ?」

初めてあったばっかりなのに、またしても初対面の相手にニックネームをつけた。

彩香は眉をひそめた。「星、この人誰?むかつくんだけど。こっちからはまだ何も言ってないのに、勝手に偉そうに説教してきて」

星は静かに言った。「清子の腰巾着の一人よ。ゴマすりとでも思えばいいわ」

「なるほど、清子のゴマすりか!」彩香は納得したように頷き、怒りが収まった。「道理でむかつくわけだ。納得」

勇の顔色が変わった。彼が何かを言おうとしたその時、星が微笑んだ。

「ゴマすりさん、冗談よ、怒ってないわよね?」

勇たちが星を嘲笑っていたのをさっきからすべて見ていて、彩香はとっくに怒りが収まらなかった。

星の言葉に、彩香はすぐに乗った。

「まさか、男のくせにこの程度の冗談も通じないなんてさすがにダサすぎじゃない?男の恥だわ」

星は素直に言った。「いいのよ、彼は世間知らずだから。相手にしない方がいいわ」

男たちは互いの顔を見合わせた。どんなに鈍くても、二人が先ほど自分たちが言ったことをそのまま返してきていることに気づいた。

彩香は面白そうに笑った。「ゴマすりは、最後までゴマすって、何も手に入らないのよ。まあ、かわいそうだから、今回は許してあげよう。星、行こう。楽しいところへ連れて行ってあげる」

星は頷き、踵を返した。

勇は、星の去っていく背中を睨みつけ、ひどく不機嫌な顔をしていた。

勇の仲間たちは、互いに目を見交わした

仲間の一人が、気まずそうに言った。「あの女二人、よくあんなことが言えるよな。勇をゴマすり呼ばわりするなんて。勇はゴマすりなんかじゃ……」

彼はとっさに言葉をそこで止めた。

まあ、確かに……

あの女たちの言葉は酷かったが、的を射ている部分もあった。

勇は確かに、ゴマすりっぽい……

別の仲間がすぐにフォローした。「勇は清子の騎士様だ!」

他の仲間たちも、「そうだそうだ、騎士様だ!」と口々に言った。

ちょうどその時、優しい声が、気まずい雰囲気を破った。

「勇、個室に入らないで、ここで何をしているの?」

勇が振り返ると、男女二人がゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。

男は背が高く端正な顔立ちで、気品のある雰囲気を漂わせていた。

女は小柄で、愛らしくも、か弱そうな様子だった。

来る二人を見て、勇の目が輝いた。

彼は二人のもとへ駆け寄り、星の悪口を言い始めた。

「雅臣、清子、今、誰を見かけたと思う?なんと、星だ!女一人でこんな場所に来るなんて信じられない。しかも、遊び相手を探しに来たとか言ってたぞ!

きっと暇だから、こんなところで遊んでるんだ。もともとは清子に一食だけ作っていたらしいけど、本来なら三食全部作らせるべきだろ!

雅臣、あんなふしだらな女は、そのままほっとくべきじゃないぞ!」

清子は、勇の言葉を聞いて、眉をひそめた。

「遊び相手?」彼女は雅臣の方を向き、心配そうに言った。「雅臣、もうこんな時間なのに、まさか翔太くんを家に残して、まだ帰ってないの?」

星の名前を聞いて、雅臣は眉をひそめた。

清子は雅臣の顔色を伺い、小さな声で言った。「雅臣、翔太くんは体が弱いのに、一人ぼっちで大丈夫かしら?」

雅臣は唇を固く結び、不機嫌そうな顔をした。

「翔太は今日、本家に帰っている」

彼は翔太を利用して星に罰を与え、彼女に自分の過ちを気づかせようとしていた。

だが、家にも帰ってきていなかったとは。

清子は数秒間、呆然とした後、雅臣の意図を理解した。

「雅臣、星野さんはずっと家であなたの世話をしていたのよ。毎日、一歩も外に出ていない。疲れているのも無理はないわ。きっと……息抜きがしたかっただけよ」

彼女はうつむき、申し訳なさそうに言った。「私が配慮が足りなくて、星野さんにあんなに長い間薬膳を作らせて、疲れてしまったのも当然だわ。もう作りたくないっていうのも、無理ないわ……」

清子が言葉を言い終わらないうちに、勇が怒鳴り込んだ。

「何?星が薬膳を作ってくれないだと!?彼女がお前を池に突き落とさなければ、お前の病気も悪化しなかったんだぞ!

本当に放ったらかしにするつもりなのか?よくそんなことができるな?!」

清子は怒り狂う勇を慌てて止めた。「勇、星野さんのせいじゃないって言ったでしょ。私の不注意で……落としてしまっただけ……」

「清子、お前はいつも優しすぎるんだ。あんな酷い女にこんな目に遭わされても、まだ彼女をかばうのか?」

勇は不満そうに雅臣を見た。「雅臣、お前は星が清子をいじめていても、放っておくつもりのか?」
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