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第2話

Penulis: 畑ねこ
仏間に面した庭先。覚悟はしていたものの、砂利の上に膝をついた瞬間、南嶋の口から思わず苦痛の声がこぼれた。

鋭く尖った小石がびっしりと敷き詰められ、膝やすねに深く食い込み、骨にまで痛みが響いてくる。無数の針で脚を刺されるような激痛だった。

握りしめた手のひらには爪が食い込み、血がにじんでいる。それでも南嶋は歯を食いしばり、決して姿勢を崩さなかった。もし倒れでもしたら、妊娠8か月の大きなお腹を尖った石に打ちつけてしまうからだ。

しばらくすると、南嶋の額はびっしょりと汗に濡れていた。

荒い息をつきながら顔を上げる。すると、開け放たれた障子の向こう、仏間に、どこからともなく日和が駆け込んできた。泣きじゃくりながら、竹刀で打たれている春翔の背中に覆いかぶさる。

「春翔を叩かないで!叩くなら私を叩いて!」

振り下ろされた竹刀は止まらず、日和の背中を強く打った。

それを見た途端、それまで何度打たれても声ひとつ上げなかった春翔の顔色が一変した。とっさに身を翻し、日和を腕の中にかばう。

「日和!大丈夫か!しっかりしろ!」

南嶋は、焦りに染まった春翔の顔を呆然と見つめた。自分が切りつけられたときでさえ、彼はあんな目をしなかった。

「南嶋様。定められた時間が過ぎました。本当に大道寺家を出られるのですね」

南嶋は春翔たちから目を離し、壁に手をついてよろよろと立ち上がった。

「はい。決めました」

掟を取り仕切る一族の長老は、小さくため息をついてうなずいた。

「掟に定められた試練は、これで終わりです。7日後、あなたが大道寺家を離れることを一族に伝えましょう」

南嶋はうなずき返し、壁伝いに外へ向かった。そして春翔と鉢合わせた。

春翔は気を失った日和を抱え、急いで屋敷を出るところだった。南嶋に気づいて、足を止める。

「ちょうどよかった。日和への罰がまだ終わっていないんだ。俺は先にこいつを病院へ連れていく。残りの罰は、お前が代わりに受けてくれ」

南嶋は血の気の失せた顔を上げた。耳を疑った。

「……今、なんて?」

春翔は眉をひそめた。嫌がっていると思ったのだろう。

「お前もこの家に来て長い。義理の姉なら、妹の責任を負うのは当然だろう。それくらいわかるはずだ」

南嶋は冷たく笑った。

「ふん。兄として立派な春翔が、もう身代わりになってあげたんでしょう。今さら私が出る幕なんてあるの?」

日和を病院へ連れていくことで頭がいっぱいの春翔は、その皮肉に気づかなかった。

「俺が受けたのは、こいつが病院でしでかした過ちに対する罰だ」

日和のことを口にした途端、春翔の表情がふっと和らいだ。指の腹で、日和のこめかみをそっと撫でる。

「留学先から勝手に帰ってきた件は、きちんとけじめをつけておかないと親族がうるさい。こいつの評判に関わるんだ」

南嶋の胸に、苦く、どうしようもない無力感が込み上げた。

病院で傷を負ったのは自分だ。お腹の子を失いかけたのも、自分だ。

それなのに春翔の頭にあるのは、勝手に帰ってきた日和が陰口を叩かれないかどうか、それだけだった。

何か言おうと口を開きかけたが、春翔はもう歩き出していた。

少し進んだところで、何か思い出したように振り返り、仕置き役の使用人たちに言いつける。

「妻は膝が悪いんだ。柔らかい座布団に替えてやってくれ」

麻痺したようになっていた南嶋の指先が、かすかに震えた。

結婚してからの3年間、春翔は妻を大切にする夫を完璧に演じてきた。行き届いていて、非の打ちどころもなかった。

そして南嶋も、その気遣いに触れるうちに、いつしかそれを愛情だと思い込むようになっていた。

けれど今、誰よりも節度を重んじてきたあの人が、なりふり構わず別の女をかばう姿を見て、もう自分をごまかすことはできなかった。

「いいわ。その代わり、ひとつ条件がある」

春翔は怪訝そうに振り返った。

「本来お前がやるべきことだろう。条件なんて必要か?」

そう言いながらも、春翔は不満を押し殺し、夫としての体裁だけは保とうとした。

「……まあいい。好きに言え。金が欲しいなら、執事から小切手を受け取れ」

それだけ言い残して、春翔は大股で去っていった。

「子どもは私が引き取りたい」という一言は、南嶋の喉に引っかかったまま、言葉にならなかった。

最初から最後まで、春翔は大きく膨らんだ彼女のお腹に、一度たりとも目を向けなかったのだから。

ふと、妊娠を告げた夜のことを思い出す。

春翔は喜ぶどころか、驚いた様子さえ見せなかった。長い間黙り込んだあと、背を向けて家を出ていった。

翌朝、南嶋は書斎で彼を見つけた。足元には、吸い殻が散らばっていた。

南嶋は悲しみをこらえて口を開いた。

「春翔……もしこの子を望まないなら、私たち、この子を諦めても……」

長い沈黙のあと、彼はため息をついた。

「……もういい。このままでいい」

「本当に!?」

南嶋は思わず顔を輝かせた。

春翔はうなずいて歩み寄り、一瞬ためらってから、彼女のお腹にそっと手を当てた。

「ああ。産めばいい。一応……大道寺の血を引く子だからな」

あのときの南嶋は嬉しさで胸がいっぱいで、春翔の目の奥に沈んだ暗い影には、まるで気づかなかった。

今さら春翔から約束を取りつけたところで、もう意味はない。

たとえ自分が子どもを連れて出ていったとしても、春翔はきっと、ほっとするだけだろう。

南嶋は自嘲するように笑い、柔らかな座布団の上に、ゆっくりと膝をついた。

「始めてください」

竹刀が空を切る。

けれど、血よりも先に流れ落ちたのは、南嶋の頬を伝う涙だった。

それでいい。春翔がいらないというなら、この子は自分が守る!

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