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第3話

مؤلف: チチ
渉はカルテを置き、彼女の手を握った。

「もうすぐ来るよ。よしなさい。

あいつが帰ったら、さっきの続きをしよう」

私は画面を食い入るように見つめた。

オバサン?

彼らの中では、私はすっかり「オバサン」扱いらしい。

動画の中で、悠はポケットから口紅を取り出した。

まさしくあの「スターダストピンク」だ。

鏡に向かってそれを塗り、振り返って渉の唇にキスをした。

その後、ティッシュで渉の唇の跡を拭き取り、そのままゴミ箱へポイと捨てた。

「先輩の唇、すごく柔らかい」

渉は笑って彼女の頬をつまんだ。

「声が大きい。壁に耳ありだ。

いい子にしていたら、来月の学会に連れて行ってあげるからね」

私は動画を消した。胃の中がひっくり返るような不快感に襲われる。

結局のところ、女性恐怖症なんてものは、私に一途であることを証明するための道具に過ぎなかったのだ。

外で堂々と浮気するための都合のいい隠れ蓑だったというわけだ。

……

私はすぐに問い詰めることはしなかった。

上場企業の財務部長として、私が最も得意とするのは「清算」だ。

それが帳簿であれ、人の心であれ。

瑠衣にお金を振り込み、さらに深く調査するよう頼んだ。

悠の素性と、ここ数年の渉の資金の流れを全て洗い出してほしいと。

離婚するからには、一文無しで追い出し、社会的に抹殺してやる。

午後、私はタピオカミルクティーを二つ提げて、再び「クリアデンタルクリニック」へと足を運んだ。

受付の鈴木が私を見て、愛想よく挨拶してきた。

「奥さん、こんにちは!院長なら第二診察室にいますよ」

私は笑顔で頷き、視線をぐるりと巡らせた。

「新しいスタッフが入ったって聞いたから、皆さんに差し入れを持ってきたの」

鈴木はミルクティーを受け取ると、奥の調剤室を指差した。

「悠くんなら中で薬の準備をしてます。

あいつ運がいいんですよ、入ってすぐ院長に気に入られて、直接指導してもらってるんです」

私はハイヒールを鳴らしながら、調剤室へ向かった。

ドアは少し開いており、中から小さな鼻歌が聞こえてきた。

ドアを押し開けて中に入る。

小柄な後ろ姿が、粉薬をいじっていた。

男性用スクラブを着ているため、服がブカブカに見える。

栗色のショートヘアで、少しウェーブがかかっている。

「安藤さんですね?」

私が声をかけた。

彼女はビクッとして、手に持っていたスプーンをトレーに落とし、カチャリと甲高い音を立てた。

振り返ったのは、色白で整った顔立ち。

ノーメイクだが、目元にはどこか小賢しそうな光が宿っている。

胸元は平らで、おそらくサラシか何かで潰しているのだろう。

「あ、あなたは……?」

彼女は平静を装い、必死に声を低くして男を演じようとした。

私は彼女を上から下まで値踏みするように見つめ、その唇に視線を止めた。

口紅は塗っていないが、不自然なほど赤みがある。

メイクを落としたばかりなのは明らかだった。

「院長の妻の、静香です」

私は手を差し出し、微笑みながら彼女を見た。

「新しいアシスタントが入ったと聞いて、挨拶に来たのです」

悠の目に一瞬の動揺が走ったが、すぐに取り繕った。

彼女は握手に応じようとせず、服で手を拭うだけだった。

「お、奥さん、初めまして……

手が汚れているので、握手は遠慮しておきます」

「構わないですわ、気にしなくていいです」

私は強引に彼女の手を握った。

手のひらはきめ細かく柔らかで、骨格も華奢だ。

これのどこが男の手なのか?

渉の目は節穴なのか、それともクリニックの全員を馬鹿にしているのか?

「安藤さんの手、とても柔らかいですね。

力仕事をする手には見えないですわ」

私は意味ありげに言った。

悠は手を引き抜こうとしたが、私はがっちりと離さなかった。

彼女の顔がみるみる赤くなる。

「奥さん、私……昔から力仕事はしたことがなくて」

「そうですか?」

私は手を離し、バッグから一本の口紅を取り出した。

例の「スターダストピンク」の口紅だ。

「ここに来る途中で買い求めたのですけれど。

色が少しピンク過ぎて、私のようなオバサンには。どうやら不釣り合いなようですね……」

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