LOGIN湯浴みも食事も終えたマリアネラは、与えられた部屋に戻った。城に運び込まれるまで色々大変だったが、久方ぶりのまともな食事や入浴で張り詰めていた心がほどけ、眠くなった。
心配事は多々あるが、マリアネラ自身が元気にならないと、解決の糸口は見えてこない。それに、この部屋には時間つぶしできそうなものはひとつもない。
そろそろ寝ようと、掛け布団を持ち上げる。それと同時に、ノックが聞こえた。
「はい」
「入るぞ」
その声がチェセルのものだと理解する前に、彼は部屋に入ってきた。何故か片手にハープを持って。
「どうなさいましたか?」
「夜にまた来ると言っただろう」
「それは、そうですが……」
マリアネラとしては、疲労が限界に来ているため、はやく眠りたいところだ。だが、自分は今、彼の奴隷だ。言うことは聞かないといけないだろう。
「ふん、まぁよい。お前は確か、ハープが得意だっただろう」
そう言ってチェセルは、持ってきたハープをマリアネラの膝の上に置く。そのハープ自体は新品のものだが、手にしてみると、戦争前の自分は、東屋などでハープを演奏していたことを思い出す。それと同時に、ささやかな趣味のことさえ忘れるほど酷い生活をしていたと実感した。
「どうした?」何も言わず、じっとハープを見つめているマリアネラを、チェセルは怪訝そうに見る。
「戦争が始まってからは、ハープを弾く時間などなかったので、すっかり忘れていました」 「王族でさえ、それほど過酷だったのだな」 「えぇ、そうですね……」思い出すのは血の匂い、怒声、悲鳴、刃物がぶつかり合う音……。そして、質素な食事を摂りながら、地下に隠れていた日々と、地獄のような奴隷市場。この城に来るまで、本当に色んなことがあって、多くの命が犠牲になってきた。
「ここには、お前を脅かす者などおらん。弾いてみろ」チェセルはそう言うが、マリアネラはハープが趣味だと忘れるほど過酷な生活を送ってきた上に、何年も触っていない。以前のようにうまく弾ける自信など、これっぽっちもない。
「どうした、弾いてみろと言っているだろう」なかなか弾こうとしないマリアネラに、チェセルはもう一度声をかける。
「先程も言いましたが、ハープを弾く余裕がなかったので、弾いていたことさえ忘れていました。きっと、人様にお聞かせできるほどではありません」 「構わん、弾け。弾くまでここから出ないぞ」椅子にふんぞり返って座るチェセルに呆れ返り、渋々弾いてみる。最初はぎこちなかったが、体は覚えていたらしく、すぐに美しい音色を奏でられるようになった。
(演奏って、こんなに楽しかったのね)
先程までの強烈な睡魔はどこへやら。短い曲を1曲演奏して終わろうとしていたのに、それなりに長い曲を追加で2曲演奏した。数年ぶりの演奏はマリアネラの笑顔や弾む心を取り戻してくれた。
演奏を終えると、チェセルは拍手を送ってくれた。1人分の拍手が部屋に響くのはどことなく物悲しさがあるが、マリアネラの心を満たしてくれた。
「素晴らしい演奏だった。今夜はもう安め」 マリアネラは声をハープをくれたお礼を言おうとしたが、チェセルは呼び止める前に部屋から出ていってしまった。 「まったく、自由というか、自分勝手というか」 声こそ呆れ返ったような声だが、マリアネラは嬉しそうにハープを見つめた。まだ不安は拭えないが、なんとかなるような気がしている。「ありがとう、チェセル王子……」
そっとハープを撫でながら呟くと、ハープをサイドテーブルに置き、今度こそベッドに潜り込んだ。マリアネラは久しぶりに夢も見ないほど深い眠りに落ちるのだった……。
「勘弁してくれ。うちみたいな小国からじゃ、兵士を出すなんて無理だったんだよ。戦場にも陽の国にも、支援物資を送っただろう」「そうよ、チェセル。ネロ王子を責めてはいけないわ」「ふ、私は何も言っていないがな。まぁよい」「それより、うちからも他国からも、ふたりにプレゼントがあるんだ。部屋に運んであるから、見てきたらどうだ?」 ネロは話題を変えようと、ぎこちない笑みを浮かべながら話した。「プレゼント?」「マリアネラ王女への出産祝いですよ。それと、おふたりほどのおしどり夫婦は滅多にいないので、あやかりたいって人がいるんですよ」「あやかるって……」 王族も貴族も、恋愛結婚ができる者はほとんどいない。特に相手が貴族よりも限られた王族では、奇跡のような話だ。そんなふたりにあやかりたいと思う者が続出しているのは、マリアネラも知っている。お茶会を開けば、チェセルとの出会いや結婚生活について、あれこれ聞かれるのだ。「見に行くか」「え? でも、まだ着いたばかりよ」「ここまで長旅だっただろう。それに、出産のダメージは1、2ヶ月程度では癒えないと聞く」「チェセル……」 気遣いが嬉しくてチェセルを見上げると、視線が絡み合う。「お熱いことで」 ネロに言われて現実に引き戻され、恥ずかしくなる。「部屋はどこだ?」「案内させよう。あぁ、君。ちょうどいいところに。おふたりを部屋に案内してくれないか? 太陽と夜だ、いいね?」「かしこまりました。こちらへどうぞ」 ネロはちょうど通りかかった使用人を捕まえて声を掛ける。 使用人は恭しく一礼し、ふたりを部屋に案内した。 案内された部屋はキングサイズベッドが置かれても空間がある広々とした部屋で、大きなテーブルの上には、置ききれないほどの贈り物があった。「まぁこんなに……」 ベッドの横に自分達の荷物が置かれていたことに気づき、そこから手
5年後、ふたりの間に子供が産まれた。長男のノクス、次男のライル、そして末っ子で唯一の女の子ルーチェ。 4歳のノクスははやくも剣術に興味を持ち、木刀を振り回している。3歳のライルは恥ずかしがりだが、絵本と植物を愛する心優しい少年だ。 まだ赤子のルーチェは、大きな泣き声でマリアネラ達や使用人達を振り回している。 結婚して5年経ち、3人の子宝に恵まれた今もふたりは仲睦まじいおしどり夫婦として知れ渡っている。 今日、ふたりは舞踏会に参加するため、馬車に揺られている。水の国の王から招待状が届いたのだ。子供ができてからはチェセルのみが行くか、断るかだったが、今回はふたりで来ていた。「はぁ……」 外を眺めながら、マリアネラはおもむろにため息をつく。「どうした?」「ノクス、いい子にしてるかしら? この前木刀で花瓶を割ってしまったじゃない? ライルはいい子にしてるでしょうけど、 寂しがりだから心配よ。それに、ルーチェだって……んんっ!?」 キスで口を塞がれ、目を丸くする。唇が離れると、チェセルが呆れ返っていた。「まったく、今は子供達のことは忘れろ」「でも……」「たまには息抜きに舞踏会に行きたいと言ったのは、お前だろう。それに、今日から3日間は、結婚前に戻る約束ではないか」 拗ねるチェセルに、頬が緩む。ふたりは子育てと公務に追われ、ふたりの時間を取れずにいたのだ。今回舞踏会に参加するのは社交ではなく、息抜きのためである。「そうだったわね。メリー達が見てくれてるもの、大丈夫よね」「そうだ。今のお前は母親ではなく、私の恋人だ」 額にキスを落とされる。それはまるで、マリアネラを母親からひとりの乙女に戻す魔法のよう。 舞踏会場に着くと、使用人に名前を告げて荷物を預け、会場に向かった。 マリアネラは紺色の髪をアップにしてサファイアとダイヤのティアラをつけ、紺色のドレスを着こなしている。 チェセルはブロンドの髪をオールバックにし、白に差し色
「それは……、奴隷の私を買ったから……。あの頃は、夜伽の練習もあまり好きじゃなかったし、私の中で葛藤してたのよ」「お前を買ったことで、私が奴隷で遊ぶような男だと勘違いしたのか。 国王……、父はよく奴隷を買い、戦闘スキルを身に着けた使用人にしていたが、 私が買った奴隷は、後にも先にもお前だけだ」「え? もしかして、ここの使用人って……」「父王が奴隷市場から拾ってきたのが大半だ。メリーもな」「嘘……!」 メリーや他の使用人達の顔を思い浮かべる。彼らはいつも朗らかで、暗い顔を見せることなどなかった。「父の行ったことは素晴らしいが、根本的な問題を解決せねば、同じ悲劇が繰り返されるだけだ。 かつてのお前のようにな」「チェセル……」「人身売買など反吐が出る」「そうね……。あの悲劇は繰り返してはいけないわ……」 マリアネラは奴隷市場での惨劇を思い出す。1食分の値段で買われ、乱暴に引っ張られて連れ出された少女達は、今頃どうしているだろうか? 「お前は身を持って経験したから、余計嫌悪するだろう? 私が国王になった暁には、奴隷商売を徹底的に潰すから安心しろ」「チェセル……」 感極まり、思わずチェセルの胸板に飛び込み、顔を埋める。チェセルはそんなマリアネラを優しく抱きしめた。「もう、お前に怖い思いはさせない。お前の居場所は薄汚れた檻ではない。私の腕の中だ。何人《なんぴと》たりとも近づけないと約束しよう」 チェセルはいつものように、マリアネラの額にキスを落とした。「奴隷制度や市場を廃止する前に、まずは陽の国を復興させねばな」「はい……!」 ようやく陽の国の王女として動けると思うと、感涙にむせぶ思いだ。今までは城の地下に隠れ、宵の国に保護されてからもずっと城で暮らし、国民のために何もできなかった。 自分だけがこんなにいい暮らしをしていていいのかと、罪悪感に押しつぶされそうな時もあったが、ようやく彼らのために何かできる。 チェセルの行動ははやかった。陽の国は宵
「軽蔑していたのに、どうやって私を好きに? ただ声をかけてきたから、というだけではないのでしょう?」「声をかけてきただけというがな、私に声をかけてきたのは、本当にお前くらいだった。それだけでも充分だ。だが、もちろんそれだけではない。好意というより、好感を持つ出来事がいくつもあった」「好感? なにか特別なことでもあったかしら?」 チェセルとの思い出を振り返ってみるが、奴隷前の記憶は舞踏会のような社交の場や公務で会い、言葉を交わした程度だ。会話のほとんどが互いの国のことや挨拶で、それ以外はちょっとした雑談をしたくらいで、特別な記憶はない。 マリアネラにとっては、暗殺から守ってくれた時のことは大事な思い出ではあるが、マリアネラはこの城に来るまで、あれがチェセルだとは知らなかったし、チェセルも言おうとしなかった。 つまり、好感を持ってもらえる思い出らしきものがない。「陽の国に視察に行った時、 小さな子供が2、3上の子供にいじめられていた。お前は迷わずに子供を助けていたな」 そう言われ、記憶が蘇る。チェセルが陽の国に来た時、マリアネラが案内をしていた。その時彼の言ったように子供がいじめられていたのを助けたことがあった。「当たり前のことをしただけよ」「それを当たり前だと言い、実行する王族などそうはいない。他国を視察した時に似たような場面に遭遇したが、 見て見ぬふりをするか、鼻で笑うかのどちらかだ」「国民ありきの王族なのに……」 正義感の強いマリアネラからすれば、困った弱者を見捨てるなどありえない。ましてや、国を守る王族とあろう者が、子供ひとり助けようとすらしないなど、あってはならない。「それだけ他国の王族は、自分の国民に無関心なのだ。お前は王女として国民を思い、様々な政策を考案し、 実現させていった。その噂はよく耳にしていた。これらにも好感を持っていたな」「なんだかちょっと照れくさいわ……。決定打はなにかしら?」「先ほど、成人する少し前から声をかけられるようになったと言っただろう? あの女共は、地
翌朝、目が覚めると下腹部に鈍痛を感じる。その痛みが、昨晩の出来事が嘘でも夢でもなかったと教えてくれた。 「もう起きたか。どこかつらいところはないか?」 声を頼りに見上げると、チェセルは軽装を身にまとってアイスティーを飲んでいた。サイドテーブルにはグラスがもうひとつと、ふたり分のサンドイッチ。「大丈夫。少しだるいけど、動けないほどではないわ」「そうか。だが、念の為に今日は安静にしておけ。お前も紅茶を飲むか?」「えぇ、いただこうかしら」 チェセルの手を借りて起き上がり、隣に座ると、グラスを差し出される。受け取ってひと口飲めば冷たい紅茶が食道を通って胃に落ち、眠気を和らいでくれる。「聞きたいことがあるの」「私に答えられるものなら答えよう」「いつから、私のことが好きなの?」 マリアネラの問いに、チェセルは一瞬目を丸くし、懐かしむように目を細める。「お前に好意を抱いた時のことか……。思えば、この恋煩いも長いものだったな」「そんなに長いの?」「12年ほど前だろうか……? 舞踏会でお前と一緒になったのは。私がお前を好きになったのは、その頃だ」「12年前って……。お互い子供だったじゃない」「あぁ、そうだな。だが私は、子供の頃から周囲に疎まれていた」 その言葉を聞いて、マリアネラは母の言葉を思い出した。『宵の国のチェセル王子には、あまり近づいてはいけません。何をされるか分からないんだから』 そう言い聞かせられる度に返事をしながら、何故母がそんなひどいことを言うのか不思議でならなかった。 チェセルの悪評は幼い頃から聞いていた。『勉強など一切せず、剣ばかりを振り回している』だとか、『気に入らない使用人を殺した』だとか、殺伐とした噂があった。 だがマリアネラは恐ろしいと思いながらも、それが真実だとは思えなかったのだ。「その顔からして、私の悪評は聞いていたようだな。国同士が近いのだから、当たり前か」「そうね。母上は、あなたに近づくなとよく言い聞かせてきたわ。けど、父上の教えに反してると思ったの」「ほう? どのような教えだ?」「『人は火のないところに煙は立たないと言い、噂を真実のように話すが、噂は噂。自分の目で確認してから信じなさい』って。怖くなかったわけじゃないけど、やっぱり、知らないのに一方的に怖がったり嫌ったりするのって、違うと思ったか
快楽を貪るように何度もキスを繰り返していると、絶頂が近づいてくるのを感じる。 「お前も、最中の口づけが気に入ったようだな。そのとろけきった目、とてもそそる……」「や、んんっ♡ ああぁっ♡」 「声が高くなって、腰も浮いてきたな。もうイくだろう?」 チェセルも余裕がないのか、悩ましげな顔をしている。 「我慢できそうにない……。少しばかり、手荒になる」「ひううっ!?」 額にキスを落とされると、律動が激しくなり、マリアネラは思わずチェセルの背中に爪を立ててしまう。「……っ!」「あ、ご、ごめんなさ、ああっ♡」 「……っ! くくっ、お前という女は……。謝るな。愛する女の爪痕は、男の勲章だ。好きなだけ爪を立てろ」「あ、あ、あぁっ♡ チェセル……、私、もう……♡」 目の前がチカチカしてきて、絶頂がすぐそこまで迫っていることに気づく。 「くっ、私ももう限界だ……。このまま、共に果てるぞ……!」「ひあああっ♡ あ、あぁ……♡」 最奥に打ち付けられ、子宮が押し上げられ、そのまま射精される。熱い精液が子宮口に叩きつけられ、快楽に震えながら絶頂を迎えた。 「はぁ、はぁ……。こんなに満たされた気持ちになるのは、お前だからなのだろうな。まだまだ愛し足りないが、これ以上お前に負担をかけるわけにもいかない。抜くぞ」「んうぅ……♡」 太い陰茎を抜かれただけでも感じてしまい、軽く仰け反り、甘い声が零れてしまう。 「感度が上がりすぎて、抜いただけで感じるか。可愛い奴め。こっちを向け」 「んんっ……♡」 何度目かすら分からないキスが、快楽の余韻を長引かせる。 「もうお前に、あのような惨めな思いはさせない。お前は私の隣で笑っていろ」 「はい、チェセル」 マリアネラが返事をすると、チェセルは懐かしむように目を細めた。 「初めてこの城に来た日と比べると、素直になったな」 「あの頃は……、あなたのことをよく知らなかったから……。それに、色々と余裕がなかったのよ」「あ
お茶が終わると、安全な場所にいる安心感からか、うとうとしだす。彼女の眠気を軽減させたのは、ノックの音。「はい」「マリアネラ様、お風呂の準備が出来ました。ご案内します」 メリーの声だ。マリアネラは部屋から出て、メリーの案内で浴室に行く。探索時に少し覗いたが、脱衣所は広々としている。「お着替えはそのかごに入っています。今お召になっているものは、そちらの箱に入れてください。では、ごゆっくり」 メリーは一礼して脱衣所から出ていった。マリアネラは着ていた襤褸切れを箱に入れ、浴室に足を踏み入れる。温かな空気に、頬が緩む
ドアが閉まると、マリアネラはサイドテーブルへ駆け寄り、水差しにある水を一気に飲んだ。王女としてはしたない飲み方ではあるが、ひどく喉が渇いていたのだ。 夕の国で出される水は、ゴミや虫が浮いており、飲めたものではない。朝と夜に1回ずつ、風呂の代わりに水をかけられる。その水は井戸水だった。だからマリアネラは、水をかけられる時に口を開け、少しでも水分を取ろうと必死になっていた。 幸い、夕の国は雨が多い。マリアネラが入れられたボロ小屋には、ところどころ穴が空いているため、雨漏りが酷い。その雨漏りがマリアネラの命綱だった。「ふぅ、お水って、こんなに美味しかったのね……」 久しぶりに飲む綺麗な水
「嫌がることをしない、ねぇ……。例えば?」「お前の純潔は奪わずにいよう」「え?」「男は初体験などさっさと済ませたい生き物だが、女は違うだろう? 王族なら尚更だ。王女の純潔は国の宝といっても過言ではない。お前の純潔をいただくのは、陽の国を取り返してからだ。これで文句はあるまい?」「本当に?」 にわかに信じがたい話だ。男が女性に無理やり関係を迫り、結婚したという話はよく聞く。それにマリアネラは奴隷だ。彼女の意思など無視して抱いてもおかしくない。「くどい女だな。だが、慎重な女は嫌いではない。顔合わせも済んだことだし、そろそろ行くとしよう。まだ公務がたまっているのでな。夜になったらまた来
入ってきたのは、高身長でガタイのいい若い男。美しいブロンドの髪に、燃えるような赤い瞳。そして自信に満ち溢れたオーラが、彼が只者ではないと直感させた。 マリアネラはその男に見覚えがある。だが、何日もまともな食事をしておらず、頭が回らないせいか、この男が何者なのか思い出せない。自分が知っているのだから、貴族なのだろう。 男はマリアネラの前まで来ると、目線を合わせようとかがんだ。目力の強さに目をそむけたくなるが、ここで目を逸らせば、自分が弱者だと認めるようなもの。マリアネラは男の目をじっと見つめ返した。「ふっ、いい目をする。舌を噛むなよ」 男はそう言って猿轡を外す。口が自由になり、安堵の







