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143.立場逆転!啓介の緊張

last update Last Updated: 2025-07-30 21:03:32

早速、母に電話をかけると私の報告に弾んだ声が返ってきた。

「もちろんよ!私たちはいつでもいいんだけど、三奈が啓介さんに会いたいって言ってるのよ。今度の連休はどう? みんなで一緒にご飯食べましょう!」

母の声からは、私以上に喜んでいる様子が伝わってきた。妹の三奈も前回のテレビ電話で啓介のことをかっこいいと興奮気味で何度も口にしていたことを思い出す。こうして来月の連休に、実家への訪問が決定した。

週末、二人で連休の計画を立てていると、啓介は一大プロジェクトの準備をするかのように、真剣な顔で私に問いかけてきた。

「どんな服装がいいかな? やっぱりスーツかな? フォーマルすぎると引かれるかな。でも、砕けすぎても失礼だし……。あと、手土産は何がいいかな? お父さんの好みは? お母さんの好きなものは?」

その質問攻めに私は思わず目を丸くしてしまった。普段のクールで冷静な啓介からは想像もつかないほど、緊張しているのが分かる。

「えー、そんなに気にしなくても大丈夫だよ。適当でいいって。うちの親、そんなに堅苦しいタイプじゃないし。」

私は笑いながらそう答えたが、啓介は首を傾げた。

「そんなこと言って。俺の実家に行くときは佳奈もこんな感じだったのに、なんか立場が逆転したみたいだな。」

啓介はわざと少しだけ

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