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167.過去の回想、夏也との初恋
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2025-08-12 19:03:25私たちは、物心ついた時からいつも一緒だった。私の隣にはいつも夏也がいて、夏也の隣で笑うのも、いつだって私だった。
周りも私たちを「セット」だと認識していた。中学に入ると「お前たち付き合っているの？」と、周りから冷やかされることが増えるようになった。そのたびに、お互い顔を赤くして否定していたが、その言葉をきっかけに私たちは自分の気持ちと互いの好意を意識するようになった。
そして、関係に名前がついたのは中学二年生の夏だった。
「俺たち、付き合おうか？」
部活帰りの帰り道、いつものように並んで歩きながら帰っている時に、隣を歩いていた夏也が、少し震えた声でそう告白してきた。夕焼けに染まる二人の影がアスファルトの上に長く伸びていた。
「好き」という言葉はなかった。それでもお互いに好きな気持ちは痛いほど分かっていた。
「うん。」
私は、彼の目を見て短く返事をした。照れくささから、それ以上何も言葉を交わさなかったけれど、その日から私たちは誰もが知る公認カップルとなった。
喧嘩をするとお互い熱くなり一歩も引かないところも、でも、謝る時は素直にまっすぐ言葉にして伝えるところもそっくりだった。そして、仲直りをしたらどこのカップルにも負けないくらい仲睦まじい関係へとすぐに戻った。周りからも「お前たちは絶対結婚するよね」「結婚式には呼んでね」と言われることをよくあり、私たちもその未来を信じて疑わなか
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誰が契約結婚だって？ハイスぺCEOは私しか見ていない 172.怒りの電話、元カレとの対峙
「おー！佳奈か。まさか佳奈から連絡くれるなんて思ってなかったよ。」数日後、私は外出先から帰っている途中で夏也に電話をかけていた。受話器から聞こえてきた相変わらずの陽気な口調でいう言葉を無視して本題に入った。「ねえ、この前から何なの？訪問した日にお土産渡しに来たり、ずっと置きっぱなしになっていたDVD届けたり、啓介との食事だって、私がいない時に啓介に変なこと言って！」私の矢継ぎ早の問いに、夏也は電話の向こうで少し笑ったように聞こえた。「俺はただ素直な気持ちを伝えたまでだよ。佳奈に幸せになって欲しいだけだ。」「何が素直な気持ちよ！『私を悲しませるような可能性がある人だったら、全力で奪い取る』って何よ！啓介がどんな気持ちになるか分かって言ってるの？」「それくらいの覚悟で佳奈と接してくれと頼んだまでだよ。それで、高柳さんはなんて？」なんてことない口調で言う夏也に私の苛立ちはヒートアップしていた。夏也がどこまで本気で言っているか分からなかった。「言わない！でも、夏也が心配しなくても大丈夫だから。それに私は、夏也とはもうありえないから！」「なんだよ、何度もヨリを戻してやり直した仲じゃないかよ。」
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「先生、進路を変更したいんですがまだ間に合いますか？」夏休みが終わってすぐ、休み気分が抜けずにどこかふわふわと浮ついた空気が校舎全体にある中で、私は、職員室に向かい進路変更したい旨を担任に告げた。「おー、まだ大丈夫だぞ。志望校、他のところにするのか？」「はい、海外留学に変更しようと思います。」「あ、海外いいいいー！？」先生は、志望校の希望順位など軽微な変更だと思っていたのだろう。いつもと変わらない穏やかな口調で返してきたが、私の口から出た『海外』という言葉に驚きを隠せない様子だった。それでも、すぐに冷静さを取り戻し、英語の成績や偏差値を確認して対応策を練ってくれた。「海外留学ってもっと前から計画的にやるものなんだけど、どうした急に？」「前から気にはなっていたんです。でも、他に大切な物があって。それがなくなったら、海外に行くことが大切でやりたいことに変わったんです。」学校でも有名なカップルだった私たちは、もちろん先生たちの間でも公認だった。私の言葉に何かを察したようで、それ以上は追及してこなかった。あの時、深く追求せずに私のやりたいことを叶えるために、一緒に道を探してくれた担任には、今でも感謝している。
誰が契約結婚だって？ハイスぺCEOは私しか見ていない 169.夏の終わり 夏也と佳奈の恋
あとになって分かったことは、夏也も彼女も本気ではなく遊びだったということ。互いに付き合っている人がいるけれど、遠距離でなかなか会えない。そんな身体の寂しさを満たすための同意の上での関係だった。「俺が好きなのは佳奈だけ。」夏也は、私の手を握り何度も何度もそう繰り返した。遠距離になってなかなか会えないのは事実だったし、いつも来てもらうことに罪悪感も抱いていたため、夏也の謝罪に心が揺れた。許してしまおうかと思ったその時、夏也が最後に口にした一言で私の心は完全に冷え切った。「佳奈以外の他の女性を知らないのは男として、これから先、少し恥ずかしく思えたんだ。」私は、これからも「はじめて」は夏也でいいと思っていた。そして、今後も夏也しか知らなくてもそれでいいと思っていた。しかし、夏也は、それに疑問や恥ずかしさを感じていたことを知った。「ごめんね。それなら、私の気持ちは変わらない。」その言葉は、私の心を抉るような衝撃だった。私は、これからもすべての「はじめて」は夏也でいいと思っていた。そして、今後も夏也しか知らなくても、それでいいと思っていた。しかし、夏也は、それに疑問や恥ずかしさを感じていたことを知った。私は、夏也の手をそっとほどき、もう二度と戻れない壊れてしまった関係に、静かに別れを告げた。今になると、夏也の気持ちも分からなくもない。だが、あの時の私にとって、それはとてつ
誰が契約結婚だって？ハイスぺCEOは私しか見ていない 168.真夏のサプライズ、そして初めての裏切り
遠距離恋愛が始まってから、私はお年玉やバイト代を貯めて、夏也のところへ遊びに行った。受験もあり頻繁には行けなかったけれど、私が向かうのは二か月に一度。あとは、夏也が交通費を気にせず帰ってきてくれた。私が遠慮がちに交通費のことを言うと「佳奈に会いたくて来たんだから気にするな」と、頭をくしゃくしゃにしてなでる。その優しさが嬉しかった。七月、夏也が住んでいる地域で有名な花火大会があった。私は、夏也を喜ばせたくて浴衣と下駄を持ってサプライズで彼の住むアパートへと向かった。歩いているだけでクラクラとするほど夏の日差しが眩しく、セミの鳴き声が耳元でうるさく響く、そんな日だった。夏也に渡された合鍵で玄関の扉を開ける。誰もいないはずの玄関には、私のものとは違う、紫で花柄の鼻緒がついた下駄が一足、きれいに並べられていた。嫌な予感が全身を駆け巡った。蝉の鳴き声よりも大きく、私の心臓の鼓動を早めて激しく揺さぶる。勢いよく部屋のドアを開けると、視界に飛び込んできたのは、横たわる夏也の上に浴衣をはだけさせて馬乗りになる女性の信じられない光景だった。汗だくでタンクトップにショートパンツという私の姿と、黒地に紫の薔薇の花が描かれた大人っぽいデザインの浴衣を纏う彼女。髪を上げたうなじが少し汗ばんでいるのが色っぽく見えた。二人の間に流れる空気が、私の気持ちを打ち砕く。「夏也？これどういうこと？」
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