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第332話

Author: 楽しくお金を稼ごう
豪は嬉しそうな声で「4億円」と言った。

蓮司は大輝の名刺をゴミ箱に捨てて「わかった」と答えた。

ボディーガードのリーダーは携帯を手に部屋を出て、ドアの外にいた紗也香とすれ違った。

紗也香は声を荒げて言った、「もし天音が本当のことを知ったら、絶対に兄さんを許さないわ!

兄さん!バカなことはやめて!

遠藤さんの周りには特殊部隊の隊員が常にいるのよ。明日の結婚式の宴会場もきっと厳重な警備が敷かれてるわ。殺し屋がうまくいくはずがない。

もし殺し屋が捕まったら、どうやって口止めするつもりなの?道明寺さんが白状したら、兄さんも終わりだよ!」

蓮司は健康診断書を紗也香の手に渡した。「これを天音に渡してくれ。

もし天音がこの診断書を見て、遠藤と結婚しないと言えば、俺は全ての計画を中止する」

なぜ要が、天音に心臓が悪いことを知られたくないのか、蓮司には分からなかった。しかし、賭けてみる価値はある。

紗也香は天音の診断書をめくり、心臓がもうすぐ限界値に達すると知り、目を丸くした。「わかったわ。私の連絡を必ず待ってて。絶対に勝手な行動はしないで」

翌日。

要は遠藤山荘に戻り、天音は香公館に送られた。

ヘアメイクのチームは既に到着していた。

天音は白無垢に着替え、鏡の前に座った。

メイクアップアーティストがにこやかに褒めてきた。「隊長は本当に幸せ者ですね。こんなに綺麗なお嫁さんをもらえるなんて」

天音は鏡の中の自分を見つめた。

今朝、病室でまだ眠たげなところを、要にキスされて目が覚めたことを思い出した。

要の大きな手が自分の手を包み込み、指先で真珠の指輪を撫でながら、耳元で何度も「綺麗だ」と囁いてくれた。

からかわれているのは分かっていた。

天音の頬は赤く染まり、思わず薬指にはめられた真珠の指輪に触れた。

白無垢は複雑で、何度も重ね着をしなければならず、天音はこの体が重くて仕方がなく、まるで自分の体ではないように感じた。

天音は要がどんな衣装を着ているのか気になった。

もし自分だけがこんな格好で、要が普通のスーツだったら、あまりにも手抜きだ。

天音は携帯を取り出すと、鏡に向かって写真を撮り、要に送った。

携帯には、ほとんどすぐに返信があった。

天音はそれを開いた。

【うちの天音、すごく綺麗だよ】

天音はさらに笑みを深めてと返した。【あ
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