Partager

第 365 話

last update Date de publication: 2026-11-01 15:39:07
クラリスが尋ねる。

「三日以内に」

「明日中に一次回答を」

「それは」

「現物不一致は、すでに共同調査の追加照会手順に入っています。施療院用の正規布が見つかるまで、代替手配も判断できません」

サムエルは口を閉じた。

そして、短く答えた。

「……明日中に、一次回答を出します」

確認はそこで終わらなかった。

八梱の中に、ひとつ妙なものがあった。

L-209。

外装は問題ない。

中身も通常外套用。

だが、外装の紐の一部に、結び直した跡があった。

ダンがいれば、すぐに気づいただろう。

今日はボルクが気づいた。

「この結び、商会の通常結びと違いますね」
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Dernier chapitre

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 365 話

    クラリスが尋ねる。 「三日以内に」 「明日中に一次回答を」 「それは」 「現物不一致は、すでに共同調査の追加照会手順に入っています。施療院用の正規布が見つかるまで、代替手配も判断できません」 サムエルは口を閉じた。 そして、短く答えた。 「……明日中に、一次回答を出します」 確認はそこで終わらなかった。 八梱の中に、ひとつ妙なものがあった。 L-209。 外装は問題ない。 中身も通常外套用。 だが、外装の紐の一部に、結び直した跡があった。 ダンがいれば、すぐに気づいただろう。 今日はボルクが気づいた。 「この結び、商会の通常結びと違いますね」

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 364 話

    サムエルは、すぐに口を開いた。 「まだ、他の棚に一時移動した可能性があります」 クラリスは彼を見た。 「積み間違いの相手は、この八梱ではなかったということですか」 「可能性としては」 「では、どの梱ですか」 サムエルは黙った。 マルティンが額に汗を浮かべている。 「確認中です」 その言葉は便利だった。 だが、もう便利な言葉だけでは進めない。 「確認中であることは記録します」 クラリスは言った。 「ただし、リーヴェ商会が昨日回答した“同日通常外套用毛織物との積み間違いの可能性が高い”という説明は、この八梱確認では裏づけられませんでした」 マルティンが慌て

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 363 話

    リーヴェ商会は、任意の倉庫確認を受け入れた。 返答は丁寧だった。 だが、その丁寧さは歓迎ではなく、防御に近い。 弊商会としては、積み間違いの可能性を確認するため、同日通常外套用毛織物八梱の現物確認に協力いたします。ただし、確認範囲は当該八梱に限り、商会内部帳簿全体の閲覧はご遠慮願います。 クラリスはその文面を読み、静かに頷いた。 「当然の範囲ですね」 オスカーが言った。 「ええ。商会としては、内部帳簿全体を開くわけにはいかないでしょう」 「ですが、八梱は見せる」 「積み間違いと説明した以上、見せないわけにはいきません」 イリスが茶を置く。 「積み間違いには、相

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 362 話

    部屋が静かになった。 ごく当たり前の問いだった。 けれど、重要だった。 商会が積み間違いと言うなら、商会倉庫にある通常外套用の中に、正規の保温布が混ざっているはずだ。 なければ、どこへ行ったのか。 レオンハルトが静かに言った。 「リーヴェ商会倉庫の確認が必要だな」 エリオットが表情を硬くする。 「商会内部倉庫です。任意協力を求める形になります」 「拒否された場合は?」 カレルが答える。 「現時点では強制調査には弱いです。ただし、共同調査対象の現物不一致に対する原因確認として、倉庫内の該当八梱確認を求めることはできます」 クラリスはすぐに追加照会へ一項目足

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 361 話

    その時、ミレーヌが慈善記録官室から戻ってきた。 手には、仕立て場で使う開封確認表の写しを持っている。 「お姉様、リーヴェ商会から回答が?」 「来ました」 「何と?」 「積み間違いの可能性が高い、と」 ミレーヌは一瞬、ほっとしたような顔をした。 積み間違い。 その言葉には、人を安心させる力がある。 悪意ではない。 うっかりだ。 誰も悪くないかもしれない。 だが、次の瞬間、彼女の表情が変わった。 「では、正しい布はどこにあるのでしょうか」 クラリスは、少しだけ微笑んだ。 「よい問いです」 ミレーヌは、はっとしたように口元を押さえた。 「すみませ

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 360 話

    リーヴェ商会からの回答は、翌日の昼前に届いた。 早かった。 早すぎるほどだった。 王宮筆頭実務顧問室の机に置かれた封筒には、リーヴェ商会の印が押されている。薄い緑の封蝋に、二本の針と糸巻きを組み合わせた商会章。 仕立て場との中継取引を多く扱う商会らしい印だった。 クラリスは封筒をしばらく見つめた。 開ける前から、中身の匂いが分かる気がした。 もちろん、本当に匂いがするわけではない。 ただ、王宮で何度も似た書類を見てきた。 丁寧な言葉で包まれた、便利な説明。 責任を認めず、しかし完全には否定せず、次の確認を待たせる文面。 そういう書類には、独特の重さが

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status