Partager

第 55 話

last update Date de publication: 2026-08-17 12:54:26
「ならば、私に直接お尋ねくださればよろしい」

「ありがとうございます。では、伺います」

クラリスは、帳簿を一冊開いた。

「ハイム商会からの毛布購入単価についてです。羊毛相場が戻った年にも、単価が下がっておりません。理由をご説明いただけますか」

バルツァーは、少しだけ目を細めた。

すぐに穏やかな顔に戻る。

「品質の向上ですな。孤児院や施療院に粗悪な品を届けるわけにはまいりません」

「品質検査の記録がありません」

「現場の判断でしょう」

「現場責任者の署名もありません」

「古い記録です。抜けもございましょう」

「では、こちらの別商会名義の納入品も同じ品質向上でしょうか」
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Dernier chapitre

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 301 話

    エリオットが顔を上げる。 「それなら、札自体は一枚で済みます」 「ただし、札が失われた場合が怖いですね」 セリアが言う。 「札番号を帳簿にも写します」 ミレーヌが続けた。 「札がなくなっても、帳簿の番号と梱包番号で追えるように」 クラリスは頷いた。 「よいです」 イリスが小さく札をしまった。 「今回は減りましたね」 「少しだけ」 「少しでも大切です」 その日の夕方、港湾会計担当官ボルクも呼ばれることになった。 彼は顧問室に入ってくるなり、机上の資料を見て渋い顔をした。 「用途札ですか」 「はい」 「港湾作業が増えます」 予想通りの第一声だった。

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 300 話

    積荷番号 N-442 北方厚織布類 三十二梱 第三北方倉庫 クラリスは眉を寄せた。 「港湾到着記録では二十梱と十二梱に分かれていましたね」 「はい。しかし倉庫記録では、同じ北方厚織布類として三十二梱にまとめられています」 「用途欄は」 「ありません」 「商会別は」 「ここにはありません。別紙にあるはずですが、まだ提出されていません」 イリスが静かに言った。 「同じ番号の箱が二つある、ということですか」 エリオットは少し考え、頷いた。 「厳密には、箱ではなく積荷番号です。同じ積荷番号の中に、用途や商会の違う箱が混ざっている可能性があります」 ミレーヌが、ぽつりと言

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 299 話

    港湾記録は、きれいだった。 きれいすぎるほどに。 王宮筆頭実務顧問室の机に広げられた写しには、輸入日、船名、積荷番号、品目、数量、関税処理、保管倉庫、搬出予定日が整然と並んでいる。 文字は揃っている。 印もある。 日付も抜けていない。 財務院港湾会計担当官ボルクの確認印まで入っていた。 だが、クラリスはその整った記録を見て、妙に落ち着かなかった。 隣でオスカーが眼鏡を押し上げる。 「見たところ、帳簿としてはかなり整っていますね」 「ええ」 「だからこそ、ですね」 「はい」 クラリスは、港湾到着記録の一行を指した。 北方厚織毛布地 二十梱 第三北方

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 298 話

    ミレーヌは少し驚いた。 「ありがとうございます」 「北方では、同じ保温布でも、病床用と移動用で厚みを変えます。施療院での使用場所を確認するのは意味があります」 クラリスは、ミレーヌを見た。 妹は少し赤くなっているが、きちんと立っている。 補佐見習いとしての視点が、国際案件の品目分類に入り込んだ瞬間だった。 「では、受領先用途欄に使用場所を追加しましょう」 クラリスが言うと、セリアが書き取った。 受領先用途:病床用/待合室用/移動用/その他。 ミレーヌは、小さく息を吐いた。 自分の発言が記録された。 怖い。 でも、少し嬉しい。 そんな顔だった。

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 297 話

    現物を見る必要がある。 布の端を見る必要がある。 その布が誰のための布なのか、最後まで追う必要がある。 夕方近く、セルゲイ大使が顧問室を訪れた。 彼はいつものように穏やかだったが、机の上に広げられた布を見ると、ほんの少し嬉しそうな顔をした。 「届きましたか」 「はい。非常によい布です」 「北方の冬では、この程度でなければ役に立ちません」 「アルヴィアの冬でも十分役に立ちます」 「そうでしょう」 セルゲイは布に触れ、端印を確認した。 「気づかれましたか」 「イリスが見つけました」 「さすがです」 イリスは静かに礼をした。 「端を見るのは侍女の仕事でもござ

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 296 話

    ミレーヌは、少し考えてから続けた。 「元品目と予定用途を分ける必要があります」 クラリスはオスカーを見る。 オスカーはすでに書いていた。 元品目:北方厚織毛布地。予定用途:防寒外套/寝台用毛布/施療院保温布/冬季慈善支援品。最終分類:受領先用途確定後。 セリアが静かに言った。 「慈善記録官室の分類表にも、元品目欄と最終用途欄を追加しましょう」 「はい」 ミレーヌは頷いた。 だが、その顔にはまだ迷いがあった。 クラリスは気づいた。 「何か気になりますか」 「……はい」 「言ってみて」 ミレーヌは布を見つめた。 「これ、同じ布ですよね」 「ええ」

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status