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第4話

Autor: ちょうどいい
午後の陽射しが、掃き出し窓からリビングへ差し込んでいた。

テレビでは、特番の再放送が流れている。

父はソファに寄りかかりながらスマホをいじり、時折、声を上げて笑っていた。

妹は母の腕の中にすっぽり収まり、顔にはまだ包帯が巻かれていた。

タブレットでアニメを見ながら、リンゴをかじっていた。

その時、玄関のチャイムが鳴った。

「誰かしら?」

母は立ち上がって髪を整えると、玄関へ向かい、ドアを開けた。

そこに立っていたのは、ラフな服装をした背の高い男だった。

手には、輸入物のさくらんぼが入った箱と、バービー人形のギフトボックスを提げている。

従兄の林大成(はやし たいせい)だ。今は消防隊の隊長を務めている。今日は新年の挨拶に来たのだ。

「あら、大成くん。来たのね」

母はたちまち笑顔になり、慌てて手土産を受け取った。

「ほら、早く入って。外は寒いでしょう」

従兄は靴についた雪を払いながら、家の中をぐるりと見渡した。

「佐緒里ちゃんが大晦日の夜に火傷したって聞いたよ。さっきまで勤務だったから、その足で新年の挨拶に寄ったんだ。妹の様子を見にね」

「大丈夫よ、大丈夫。顔をちょっと火傷しただけで、医師も跡は残らないって」

母は従兄を家の中へ招き入れた途端、堰を切ったように愚痴をこぼし始めた。

「あなた、あの日がどれだけ危なかったか知らないでしょう。叔父さんが早く気づかなかったら、佐緒里ちゃんは死んでたのよ!全部美緒のせいで……」

従兄はソファのそばまで歩いていくと、しゃがんで妹の頭を優しく撫でた。

妹は顔を上げて、「お兄ちゃん」と呼んだだけで、またすぐにテレビへ目を戻した。

従兄は妹の顔に巻かれた包帯に気づき、わずかに眉をひそめた。

「火傷、ひどいのか?」

「大したことないわ。もうちゃんと処置してもらったから」

父は鼻から煙をふっと吐き出した。

「全部は美緒のせいだ。正月だってのに部屋で火遊びなんかして、妹をこんな目に遭わせやがった!」

従兄は父へ視線を向けた。

「美緒は?何度か会ったことがあるけど、大人しそうな子だったよな」

「大人しい?」

父は鼻で笑った。

「あれは猫をかぶってただけだ。性根が腐ってるんだよ。妹に嫉妬して、わざと火をつけたんだ。それで今度は罪から逃げて、姿をくらました!」

「家出したのよ」

母も横から口を挟んだ。その声には不満がありありと滲んでいた。

「電話もずっと電源が切れてるし、どこにいるのかも分からない。恩知らずな子よ!」

従兄の眉間に、深い皺が刻まれた。

「家出?もうどのくらいになる?」

「3日間よ」

母は苛立たしげに答えた。

「外でさんざん苦労して、痛い目を見てからじゃないと戻ってこないつもりでしょうね」

3日間。

従兄の胸に、嫌な予感が走った。

10代そこそこの子供が、正月に家を出て、一体どこへ行ける?

「警察には届けたのか?」

「警察?」

父は面倒くさそうに手を振った。

「ただの癇癪だろ。2、3日も腹を空かせりゃ、勝手に戻ってくるさ」

従兄は、それ以上何も言わなかった。

立ち上がると、2階へ続く階段へ視線を向ける。

「2階を見てくる」

「おい、大成くん。ここでゆっくりしていけよ」

父が声をかける。

「大丈夫。火事の現場を見てくる」

そう言うと、従兄はそのまま2階へ上がっていった。

2階の廊下を歩いていた従兄は、突然、足を止めた。

鼻をすすると、空気に、妙な臭いが混じっていた。

普通の煙の臭いではない。

木が焼け焦げた臭いでもない。

もっと鼻を刺すような、耐え難い臭い。

それは、高温で焼けたたんぱく質が炭化し、さらに3日間密閉されたまま腐敗したことで生じる、独特の臭いだ。

従兄の顔色が変わった。

この臭いを、彼は知り尽くしていた。

焼死体の臭いだ。

従兄の視線が、木板で釘付けにされた部屋のドアへ向かう。

木板は隙間なく打ちつけられ、ほとんど隙間が見えないが、ドア枠の下には、ごく細い隙間が残っていた。

その周囲には、数匹のハエが群がっている。

従兄は足早にドアの前まで行き、しゃがみ込んだ。

あの腐ったような生臭さが、さらに強くなった。

隙間から、鼻の奥へ直接入り込んでくる。

従兄は手を伸ばし、ドア枠の下の隙間に触れた。

指先に、何か粘つく液体が付着した。

遺体が腐敗して染み出した体液だった。

3日も経っているため、すでに黒褐色に変色している。

従兄の瞳孔が、大きく収縮した。

彼は勢いよく立ち上がり、階下へ向かって叫んだ。

「叔父さん!上に来て!」

階下から、父の不機嫌そうな声が返ってきた。

「なんだよ?俺は今、佐緒里ちゃんとテレビ見てるんだぞ……」

「今すぐ来て!」

従兄の声が一段高くなり、命令するような響きを帯びた。

その迫力に父も気圧されたらしい。

「しつこいな……」

ぶつぶつ文句を言いながらも、渋々2階へ上がってきた。

「どうしたんだ?そんな大声出して……」

父が従兄の前まで来る。

だが、言葉を言い終える前に、従兄に肩をつかまれた。

「このドアの向こうに何がある?」

「美緒の部屋だよ」

父は気にも留めない様子で答えた。

「焼けたから、俺が釘で塞いだんだ。あいつが戻ってきてから考えればいい」

「開けてください」

従兄の声は、氷のように冷たい。

「開けるって、何のために?」

父は訳が分からないという顔をした。

「中は真っ黒で何も見えないぞ。何があるっていうんだ?」

「開けろと言ってるんだ!」

従兄の声が、ほとんど怒鳴り声になった。

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