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第26話

Author: 八雲詩乃
若葉は頷いた。「渡してきたわ」

「それで、彼は何か言ってた?」

若葉はそのときのことを思い出した。「ちょうど別の用事があってね。書類を置いてすぐ出てきたの。でも、あの人のことだから、まず弁護士に見せるはずよ」

佳奈はこの業界で長くやってきた。こういう人たちのことは、よくわかっている。書類をまず弁護士に見せるのは、ごく当たり前のことだ。自分たちの利益を何よりも優先させる、そういう人間なのだ。

「好きにさせておけばいい。ああいう男を相手にする方法は、いくらでもあるわ。私がいないあいだに何かあったら、いつでも連絡してね」

「わかった」若葉は考えた。「それほど長くはかからないはず。宗介は離婚を急いでいるし。涼香さんとずっと一緒にいるためには、それしかないんだからね」

佳奈は腹立たしげに言った。「そんなクズ男、関わらないのが一番よ」

「ええ」

その話題に触れると空気が重くなる。佳奈は切り出した。「明日、どこか素敵なところに連れて行ってあげる。リフレッシュに」

「どこへ行くの?」

「着いたらわかるわよ」

翌日。

若葉が起きると、佳奈は準備を始めていた。メイクから服選びまで、
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    若葉は頷いた。「渡してきたわ」「それで、彼は何か言ってた?」若葉はそのときのことを思い出した。「ちょうど別の用事があってね。書類を置いてすぐ出てきたの。でも、あの人のことだから、まず弁護士に見せるはずよ」佳奈はこの業界で長くやってきた。こういう人たちのことは、よくわかっている。書類をまず弁護士に見せるのは、ごく当たり前のことだ。自分たちの利益を何よりも優先させる、そういう人間なのだ。「好きにさせておけばいい。ああいう男を相手にする方法は、いくらでもあるわ。私がいないあいだに何かあったら、いつでも連絡してね」「わかった」若葉は考えた。「それほど長くはかからないはず。宗介は離婚を急いでいるし。涼香さんとずっと一緒にいるためには、それしかないんだからね」佳奈は腹立たしげに言った。「そんなクズ男、関わらないのが一番よ」「ええ」その話題に触れると空気が重くなる。佳奈は切り出した。「明日、どこか素敵なところに連れて行ってあげる。リフレッシュに」「どこへ行くの?」「着いたらわかるわよ」翌日。若葉が起きると、佳奈は準備を始めていた。メイクから服選びまで、何時間もかけて着せ替えられた若葉は、鏡に映った自分の姿を見て呆然とした。鏡の中にいるのは間違いなく自分だったが、雰囲気は完全に別人だった。もともと肌の白い若葉に合わせて佳奈が選んだのは、鮮やかなスカイブルーのドレス。透き通るような白さと服の色が互いを引き立て合い、手の込んだヘアセットとメイクで、元の少しふくよかな印象が消えて、ふっくらと艶やかな美しさを醸し出していた。「若葉、すごく綺麗」佳奈が溜息をつく。若葉は何も言えなかった。「どう?気に入らない?」「気に入ってる」若葉は言った。鏡の中の自分を見つめて、少しぼんやりした。「ただ、慣れないだけ」この数年、若葉はほとんどの力と時間を、仕事にそそいできた。自分のことは、できるかぎり後回しにしてきた。ぜんぶ、いつか宗介が自分を見てくれる日のためだった。おしゃれどころか、スキンケアの時間さえほとんどなかった。夜中まで働いて、次の日もまた同じことのくり返しだった。若葉を見て、佳奈は切なくなった。「そのうち慣れていくから大丈夫だよ」「やっぱり、着替えるわね」「ダメよ、これから出かけるんだから、今のままで」

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