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第111話

Author: つき酔
検査医は問いかけながらも、ベッド脇に立つ男をひどく意識していた。冷ややかな気配をまとったその男の威圧感に、医師の口調は知らず知らずのうちに丁寧になっていく。

莉奈は腰に添えられた手から、何事もないようにそっと身をずらした。

「頻度はずいぶん減りました。ただ、たまに耳鳴りがします。嫌いな人を見たときとか、嫌なことをされたときとか……たとえば、今みたいに」

検査医は、いっそ耳を塞ぎたかった。莉奈の言葉が明らかに背後の男へ当てつけていることは分かる。

だがそれが誰のことなのか、あえて口に出すほどの勇気は彼にはなかった。

検査医は気まずそうに小さく咳払いをした。「ええと……やはり、傷の治りには、できるだけ穏やかな気持ちで過ごしていただくのが一番ですから」

「ありがとうございます、先生。気をつけます」

莉奈が立ち上がった瞬間、あの大きな手が再び腰に添えられた。承也は莉奈の身体を自分の方へ引き寄せると、強引に検査室の外へと連れ出した。

検査室の入口まで来ると、承也は必死に抵抗する莉奈を一度だけ手放した。だがすぐにその手は下へ滑り、今度は莉奈の細い手首をきつく掴む。「どこへ行くつもり
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