เข้าสู่ระบบ次の日の朝、私は桐生と子供たちに会いに行く為、彼の車の助手席に乗った。 「合宿施設まで、車で一時間くらいかかるけど、知英ちゃん痛みはない?」 「大丈夫。朝、薬も飲んできたし」 私は心配性の桐生を、安心させる為に、笑顔を見せた。 「じゃあ、行こうか」 桐生はゆっくりとアクセルを踏んだ。車が走り出してすぐ、音楽が流れてきた。 「〝exist〟だ!」 「温泉旅行に行った時に、知英ちゃんも好きだって言ってたから」 「覚えててくれたのね」 「当たり前。知英ちゃんの事は全部覚えてるから」 「翼さんの愛を感じるわ」 桐生は私の好きなものを否定しない。こんな風に好きな人と笑い合える日が来るなんて、未だに信じられなくなる時がある。そんな時は、私が不安にならないように、桐生が真っ直ぐな愛情を伝えてくれる。 「おお!やっと伝わった?」 「いつも伝わってるわ。ありがとう」 ちょうどその時、信号が赤になった。すると、桐生はシートベルトを外し、私の唇にそっとキスをし、何気ない顔で運転席に座り直した。 「……///」 「知英ちゃん、顔真っ赤」 「だって、いきなり//しかも、外で///」 「誰も見てないよ。一瞬だから」 「もう!//」 「知英ちゃんが嬉しいこと言ってくれたから」 桐生が私に微笑みかけた。私はこの顔に弱く、つい許してしまう。その時、信号が青になった。私は呼吸を整え、前を向いた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「知英ちゃん、着いたよ」 「わぁ!広い!」 桐生グループの合宿施設は、広大な土地の上に建っていた。周りは緑で囲まれ、アスレチック場まであった。ここならば、子供たちも伸び伸びと過ごせるだろう。私は安堵の表情を浮かべた。 「そろそろ行こうか?」 「うん」 私は桐生の一歩後ろを歩いた。すると、桐生が足を止め、私の右手を握った。 「知英ちゃんは、俺の隣に居て」 「はい」 私は、桐生の言葉が嬉しくて、顔がニヤけそうになるのを隠した。 「知英ちゃん?」 「何でもないわ」 「そう?ならいいけど」 「それより早く子供たちに会いたいな」 私は桐生の左手を握り返すと、前を向いて歩き出した。 合宿施設はアスレチック場から、歩いて5分くらいの所にあった。入口を開けると、子供たちの元気な声が聞こえてきた。それだけで私
「ただいま」 「翼さん、おかえりなさい」 「知英ちゃん、起き上がって平気なの?」 「ええ。もう大丈夫。心配かけてごめんなさい」 「俺の事はいいんだ。知英ちゃんが無理してなければ」 桐生は心配そうに私の顔を覗き込んだ。久しぶりに桐生の顔を間近で見た私は、思わず頬を赤らめた。 「だから、顔が近い//」 「ははっ、いつもの知英ちゃんだ」 「だから言ったでしょ?夕飯作ったの。一緒に食べましょう」 「うん。食べよう」 私は桐生から、ジャケットを預かるとハンガーに掛けようと手を伸ばした。 「俺がやるよ」 「ありがとう」 「どういたしまして。すぐに着替えてくるね」 「うん。待ってる」 いつもよりも私に甘い桐生に、不覚にもときめいてしまった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「やっぱり、知英ちゃんの料理は美味しいな」 「良かった」 「本当に怪我は大丈夫?痛みはない?」 「ほとんど痛まないわ。あと数日、痛み止めは飲むけれど、普段通りに動いていいって先生も仰っていたから」 「それは良かった」 桐生は安堵の表情を浮かべた。それから、私は園長から聞いた件を桐生に話した。 「翼さん、園長から聞いたのだけど、青空荘を購入したってほんと?」 「ああ。だから、もう二度と青空荘に手を出す者は居ないよ」 「どうしてそこまで……」 「知英ちゃんの大切な場所だから。大怪我をしてまで守った場所でしょ。俺もその場所を守りたいと思ったから」 桐生は私に微笑んだ。そして、鞄から大きな封筒を取り出すと、それを私に渡した。 「これは知英ちゃんが持っているべきものだから」 私は封筒の中に入っている書類を読んだ。そして、言葉を失った。 「これって……」 「青空荘の不動産権利書」 「名義が私……?」 「うん」 桐生は平然と答えた。 「もちろん青空荘の経営は、桐生グループが行う。だけど、オーナーに相応しい人は知英ちゃんしか居ないから。園長もぜひ、知英ちゃんに任せたいと言ってくれたよ」 私は桐生や園長の優しさに涙が止まらなかった。私の育った家であり、夢を見つけた場所を守りたかった。子供達の唯一の居場所を守りたかった。しかし、それすらも出来ないのかと自分の無力さを悔やんでいた。 けれど、また桐生が手を差し伸べてくれた。桐生は私の一番の理解者で
騒ぎが収まった頃、俺は施設の職員の加藤を呼び出した。 「加藤さん、今日からしばらくの間、子どもたちは、桐生グループ所有の合宿施設に滞在してもらいます」 「はい」 「そこならば、セキュリティも万全ですし、子どもたちの食事の管理も出来ます。近くにはアスレチック場もありますので、楽しく過ごせるかと思います。一刻も早く、こちらの施設の修繕工事を行い、みなさんが安心して過ごせる環境を整えますので、それまでの間、ご不便をお掛けしますが、よろしくお願いいたします」 「桐生さん、頭を上げてください。むしろ、お礼を言わせてください。桐生さんが手を差し伸べてくださらなかったら、子供たちは行き場を無くし、路頭に迷うところでした。助けてくださってありがとうございました」 加藤は俺に深々と頭を下げた。しかし、礼を言う相手は俺ではない。 「知英ちゃんが元気になったら、彼女に言ってあげてください」 「はい、そうします」 「それでは、みなさんの荷物をまとめてもらえますか?準備が出来次第、早速、出発します」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 一時間後 手配したマイクロバスが、青空荘に到着した。早速、バスに子供たちと施設の職員、それから、合宿施設の管理を任せている桐生グループの社員が乗り込んだ。 「明日、俺も顔を出すから。くれぐれも頼んだぞ」 「桐生社長、承知しました」 俺がマイクロバスを見送ると、それに続いて芹沢の車が停車した。俺は車に乗り込み、芹沢に尋ねた。 「あの二人は?」 「無駄口を叩けないようにして、いつもの場所に放置しました」 「そうか。よくやった」 次は、元凶を呼ぼうとしよう。力を持ったが故、その使い方を間違えた山下真二。山下に社長という地位は相応しくない。その事を、本人に痛いくらい思い知らせてやるのだ。 「芹沢、山下真二に連絡を」 「既にしています」 「仕事が早いな」 「桐生社長にお怒りでしたよ。青空荘を購入した件で」 「山下の金儲けの道具が無くなったからな」 金の亡者の真二にとって、俺の存在は目障りに違いない。さて、真二がどうやって俺に噛み付いてくるのか見物だ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ふざけるな!」 いきなり、社長室のドアが開け放たれた。この
俺は昼過ぎに出社した。 「社長。お疲れ様です」 「お疲れ様。昨日は迷惑掛けて申し訳ない」 「とんでもございません。それよりも、桜井様の体調はいかがですか?」 「知英は順調に回復しているよ」 「それは良かった」 知英は痛みが引いてきたのか、自分で起き上がれるまでに回復した。しかし、まだ安静が必要だ。そこで今日は木村に知英の身の回りの世話を頼んだ。木村ならば安心して知英を任せられる。 「芹沢、頼んでいた資料はあるか?」 「はい、こちらに」 「山下真二」 俺は青空荘を欲している人物の名前を口にした。山下は数ヶ月前に家業を継いだ。それから強引な方法で荒稼ぎをしているという噂を耳にしていたが、青空荘にまで手を出すとは。 「芹沢、これを知英名義にしてくれ」 「社長、いつの間に……」 「今朝、園長に会ってきた。知英の事も話したよ。園長は、青空荘が守れるならと譲ってくれた」 「そうでしたか。早急に手続きします」 「頼んだ」 トゥルルルルルルルル…… その時、俺のスマートフォンが鳴った。俺は通話ボタンを押した。 「もしもし」 「もしもし、知英お姉ちゃんの彼氏さん。助けて!」 声の主は、知英と一緒に居た優菜だった。優菜は泣きそうな声で俺に助けを求めた。 「どうしたの?」 「あの人たちが……知英お姉ちゃんをいじめた人たちが来てるの」 「優菜ちゃんは怪我してない?」 「私は大丈夫。事務所に隠れてるから。でも、色々壊されちゃって……怖いよ」 懲りずにまた知英の大切な場所を壊そうとする奴らに、俺の胸の奥から怒りが込み上げた。 「優菜ちゃん、すぐ行くから」 「うん」 「電話そのまま切らないで」 「うん」 「知らせてくれてありがとう」 「知英お姉ちゃんが、彼氏さんの名前を教えてくれたの。そしたら事務所で彼氏さんの名前が書いてある紙があって」 恐らく、名刺のことだろう。おもちゃを寄付する時に、職員に渡したものだ。俺は通話を繋げたまま、青空荘へ急いだ。子供たちが無事であることを俺はひたすら祈った。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「芹沢、まだか?」 「この先、工事中のようです。恐らく渋滞しているかと……」 「くそっ!」 こんな時に、渋滞に
朝、目を覚ますとベッドの縁で寝ている桐生が居た。一晩中、私の看病をしてくれたのだろう。私は、スーツを着たまま寝てしまっている桐生の髪を優しく撫でた。 「知英ちゃん。おはよう」 「おはよう、翼さん」 「痛みはどう?」 「昨日よりは……」 私は起き上がろうとしたが、まだ痛みが強く動けなかった。そんな私を桐生が支えてくれた。 「知英ちゃん、無理しないで」 「ごめんなさい。翼さん、お仕事忙しいのに迷惑掛けてしまって」 「迷惑なんて思ってないよ。朝食食べる?」 「私はもう少し休むわ。それよりも、翼さん、シャワー浴びてきて?」 「分かった。また様子見にくるね」 私は寝室から出ていく桐生に微笑みかけた。そして、桐生が寝室のドアを閉めたことを確認すると、背中を押さえ、うずくまった。 「痛い……」 全身を殴られたような痛みが私を襲った。私はベッドサイドに置いてある痛み止めを飲もうと手を伸ばした。しかし、あと少しの所で手が届かず、コップに入った水を床にこぼしてしまった。痛みで何も出来ない自分が情けなかった。 「知英ちゃん!」 「翼さん、どうして?」 「シャワーの前に薬をと思って」 「ごめんなさい。私、何も出来なくて」 「大丈夫だよ。知英ちゃんが心配することは何も無いから」 桐生は今にも泣きそうな私を優しく抱き締めた。こんな私を大切にしてくれる桐生を失いたくない。私の中途半端な正義感が、周りの人に迷惑を掛けてしまった。ただ、青空荘を守りたかっただけなのに、どうしてこうなってしまったのだろう。 「翼さん、青空荘の様子は?子供たちは無事?」 「ああ。大丈夫。何かあれば、俺にすぐ知らせがくるよ」 「良かった」 私は安堵の表情を浮かべた。 「人手も保育士を派遣してある。それから、子供たちの栄養を考えて管理栄養士も。だから、知英ちゃんは安心して怪我の治療に専念して」 「翼さん、何から何までありがとう」 「どういたしまして。知英ちゃんの大切なものは必ず守るって言っただろ?」 「本当に翼さんが居てくれて良かった」 「知英ちゃん、もう誰にも傷つけさせないから」 桐生は私を真っ直ぐ見つめた。そして、私の手を握った。 「知英ちゃんが居ないと俺、生きていけない」 「翼さん……」 「
自宅に帰ると、俺は寝室のベッドまで知英を抱きかかえた。 「翼さん、自分で歩けるわ」 「だめ。今夜は俺の言うこと聞いて?芹沢、明日の仕事だけど」 「明日は一日お休みにしました。桜井様とごゆっくりお過ごしください」 「ありがとう」 「とんでもございません。私はこれで失礼します。桜井様、お大事になさってください」 「芹沢さん、いつもありがとうございます」 芹沢が帰った後、俺は知英の顔を覗き込んだ。知英は痛がっている素振りを見せないが、医師からは相当ひどい打撲だと説明を受けた。どれだけの力で知英は殴られたのだろうか。俺が傍に居たら、知英がこんな目に遭うことはなかったのに。俺は自分を責めた。 「翼さん?」 「ん?知英ちゃん、どうした?」 「私じゃなくて、翼さん。辛そうな顔をしていたから」 知英には何でも見透かされてしまう。だけど、今日は強がることを許して欲しい。 「俺は平気。それよりお腹減らない?」 「そういえば減ったかも」 「今日は俺が作るね」 「翼さんの手料理が食べられるなんて楽しみ」 知英は俺に笑顔を向けた。俺は思わず、知英の頬にそっと触れた。無事で本当に良かった。知英が居なくなったら俺は生きていけないと今日、確信した。こんなにも、知英を愛していたことを俺自身自覚したのだ。俺は知英の額にそっとキスをした。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 夕食を食べ終わった知英に、俺は痛み止めを渡した。 「ありがとう」 「どう?痛みは?」 「まだ痛むわ。さっきから、また痛みだして……」 知英は苦悶の表情を浮かべた。額には脂汗が滲んでいる。俺は知英の汗を拭い、背中をさすった。 「ありがとう、翼さん」 「ううん、これくらい当然だよ」 「そう言える翼さんは、格好いいわね」 「傷口に塗る薬も処方されてるんだけど、俺が塗ってもいいかな?」 「うん、お願いします」 俺は知英の着ているパジャマを捲りあげた。すると、殴られた痣が痛々しく残っていた。それを見た俺に怒りが湧き上がった。知英を傷つけた奴らを絶対に許さない。俺は両手で拳を握った。 「少ししみるかも」 「大丈夫」 俺は右手の人差し指に、塗り薬を少し取り、傷口に優しく塗った。すると、知英の身体がわずかに震えた。