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8.ブロック殿下視点

Author: satomi
last update Last Updated: 2025-11-05 07:18:59

 俺は自己嫌悪に陥った。

 まさか、『取ってこーい』の当事者になると思わなかった。しかもあの噛みごたえはなかなか良い。離したくなかった俺の気持ちも汲んでほしい。

 って違うんだ‼

 俺はまさか他人に腹を見せるような真似をするとは思わなかった。しかも元・婚約者のヘレン嬢。

 腹を撫でられるのは気持ちはよいのだが……あくまでもそれは狼としての話で人間として考えると恥ずかしい!はっ、あまり恥ずかしがるとまた狼化してしまう。イカンイカン。

 陛下は何故ヘレン嬢と婚約を破棄するようにとお達しを出したのだろう?

 俺が狼化することが王家の恥だと思っているのだろうか?それを言うのなら陛下だって昔は狼化をしていてだろうに…。

 そんな風に思っていたのに、ヘレン嬢は「今日は王宮の中を散歩しましょう!」と言い出した。

 もちろん、ガイヤードもシルフも反対。しかしながら、ヘレン嬢は散歩を強行した。

「やっぱり散歩は気持ちいいですよね?部屋で遊ぶのも私が撫でるのもいいでしょうけど、やっぱり散歩がいいでしょう?」

 道行く人々は狼の姿を見て、逃げる。

「逃げるなんて酷いですね。尊いのに…。この銀色の毛並みの良さがわからないなんて!」

 たまに令嬢で狼化をした俺に触れようとする者がいるが、如何せん香水臭い!鼻が腐る!

グルルルルッと威嚇をすると、逃げて行った。仕方ないじゃないか?香水臭かったのだから。

 楽しく散歩をしていたのだが、俺から光が…。

「いけない。楽しくてこのまま散歩を続けるところだったわ。えーと、手狭なところとなりますが近くにあって良かった。私の部屋に一時的に非難をして下さい。ベッドに入って待っててください!すぐにガイヤード様とシルフ様に言って殿下の衣服を届けて頂きますから!」

 と、ヘレン嬢は部屋から行ってしまった。ここは一応俺の専属侍女としてのヘレン嬢の私室となっている。

 ヘレン嬢は気にしていないだろうが、俺にはわかるんだよ。ベッドは特にだけど、部屋中がヘレン嬢の匂いで充満している。

 ガイヤードもシルフも早く来いよー!

「ヘレン~、ちょっとこの問題を聞きたいんだけど……」

 ヘレンの侍女仲間は考える。

部屋にヘレンは不在・ベッドには見知らぬ男性が半裸。そこからはじき出された解答は、ヘレンが部屋に男を引っ張り込んだ!

 これは大スクープ!皆に知らせなければ!

「お邪魔しま
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     全く…私の努力の成果である紅茶を是非とも殿下に味わっていただきたかったのに。味わっていただいた後には、『もうお前が淹れた紅茶以外は飲めない!』宣言をしていただきたかったのです。 殿下の執務室は、普段私が仕事をする部屋のお隣ですが、きっちりと戸が閉まった状態ではお二人が何を話しているのかも……。はっ、まさかお二人は世間には言えない関係?などと思ってしまいます。 ここは強硬突破です!この国の未来を担う方がそのような性癖をお持ちの方では臣下としてやる気が持てなくなります!「紅茶をお持ちいたしました。お二人でお話ということでしたので、喉が渇いているのでは?と思い飲み物をお持ちしました!」「ヘレン嬢、気が利くぅ!喉乾いてたんだよね」 ふと殿下の方を見ると……衝撃の犬耳??触りたい衝動でフラフラと近づいてしまいます。あくまでも無意識です!そこは重要です‼「触るなよ。俺の耳だからな」「ヘレン嬢だって、その耳を見たらなぁ?あ、コレは箝口令が敷かれていることだからな!えーっと、王族と一部の人間。俺みたく昔から殿下と付き合いがある人間しか知らない事だから」 ガイヤード様は仔狼も見たのですね。羨ましい!ついジト目で見てしまいました。「俺が小さい頃の殿下の狼姿を見たのは不可抗力だよ。ヘレン嬢にそんなに睨まれるとはなぁ」 突然に話をすり替えられました。流石です。「あ、ヘレン嬢が淹れてくれた紅茶すっごく美味しい!なんか魔法でも?」「違います。実家で侍女としての特訓の一環として専属の侍女に免許皆伝までみっちりとしこまれました」「はぁ、なるほどねぇ。美味しいと思わね?ブロック殿下?」 その時には殿下はかなりの狼化が進んでいました。「触ってもいいですか?」 唸る声をあげて警戒するように、殿下狼に拒否られました。「はぁ、ガイヤード様が言ってた『触ったことがある』っていうのは、殿下の事ですか?」「まあな。知能もちょっと落ちるみたいで、この状態で森の方に行こうとした時は焦ったぜ?窓を突き破るもんだから……」 ああ、あったなぁ。『ブロック殿下大怪我事件』。 婚約者時代に大騒ぎになっていました。「どうやって解決したんですか?」「森の中で素っ裸で焦ってる殿下を見つけた時はこっちが焦ったぜ?それから一度城に戻って、殿下の服を調達して、殿下を保護ってわけ。殿下は体のあ

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