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危険な駆け引き

Author: るな
last update publish date: 2026-09-18 16:20:39

今日、私は、愛する天野恭吾と婚約する。

「どうして、裏切られたのに兄貴と婚約するんだ?そこまで、兄貴のことを愛してるのか?麗奈さん、答えて」

「世那、あなたには関係ないことよ」

「関係ない?俺と寝たのに?」

「それは……!」

すると、世那は私を壁に追い詰め、強引にキスをした。

「んん……やめて!」

私は世那の唇を噛み、彼を突き飛ばした。世那は唇に滲んだ血を舌で舐めた。

「なんで抵抗するんだよ。俺の事、拒めないくせに」

「自惚れるのもいい加減にして。あの日はどうかしてたの」

「へぇー。嘘だ。顔に書いてある」

「麗奈。着替え終わった?」

その時、恭吾が私を呼んだ。恭吾に、今、世那と一緒に居る所を見られる訳にはいかない。

「あと、すこし……んん//」

世那が私の口を塞いだ。私はこのキスを知っている。すぐ側に恭吾がいるのに、私は世那を拒めない。

「見つかっちゃうよ。お義姉さん」

「見つかる気なんかないくせに」

「よく分かってるね。そうこなくっちゃ」

この時、私の中の理性が切れる音がした。世那は婚約者の弟。いけないと分かっているのに、止められない。

あの夜の出来事が脳裏に蘇った。私の目の前にいる男に、私は一晩中抱かれた。婚約者の弟との行為は、背徳感にまみれ、堪らなかった。今も、世那がキスしてきたせいで私の身体は疼きだした。だが、それを悟られないように私は気丈に振舞った。

「世那、離してよ!もう行かないと」

「まだ平気だよ」

すると、世那は私を後ろから抱き締め、私の制止も聞かず、右耳を甘噛みした。

「あっ//」

「声出したらバレちゃうよ」

「だから触らないで/」

「ねぇ、知ってる?兄貴さ、昨日もあの子と一緒に居たんだよ」

「……そう」

あの子とは、恭吾の勤める法律事務所に勤務しているアシスタントで、名を雪村葵と言う。この女が今の恭吾の浮気相手だ。今日の私と恭吾の婚約パーティーにも招待客として来ている。一体、どの立場で来るのだろうか。その図太い神経だけは尊敬する。

3日前に、世那の暴露により恭吾の裏切りを知ってから、私の世界は崩壊した。信じていたものがこんなにもあっさりと崩れ去るとは思ってもみなかった。恋は盲目とはよく言ったものだ。私は恭吾の本当の姿が全く見えていなかった。

恭吾の為に、美しくあろうと努力した。だが、恭吾は随分前から私に触れようとはしなかった。それでも私は恭吾を信じていた。私だけを愛してくれていると……だけど、それは幻想だった。

「麗奈さん、兄貴なんてやめろよ。今すぐ俺と……」

私は世那の唇に人差し指を当てた。

「裏切りには、裏切りを」

その言葉を呟いた私は、世那の頬に手を添え、キスをした。そして、真っ直ぐ世那を見つめて言った。

「世那は私の為に、犠牲になる覚悟はある?」

「あるよ。一緒に地獄に堕ちようか」

「馬鹿言わないで。地獄に落ちるのは恭吾よ」

8年間の私の純粋な想いを踏みにじった罪は重い。きっと、恭吾は私が裏切るなんて夢にも思っていないだろう。だが、8年もの間、私に愛を囁きながら、平然と浮気を繰り返した恭吾を許せるはずがない。私に触れない時、どれだけの女を抱いていたのだろう。想像するだけで、汚らわしい。

「恭吾と雪村葵の浮気の証拠を掴んで」

「婚約パーティーで浮気?兄貴、頭おかしいな」

「このふたりならきっとやるわ」

「義姉さんの望みを叶えたらご褒美くれる?」

「その呼び方はやめて」

「だって、兄貴と婚約するんでしょ?だから、俺の義姉さんじゃん。もしかして、俺と寝たこと後悔してる?」

世那は私を揺さぶった。だが、その手には乗らない。私は淡々と世那に問いかけた。

「やるの?やらないの?」

「もちろん、やりますとも。麗奈さんの望みなら喜んで」

純粋な愛ほど、壊れた時に歪んでく。私は復讐の為に、婚約者の実弟と手を組んだ。

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    翌日、俺は出勤するとすぐに、桑山を社長室に呼び出した。 「例の件の進展はありましたか?」 「はい。天野恭吾と協力関係にある職員の身元が判明しました。名前は倉木慎二。40歳。10年前から天野恭吾の勤める法律事務所で、財務担当をしています。詳しくは、こちらの資料をご覧ください」 俺は桑山からファイルを受け取ると、一枚ずつ資料に目を通した。すると、そこには気になる記載があった。 「中学一年生の娘は、入院中」 「そのようです。倉木は男手ひとつで娘を育てています。その娘は、長期入院中です。治療費も莫大だと考えられます」 「だとすると、あの100万円は……」 「断定はできませんが、娘の治療費を盾に、倉木は天野恭吾に、加担させられている可能性も考えられます」 「憶測かどうかは、本人に会って直接確かめます。倉木が行きそうな場所は分かりますか?」 「毎日、18時に、娘の病室を訪れているようです」 「では、今日の18時に僕もお見舞いに伺うとしましょう。桑山さん、準備をお願いします」 「承知しました」 桑山が社長室を退出すると、俺は煙草を1本取り出し、火をつけた。そして、窓から外を見下ろしながら煙を吐いた。俺は、子供の頃から、恭吾の事が嫌いだった。恭吾は、俺のことを散々罵った。あの屈辱は、今でも忘れていない。だから、俺は恭吾がどうなろうが知ったこっちゃない。全ては身から出た錆。自業自得というやつだ。 トゥルルルルルル... 煙草を吸い終わった時、内線が鳴った。俺は、受話器を取った。 「はい、社長室です」 「お疲れ様です。天野社長。ただいま、天野社長のお兄様だと仰る方が受付にお越しなのですが、お通ししてもよろしいでしょうか」 恭吾が来たようだ。遅かれ早かれ、俺の前に来るとは思っていた。さて、どうやって、恭吾を追い詰め、揺さぶりをかけようか。考えると胸が高鳴った。 「はい、通してください」 「承知しました」 俺は内線を切った。そして、社長の椅子に座った。もうすぐ、恭吾が社長室の扉を勢いよく開ける頃だ。俺は心の中でカウントダウンを始めた。 「世那!!」 ほらやっぱり。恭吾は、俺の名を叫びながら、社長室へ入ってきた。 「兄貴、何か用?」 「分かってるだろ!麗奈だよ!」 「だから昨日、説明しただろ」

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    「恭吾、離して!!離してってば!!」「嫌だ!麗奈。心配したんだぞ。電話もメールも繋がらないし。こないだの事は謝る。俺が悪かった。だから、別れるなんて言わないでくれ。頼むから、俺の所に戻ってきてほしい」恭吾は、私を痛いくらい強く抱き締めたまま、ドラマの台詞のような言葉を、次から次へと吐き出した。全てが安っぽく聞こえて反吐がでる。私が何も知らないとでも思って、タカをくくっているのだろう。私は横目で世那の様子を伺った。すると、世那は両手で拳を握り、今にも恭吾に殴りかかりそうな形相をしていた。「兄貴、麗奈さんから離れろ。嫌がってるだろ」「世那、お前に俺と麗奈の事は関係ないだろ。黙ってろ」「それを言うなら、麗奈さんにフラれた兄貴も関係ないよな。もう一度言う。麗奈さんから離れろ」世那はドスの効いた声で、恭吾を威嚇し、睨みつけた。世那の気迫に負けた恭吾は、私を抱き締めている腕を離した。しかし、その拍子に私は、赤ワインを持った招待客とぶつかってしまった。あろうことか、世那がプレゼントしてくれたドレスに、赤ワインが零れた。私はショックと苛立ちを隠しきれなかった。 「世那、ごめんなさい。ドレスが……」「ドレスはクリーニングに出そう。気にしないで。それよりも怪我はない?」「私は大丈夫。部屋に予備のドレスがあるから、着替えてくるわ」「うん、分かった。一緒に行こうか?」「大丈夫。着替えたらすぐ戻るわ」 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄私は階段を駆け上がり、2階の自室に足を踏み入れた。久しぶりの自室は、以前と何も変わっていなかった。私は不覚にも懐かしさを覚えた。しかし、私には感傷に浸っている暇はない。私は、早速、クローゼットを開け、予備のドレスを探した。ガチャッドレスを探していると、物音が聞こえた。私は咄嗟に振り返った。「きょう……んん……」私は無断で部屋に入ってきた恭吾に、タオルで口を塞がれてしまった。そして、恭吾はそのまま私をベッドに押し倒し、馬乗りになった。「どうして逃げる?どうして嫌がる?麗奈。あんなにいい子だったじゃないか。これからも、俺の為に尽くしてくれよ」私は全力で首を横に振った。まさか、恭吾がここまでするとは予想外だった。自分の手を汚すなんて、恭吾らしくない。「まだ俺に逆らうのか。なぁ。麗奈。俺を見ろ。俺の事が好きだよな?な。そ

  • 婚約者の裏切りを知った夜、私は彼の実弟に奪われた   誕生日パーティーの罠

    父の誕生日パーティー当日、私は世那にプレゼントしてもらったドレスを身に着け、寝室にある姿見鏡の前に立った。すると、私の背後にスーツ姿の世那がやってきた。そして、私の首にネックレスをかけた。「うん、似合ってる」「世那、このネックレスいつの間に?」「内緒」世那はサプライズが上手い。だから、私はいつも驚かされる。「そろそろ行こうか」「そうね」「麗奈さん、緊張してる?」今日、私は久しぶりに恭吾と顔を合わせる。緊張というより、恭吾に対して怒りが爆発しないか心配していた。「してないわ。世那がいるもの」私は世那の手を握り、家を出た。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「麗奈さん、行くよ」「ええ」私は世那と腕を組み、実家の門をくぐった。私の行動は、母親に対する反逆だ。予想通り、私と世那を見つけた母が、鬼の形相でこちらにやって来た。「麗奈、恭吾くんは?」「だから別れたって電話で話したでしょ」「馬鹿なこと言わないの!」母は私の頬を叩こうと、右手を振りかぶった。しかし、それを世那が阻止した。「お義母さま、今日は祝いの場です。そういうことはやめましょうよ」「世那くんこそ、お兄さんの婚約者とこんなことをしていいの?」「はい。麗奈さんと、兄貴はもう何の関係もありませんので。僕が、麗奈さんと親しくしていても、問題ないはずです」「だけど……」母はまんまと世那に言いくるめられ、言葉を詰まらせた。そこに、騒ぎを聞きつけた父がやって来た。「おお!世那くん。来てくれたのか。ありがとう。麗奈もいらっしゃい。二人ともゆっくりしてってくれ」「あなた、麗奈は恭吾くんと……」「お前も知ってるだろ?彼のした事を。麗奈が望まないなら、婚約も無理強いすることはできん」私は父の言葉に驚きを隠せなかった。父が私の肩を持つなんて、信じられない。水無瀬に嫌がらせをされた時、私の話を一切信じず、事件を揉み消した張本人なのに。「世那、父は何か企んでるのかしら」「どうして?」「だって、さっき、母の前で私の肩を持ったじゃない。ありえないもの」「それはね、お義父さんは後悔してるんだ。あの時、麗奈さんのことを信じなかったことを」「どういうこと……?」「水無瀬の事件の真相を、証拠と共に麗奈さんのお義父さんに話したんだ。そしたら、泣き崩れてたよ。麗奈さんに悪いことをしたって

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