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第1267話
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山口社長もう勘弁して、奥様はすでに離婚届にサインしたよ 第1503話
今のジェームズの身体状態では、二度目の幹細胞移植手術には耐えられない。前処置として行う化学療法で骨髄を空にする過程を乗り越えることは不可能で、もはや薬で延命するしか道はない。晴人：「手術の日時はもう決まってるのか？」コールマン：「当初の予定では、まさにこの数日中だ。彼らは俺からの連絡を待っている」「手術はどこで？」「ニューヨークだ」嵐月市からニューヨークまでは、車で約2時間ほど。晴人：「じゃあ、何事もなかったように予定通り伝えろ。手術日は明後日でいい」コールマンは晴人の意図に気づき、言った。「彼らは非常に慎重だ。肝臓が届いてからでないと手術には踏み切らない」つまり、ジェームズを手術台で死なせるというのは現実的ではない。「でも、もし肝臓の到着が遅れて、ゴールデンタイムを逃したらどうなる？」移送中に何かが起これば、肝臓が届いてからの検査と手術の間にタイミングを逃し、最適な移植時期を逸して肝臓が使えなくなる可能性もある。あるいは、ギリギリの時間で届けば、焦って移植を急ぎ、詳細な検査を省くかもしれない。コールマンは沈黙し、一瞬目に深い思案の色を浮かべた。晴人：「俺の言う通りにしろ」しばらく黙っていたコールマンは、やがて静かにうなずいた。「わかった。君の指示に従う。KLグループが行ってきた人体実験に関する証拠も全て渡す。その代わり、家族の安全を保障してくれ。KLの手には絶対に渡らせないでくれ」晴人：「うん」「一つ、質問してもいいか？」「何だ？」「どうやってここまで気づいた？」コールマンは聞いた。ついこの間まで、何の異変もなかったはずだ。確かに、今日の午前中に見知らぬ女性が一人やって来て、どうやら夏希の実の娘らしい。そして午後には、晴人が夏希を連れて行った。晴人は笑って言った。「実のところ、君のおかげだ。イリアが母の実子ではないと分かった時、偶然にも本当の妹がその真相を調べていて、母の病状の異常にもすぐに気づいた」ちゃんとした演技をするために、晴人はイリアと夏希の適合検査までやらせていた。実際には、手術で晴人やイリアの肝臓を使うことなどないのだから、もっと適当に済ませることもできたはずだった。コールマン：「......」晴人は彼にスマホを差し出した。「奥さんに電話しろ。連絡が取
山口社長もう勘弁して、奥様はすでに離婚届にサインしたよ 第1502話
コールマンは無表情で座り込み、しばらくしてからようやく口を開いた。「もう言わなくていい。知りたいことがあるなら、直接聞いてくれ」晴人：「なぜこんなことをした？」コールマン：「選択肢がなかったからだ」コールマンは若い頃に妻を亡くし、一人で長男を育て上げた。中年になってから現在の妻リアと出会い、再び結婚という道を選んだ。リアは知的で上品で、彼にとって理想的な女性だった。結婚後、二人は非常に仲睦まじく、ほどなくしてリアが妊娠した。定期検診でも何の問題もなく、コールマンも子供を心待ちにしていた。だが、次男が生まれた後、稀少なKidd陰性の血液型と診断され、生後1ヶ月で発熱と肝脾腫の症状が現れ、家族性血球貪食症候群（FHL）と確定された。コールマンは絶望に陥った。特殊な血液型に合うドナーは非常に少なく、適合する確率はほぼゼロに近い。そんなとき、ケイラー病院が救いを持って現れた。だがその条件は——ある手術への協力だった。その手術は、肝臓のドナーが騙されて提供させられるもので、本人は肝がんの切除手術だと思っていた。コールマンも分かっていたが、息子の命を救うためには他に選択肢はなかった。手術はKLの人間によって記録され、それが彼を縛る証拠となった。その後、息子は無事に幹細胞移植を受け、病状は安定した。しかしその後、リアが自分の正体を明かした。彼女はモレンソン家の人だった。モレンソン、それはKLグループの会長および数名の取締役の姓だった。この時点で、コールマンはKLグループの指示を従わないと。彼はこれまで幾度となく、自分の罪が明るみに出るその日を想像してきた。だからこそ、今は落ち着いた。「なんて完璧な罠だ。出会いから、子供の病気、そして救いの手まで......すべてが仕組まれていた。俺は完全に、KLの医療ネットワークの人形になった」「つまり」晴人の声が氷のように冷たく切り込んだ。そこに一片の同情もない。「KLグループの誰かが新しい肝臓を必要としたとき、お前らが選んだのが、俺の母だったというわけか？健康で、血液型も適合する肝臓バンクを」コールマンは苦しい表情で目を閉じた。否定はしなかった。「手術の計画は？」晴人は鋭く問い詰めた。逃げ道は許さない。コールマンの声は枯れていた。「計画では、夏希さんの肝臓の一部を切除し、
山口社長もう勘弁して、奥様はすでに離婚届にサインしたよ 第1501話
晴人は半歩前に踏み出した。その瞬間、見えない圧迫感が一気に強まった。「今のコールマンには自分の身すら守れない。KLグループが切り捨てるのは、核心にいる専門家か、それとも偶然に秘密を知りすぎてしまい、無理やり協力させられ、いざという時にすべての罪を背負わせられる道具人間か、どっちだと思う？」ホークの顔から血の気が完全に引き、体が小刻みに震え始めた。「コールマンを告発しろ」晴人の声には脅しの色はなかった。ただ淡々と選択肢を提示しただけだった。「共犯として協力すれば、まだ道は残されている。だが、これ以上かばい続ければ、お前はKLが療養施設で行っていた違法な人体実験、そして人身傷害の主犯になる。死ぬまで牢に閉じ込めてやる。選べ」ホークは力が抜けたように椅子に崩れ落ち、絶望的な声で言った。「コールマンが俺を脅したんだ！数年前、俺が担当していたVIP患者の術後に、わざと薬の処方ミスを誘発する罠を仕掛けてきた。俺が誤った薬の投与をしてしまい、その結果、患者は深刻な肝臓と腎臓の損傷を負った。そして彼はそれを修正したんだ。外には薬の副作用だったと発表して......その上で全部の記録を消してくれた。だけど裏では、その事故報告を盾に、ずっと俺を脅してきた......選択肢なんてなかったんだ！」「コールマンはなぜKLグループと手を組んで人体実験なんかしてる？」ホーク：「俺の知る限り、彼の息子がKidd型の血液で、しかも遺伝性疾患FHLを患っていた。KLが適合するドナーを見つけて、移植を行ったんだ。それ以来、彼はKLと完全に手を組み、裏で実験に協力してきた」「息子？」晴人が眉をひそめた。「彼の息子なら会ったことがあるが、病気なんて感じなかったが？」「今の奥さんとの間に生まれた子です。すごく大事にしていて、外に出さないようにしてるんです」「いつから俺の母に実験を？」ホークはしばらく考えてから答えた。「たぶん7〜8年前からだったと思います。記憶が曖昧で......」「じゃあ、この数年、母に出た症状のほとんどはお前たちの仕業か......」「......全部じゃないです。一部はそう、一部は違います」ホークは途切れ途切れに答えた。「コールマンはあえて強い薬は使わなかった。肝臓を傷つけたくなかったんです。以前、検査名目で密かに適合検査をしていて、成功して
山口社長もう勘弁して、奥様はすでに離婚届にサインしたよ 第1500話
晴人は尋ねた。「でも......この前、母が何度も吐血したのは、いったい何が原因だったんでしょうか？」それを聞いた医師は、しばらく考え込みながら答えた。「現在の検査結果を見る限り、薬の服用によって胃腸が刺激された可能性が高いですね。最近、お母さんが服用されている薬は何ですか？」晴人はポケットから二本の薬瓶を取り出して、手渡した。「これです」医師はラベルに目を通し、うなずいた。「もし本当に肝不全なら、この薬の組み合わせに大きな問題はない。しかし、肝不全がないのに服用すると、かえって肝臓に負担をかけることになる。」こう言いながら、彼は瓶の蓋を開け、中身の錠剤を数粒取り出すと、慎重に鼻先に近づけてにおいをかいだ。さらにスマートフォンの裏で一粒を潰し、薬粉の匂いを確認した。次の瞬間、刺すような酸っぱい化学臭と、言葉では表せない苦味が鼻を突いた。「これはおかしいですね。リファキシミンに、こんな強烈な酸臭は本来ありません。ラクトテゾールの味も、明らかに純度が低い」医師は眉をひそめ、粉末を指でつまんで光に透かして見た。「色が濃すぎます。未知の結晶成分や不純物が混入しているようです。警察に通報されたほうがいいかもしれません」彼はすぐに助手を呼び、薬のサンプルを検査室へ送るよう指示した。それを見届けてから、晴人は静かに言った。「警察への連絡は俺の方で行います。ただ、今は母の薬を調整していただけますか？」医師はうなずき、「承知しました」と短く答えた。病院を出る頃には、空がすっかり夕暮れに染まっていた。この一日、あまりにも多くのことが起きすぎた。夏希はとても眠れないだろうと、晴人は思った。彼はウィルソンに夏希のそばに付き添ってもらうよう頼み、自分は部下を率いて療養院へと向かった。事を荒立てぬよう、一晩で全てを処理するつもりだった。すでに療養院周辺には警備が敷かれており、施設内の患者たちは何も知らない様子で、普段通り散歩したり、早々に休んでいたりしていた。Dブロックの入口に車が到着すると、アレンが出迎えた。「カエサルさん、お待ちしておりました」二人は並んで中へ歩き出した。アレンが小声で状況を報告し始めた。「コールマンとホークは別々の部屋に拘束しました。実験室は封鎖し、機材や書類類はすべて保管しております」「夏希さんのお部屋とリビン
山口社長もう勘弁して、奥様はすでに離婚届にサインしたよ 第1499話
二時間の長い待機の後、すべての検査結果がようやく出揃った。最初に結果を受け取ったのは晴人だった。彼は真剣に内容を確認した。データや影響が理解できなくても、最後にまとめられたレポートがあった。肝臓の超音波検査結果は次のように記されていた：肝臓の大きさと形はほぼ正常で、エッジがはっきりしており、実質のエコーは均等で、肝内血管の走行は自然で明瞭、門脈の内径、流速はすべて正常範囲内で、腹水も脾臓の腫れもなし！肝機能のデータも各項目がほぼ正常範囲内だった。「どうだった？」ウィルソンが緊張した様子で尋ねた。夏希は晴人を見つめ、車椅子の肘掛けをしっかりと握った。晴人は安心した様子で、報告書をウィルソンに渡した。報告書を読んだ後、ウィルソンは医療の知識がなくても、夏希の肝臓に問題がないと理解できた。ウィルソンは、笑っているのか、泣いているのか分からないような複雑な表情を浮かべながら、検査報告書を夏希に手渡した。「夏希の肝臓には問題がない！」これは良いことだ！でも、それは同時に、コールマンに長年騙されていたということを意味する！夏希の病状はコールマンが偽造したものだ！ウィルソンは心の中で失望を感じた。彼と夏希はコールマンを信頼していたのに、まさか彼がそんなことをしていたなんて！夏希は震えながらその薄い紙を受け取り、何度も目をその文字の上で彷徨わせた。これまでの何年もの間、彼女の体調は良くなったり悪くなったりして、常に死の影に悩まされていた。でも今、突然誰かが言った。「あなたの病気は全部嘘だ。最も信頼していた医者があなたを騙していた」まさに夢のようで、信じられない話だった！「父さん」晴人が声をかけ、ウィルソンと夏希の感情に割って入った。「今すぐコールマンとホークを監視し、療養院と実験室を封鎖し、すべての実験室のデータを保存させて。誰も近づけないように。私は彼らが実験室で別の研究をしていたのではないかと疑っている」ウィルソンはその言葉を聞くと、体中に寒気を感じた。実験室は本来、夏希のために薬を研究するために使われていた。しかし、夏希に病気はない。では、コールマンは一体何を研究していたのか？幸い、彼らは事前にこれを発見した。もし療養院で違法な実験が行われていることがメディアに暴露されれば、ウィルソングループ
山口社長もう勘弁して、奥様はすでに離婚届にサインしたよ 第1498話
ウィルソンは晴人の言い方に違和感を感じて尋ねた。「カエサルの言っていることはどういう意味だ？」療養院内で、晴人がウィルソンと夏希に真実を伝えなかったのは、療養院内がすでに安全ではないと感じていたからだ。コールマンは院長として十年以上も勤務しており、療養院のすべてを掌握している。治療の機会を利用して、夏希の部屋に盗聴器を仕掛けることなど簡単にできるだろう。また、晴人自身の車が療養院に頻繁に出入りしていたため、彼はそれも危険だと感じ、来る前に念入りに車を点検させた。しかし、特に怪しい部品は見つからなかった。そのため、今になって真実をウィルソンと夏希に伝えたのだった。晴人の言葉を聞いたウィルソンと夏希は驚いで、信じられない表情を浮かべた。コールマンは彼らの十年来の知人であり、まさか夏希を実験に使い、彼女の健康な肝臓を取り出そうとするなんて信じられなかった。それはあまりにも恐ろしいことだ。しかし、ウィルソンは知っていた。由佳の長男メイソンも夏希と同じ血液型で、KL病院で生まれた直後に誰かに奪われたのだ。彼はKLグループが人体実験を行う時、貧しい家庭の人々をターゲットにすると、人体実験のことを簡単に隠蔽できると考えていた。まさか、彼らが夏希にまで手を出すとは思っていなかった。もしそれが本当なら、KLグループは断罪されるべきだ。夏希はまだ驚きのあまり呆然としていた。「これはあり得ないでしょう？コールマン院長がどうして？」言いかけて、夏希の声は小さくなった。先ほど、コールマンがずっと彼女を療養院から出さないようにしていたことを思い出した。まさか。晴人は冷静に言った。「俺たちが病院に行って再検査を受ければ、すべてが明らかになる」「うん」夏希は頷き答えた。療養院には資格があり、晴人は秘書に療養院が発行した検査報告書を持たせ、ジョンソン大学病院で緊急診療を予約してもらった。この病院は教育病院であり、嵐月市でも一流の公立病院である。報告書によると、夏希の病状は非常に緊急を要するため、特に待つことなく医師の診察を受けることができる。彼らが到着したとき、救急室の受付看護師は身分確認をした後、すぐに広々とした評価室に案内した。すでに待機していたのは、表情が厳しく、鋭い目つきをした中年の急診科の主治医だった。
