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第3話 ​

Autor: オレンジよ​
結局、琉太は迎えに来なかった。

家には帰りたくなかった。

運転手を先に帰らせ、一人で街を歩くことにした。

ショッピングモールの入り口に着いた途端、琉太と美帆の姿が目に飛び込んできた。

二人はまるで少女漫画から飛び出してきたかのように、お似合いのカップルに見えた。

美帆は私に気づくと、一瞬だけ瞳を輝かせた。

琉太の腕をぎゅっと抱き寄せると、真っ直ぐにこちらへ歩いてきた。

彼女の声は甘ったるく、けれどその眼差しには鋭い棘が宿っている。

「天音、どうしてこんな所に一人でいるの?寂しそうだね」

私は口角を上げたが、作り笑いをするのさえ億劫だ。

「そうね、なにしろ私の婚約者は……」

琉太に視線を向けると、彼はわずかに眉をひそめた。

「美帆のお相手で忙しいみたいだから、一人なのは当たり前でしょう」

美帆の目尻がみるみるうちに赤くなった。

彼女は琉太の手を離すと、まるで耐え難い屈辱を受けたかのように振る舞った。

琉太はすぐさま彼女を背後に庇い、私を睨みつけた。その目には隠しきれない苛立ちが宿っている。

「そんなに刺々しい言い方しかできないのか?

何度も言っただろう、美帆は妹のような存在なんだ」

それを聞いた私は、自分でも驚くほど冷静だ。

美帆は声を詰まらせ、今にも私に頭を下げそうな仕草を見せた。

「琉太、天音を責めないで。

私がいけないの。私が謝れば済むことだから」

琉太は慌てて美帆を支え、ひどく心を痛めている様子だ。

「美帆、お前は何も悪くない。謝る必要なんてないんだ」

彼は私に向き直ると、重苦しい視線で脅すように見つめてきた。

「今すぐ美帆に謝れ。さもないと、タダでは済まさないぞ」

私は奥歯を噛み締め、口の中に鉄の味が広がった。

これ以上、どうやって自分を欺けばいいのかさえ分からない。

琉太の瞳にも心にも、美帆しか映っていないのだ。

「謝らないわ。一つも間違ったことを言ってないから」

彼の額に青筋が浮かび、眼差しは凍りついている。

背後にいた二人のボディガードが歩み寄り、乱暴に私の膝の裏を蹴り上げた。

激しい痛みが走った。

不意を突かれた私は、美帆の前で無残にも膝をついてしまった。

琉太は私を見下ろし、冷たい声で言い放った。

「謝り方を知らないのなら、教えてやる」

目の前にいるのは、母を殺した犯人だ。

それなのに琉太は、その犯人に跪いて謝れと言っている。

屈辱が全身を駆け巡った。

私は勢いよく顔を上げ、彼の顔を釘付けにするように睨みつけた。

「稲玉琉太。今日のこの辱め、一生恨んでやる」

私の視線に気づいた彼は、一瞬だけ、ほとんど気づかれないほど動きを止め、思わず私を助け起こそうとした。

そのとき、美帆はかすかに声を漏らし、彼の胸に崩れ落ちた。

「美帆!」

琉太の顔色が激しく変わった。

彼はすぐさま彼女を横抱きにすると、私には目もくれず、急ぎ足でその場を去っていった。

周囲の野次馬の視線が、針のように背中に突き刺さった。

私は震える膝を支えながら、ゆっくりと立ち上がった。

帰宅後、そのまま琉太の書斎へと向かった。

美帆の誕生日を打ち込み、彼の金庫を開けた。

覚悟はできている。

不思議なことに、もう悲しみさえ感じなかった。

金庫の中には、高価な品は一つもなく、ただ一通の書類が静かに収められていた。

それを取り出した。

いざ証拠を目の当たりにすると、やはり胸の奥が疼くように痛んだ。

麻痺していたはずの傷口が再び抉られ、腐りかけた肉が露わになったような感覚。

琉太は私の筆跡を真似て、この同意書に署名していたのだ。

私はスマホを取り出し、一ページずつ鮮明に写真に収めた。

力んだ指先が白くなり、激しく震えている。

――琉太、必ず報いを受けさせてやる。

書斎を出ようとしたとき、階下で物音がした。

美帆のか細い声が響いた。

「琉太、やっぱり帰るわ。天音が気を悪くしちゃうもの」

私は階段を降りていった。

リビングで、顔を青ざめさせた美帆が琉太の胸に寄り添っている。

琉太は私に視線を向けたが、美帆に向けられていた柔らかな眼差しは、私を見るや否や冷徹なものへと変わった。

「ちょうどいいところに。

美帆は体調が良くないから、しっかり休まなきゃ。今日から彼女はここに住むことにした」

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