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第80話

Author: ASAMI
last update publish date: 2026-09-05 19:36:41

ロンドンでの歴史的大成功を収めたワールドツアーの熱狂は、次なる公演地である芸術の都・パリへと引き継がれていた。

シャンゼリゼ劇場の華やかな楽屋。

窓からはセーヌ川の穏やかな川面と、夕陽に染まるエッフェル塔が見える。

私は大切に抱えた『黒のストラディバリウス』の弦を丁寧に拭いながら、静かに息を吐き出していた。

「音羽、パリ公演のチケットも全席即日完売だよ。現地メディアは『奇跡の旋律を奏でるミューズ』と大々的に報じている」

ケビンが温かいカフェオレのカップを手に、柔らかい笑みをたたえて近づいてきた。

「ありがとう、ケビン。……なんだか、世界中どこへ行っても温かい歓声に包まれて、胸がいっぱいになるわ」

「君が自分の過去と向き合い、その傷を美しい音楽へと昇華させたからだ。ヨーロッパの聴衆は、君の音の中に宿る『真実』を感じ取っているんだよ」

ケビンの言葉に、私は深く頷いた。

おばあ様が残してくれたこのヴァイオリンと、ケビンの存在。それが私を暗闇から救い出してくれたことは、生涯変わらない真実だった。

同じ頃、太平洋を隔てた日本――東京拘留所の冷たい一室。

面会室のアクリル板を隔てた向こう側に、神
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