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第6話

Author: 鳳小安
凛花は、自分が代わりだったなんて、これまで夢にも思わなかった。

けれど瑠璃の姿を見た瞬間、それまで曖昧だったすべての疑問が、鮮やかに繋がった。

黎真が白いワンピースを好んだ理由。

それは、瑠璃が白を愛していたから。

彼が彼女に髪を伸ばすように言った理由。

それは、瑠璃が長い黒髪だったから。

染髪を禁じたのも、彼が贈り続けたバッグも——

すべて、瑠璃の影だった。

今夜、瑠璃が持っていたあのバッグ。

それは黎真が、凛花に三度も贈ってきた、あの定番。

全部、彼女のためだったんだ。

凛花は目を伏せた。

気づけば、瞳がじんわりと赤く滲んでいた。

ボロボロになったドレスのまま帰宅した彼女は、冷たい床に身を寄せて、ただ窓の外の月を眺めていた。

七年前のあの日が、ふと脳裏に浮かぶ。

初めて黎真と出会ったのは、あるバーだった。

お金がなくて、バイトを始めたその場所で——彼に出会った。

彼は一目で彼女を選び、秘書として雇った。

いつしか、感情が芽生え、彼の愛人になった。

公にはできない関係だったけれど、「そのうちきっと正式に」と信じていた。

だけど、違った。

どれだけ時間を費やしても、彼にとって自分は本命ではなかった。

この夜、凛花はようやく決意した。

彼のもとを、離れよう。

翌朝、凛花はいつもより早く目を覚ました。

辞表を出すと決めていた。

階下に降りると、そこには黎真の姿があった。

彼女を起こさないように、ずっと待っていたのだろう。

そして、彼女が大好きだった駅前の焼き鮭定食。

わざわざ長蛇の列に並び、買ってきたという。

彼の姿を見ても、凛花は特にこれといった反応を見せなかった。

「起きたか?」

彼が微笑む。

「お前の好きな駅前の焼き鮭定食だよ。ずっと並んで買ったんだ、食えよ」

「お腹すいてない」

凛花は靴を履き替え、出かける準備をする。

彼女の素っ気ない態度に、黎真の顔が曇る。

「なんだその態度は?どれだけ並んだと思ってるんだ!」

「神谷社長。私はそんなもの、頼んでません。今出かけるので、口論してる時間はありません」

彼が腕を掴んだ。

「瑠璃のことで怒ってるのか?」

凛花は唇を引き結んだまま、何も言わない。

黎真は冷たく笑った。

「どうせお前は俺と結婚できない。『代わり』かどうかなんて、関係あるのか?」

その言葉は、鋭く心に突き刺さった。

凛花は静かにうなずいた。

「関係ありません。神谷社長、もう時間です。私、出社しないといけませんので、手を離してください」

会社へ向かう前、彼女は美容院に寄った。

七年もの間、彼に命じられて伸ばしてきた髪。

本当は、肩につくくらいの長さが一番好きだった。

迷わずハサミを入れ、軽やかなショートヘアに生まれ変わった。

髪を切り終えた時、胸の奥に風が吹いたように、心が軽くなった。

会社に着いたのは、すでに始業時間を過ぎていた。

けれど、不思議と罪悪感はなかった。

すれ違った社員たちが、驚いたように声をかける。

「白川さん、髪切ったんですね!?すごく似合ってます!」

「うんうん、ショートの方が素敵ですよ!清潔感あるし、キリッとしてて!」

凛花は微笑んだ。

「そう?私も気に入ってるの」

自席に戻り、パソコンを立ち上げる。

すぐに辞表を書き上げ、プリントアウト。

それを黎真に手渡すため、執務室へ向かうと、彼の姿はなかった。

代わりに、彼の運転手が書類を取りに来ていた。

凛花は辞表を渡した。

「これを、神谷社長にお願いします」

その辞表を受け取った黎真は、一瞬、驚きで目を見開いたが、すぐにふっと笑った。

「俺がいなきゃ、生きていけないくせに。瑠璃が戻ってきたからって、拗ねてるだけだ。ほっとけ。そのうち戻ってくる」

会社をあとにした凛花は、タクシーで自宅へ戻った。

いや、かつての自宅だった。

この部屋は黎真が与えたもの。

愛人として囲うための部屋。

すべてを断ち切ると決めた今、この部屋にも、もう未練はなかった。

扉を開けると、ふわりと香水の香りが鼻を掠めた。

あの香水。

黎真が贈ってくれた、世界に一つだけのオーダーメイド。

もったいなくて滅多に使わなかった。

彼が来る時だけ、特別に纏っていた。

足取りを速めてリビングへ入ると——

そこには、見覚えのある女が、ソファに座っていた。

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