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第3話

Author: 藤白てるえ
私は必死に節約を始め、彼のためにも切り詰めようとした。

病院と彼氏の会社を行き来し、夜勤明けにそのまま彼の手伝いに行くこともあった。

デスクにもたれて少し仮眠を取り、朝に顔を洗ってまた病院へ戻るのが日常だった。

その時期、私は体重が五キロ近く落ちた。

ちょうどその頃だ。陸人の親友の口から、会社に新人が入ってきたと聞いたのは。

あの日、私が差し入れを届けに行くと、入り口でタバコを吸っていた陸人の親友が私を見て笑った。

「美鈴さん、また甲斐甲斐しい彼女をやりに来たの?」

少し言葉を交わす中で、彼から何気なく教えられた。

新しく入った鈴木伊織という子は、大学を出たばかりで、明るくよく笑うらしい。

しかも入社初日に、会社のみんなの前で陸人に告白したというのだ。

私は一瞬呆然とした。

親友は慌ててフォローした。

「でも美鈴さん、安心して。陸人のやつ、その場できっぱり断ってたから」

親友が言っていた、伊織というその女の子に初めて会ったのは、陸人が開発に携わったゲームの発表会の日だった。

発表会は土曜日に予定されており、私は彼を手伝うために、一日だけ休みを確保しようと何日も連続で深夜残業をこなした。

幸いにも、発表会は大成功に終わった。

夜の打ち上げには、私も無理をして顔を出した。

個室の中はとても賑やかで、グラスを合わせる音と笑い声が混ざり合っていた。

私は隅のソファに座っていたが、連日の疲れがどっと押し寄せ、いつの間にか眠りに落ちていた。

再び目を覚ました時、耳元にはまだ騒がしい人々の声が響いていた。

私が起きたことには、誰も気づいていなかった。

個室の中は薄暗い照明に包まれ、場は熱気を帯びている。社員たちがテーブルを囲んで大騒ぎしていた。

テーブルの上には王様ゲームに使ったらしい空き瓶が転がっており、瓶の口はまっすぐ伊織のほうを向いていた。

誰かがテーブルを叩いて囃し立てた。

「伊織、正直に言えよ。今回の発表会、お前が一番気合い入ってたんじゃないか?毎日一番遅くまで残業して、陸人より帰るの遅かったし。一体何が目当てだったんだ?」

伊織は陸人の隣に座り、顔を真っ赤に染めていた。

彼女は口元を綻ばせて照れくさそうに笑い、チラリと隣の彼に視線を送った。

「もう、変なこと言わないでくださいよ」

「変なことなんて言ってないだろ」

その男はさらに囃し立て、陸人に向かって意地悪く笑った。

「陸人、マジな話、伊織がこの期間こんなに頑張って手伝ってくれて、あちこち奔走してたの、誰のためかなんてみんなお見通しだぜ。お前、なんとも思わないのか?」

個室の中が一瞬、静まり返った。

すべての視線が陸人に集まった。

彼の口調には、少しばかりの笑みが混じっていた。

「確かに、よく頑張ってくれたよな」

陸人は首を傾けて伊織を見つめ、わざと彼女をからかうように、ゆっくりと言葉を継いだ。

「それじゃあ、伊織さんには俺の――」

伊織の目が輝いた。

「チームリーダーになってもらうか」

その言葉が落ちるや否や、個室の中に大きなブーイングが巻き起こった。

陸人の親友がテーブルを叩き、彼を指差した。

「陸人、お前マジでつまんねぇな」

伊織は陸人を小突いて、拗ねたように言った。

「誰がリーダーになんてなりたいですかぁ」

伊織はさらに身を寄せ、ほとんど陸人の腕に触れるほどの距離だった。

陸人は声を抑えて低く笑った。

誰も気づいていなかった。部屋の隅のソファで、私が黙ってそのすべてを見つめていたことに。

場の空気は依然として盛り上がったままだった。

だが私は、個室のドアを押し開けて外へ出た。

窓辺に立ち、外の夜景を眺める。

夜風が少し冷たくて、顔に当たるとふいに身震いがした。

どれくらい経っただろうか、陸人が私の後ろにやって来た。

その口調は、ごく自然なものだった。

「いつの間に出てたんだ?まだ帰らないでくれよ、酒飲んじゃって運転できないから、後で送っていってほしいんだ」

私は陸人を見た。

陸人はこのところ忙しすぎて、外での付き合いも多く、酒を飲むと必ず私に電話をして迎えに来させていた。

私は毎回必ず迎えに行っていたが、まさか彼の中でそれがすっかり当たり前になっているとは思わなかった。

陸人を見つめながら、私は唐突に口を開いた。

「陸人。私だって、ここ最近ずっと疲れてるのよ」

彼はハッとした顔をした。

「今日のあなたに付き合う時間を作るために、何日も連続で残業したの。発表会だって朝から晩まで走り回って、あなたの用事は一つも取りこぼさずにこなしたわ」

この瞬間、言葉を発するだけでもひどく体力を消耗するように感じられた。

「どうして私には『疲れてないか』って聞いてくれないの?どうして私にも何かしてあげようって、少しも思ってくれないの?」

陸人は黙って私を見つめていた。

少し離れた個室から、またドッと笑い声が漏れ聞こえてきた。

その中に混じる伊織の声は、高く澄んでいて明るかった。

陸人は何かに気づいたように、眉をひそめて私に言った。

「さっきの、聞いてたのか?変な誤解をするなよ、さっきのはただみんなでふざけて囃し立ててただけで、本気じゃないんだから」

私は何も答えなかった。

陸人はため息をつき、一歩前へ出た。

「美鈴、あんな弱い女の子と張り合うなよ。君は違うだろ、俺の彼女なんだから。俺たちの間に、あんな言葉なんて必要ないじゃないか」

心臓に、針で刺されるような鋭い痛みが走った。

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