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第30話

Author: まいにち
若魚はその場に立ち尽くし、目の前に差し出された戸籍文書と手形を見つめ、それから、背を向け、肩をかすかに震わせるその男を見つめた。長い間、身動きひとつしなかった。

風が額にかかる後れ毛を吹き上げ、なめらかな額と、あまりにも静かなその瞳を露わにした。

彼女の胸の内では、途方もない波が逆巻いていた。

自由?

これほど長く渇望し、あがき続け、命を懸けてまで求めたはずの自由が、今、こんなにもあっさりと、目の前に差し出されている?

玄舟が……本当に、自分を手放す気になったというのか?

これほどまでに、自ら退路を断つような形で?

彼女は、無理やり平静を装いながらも、その背中からさえ深い悲しみが滲み出ている姿を見つめた。頭の中に、いくつもの光景が、抑えようもなく次々と浮かんでは消えていった。

刃から彼女を庇い、飛び込んできたときの、あの決然とした眼差し。

高熱にうかされながら、繰り返しつぶやいていたあの懺悔とうわ言。

傷ついた身体で、寒風の中に頑なに立ち尽くしていたあの姿。

虎符と玉璽を彼女の前に置き、「この広い天下でさえ、そなたの笑顔ひとつにも及ばぬ」と言った、あの狂気じみた言
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