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第750話

Author: シガちゃん
「と……とにかく、由奈を、連れ戻してちょうだい!」

千代はまだ言葉こそたどたどしかったが、以前に比べればはるかに話せるようになっていた。

祐一はふと目を上げ、母を見つめる。その瞳に宿る焦りは、演技ではない。

あまりの変化に、彼自身も驚きを隠せなかった。

「前は由奈のことをあまり快く思っていなかったのに。今はそんなに会いたいんですか?」

冗談めかして尋ねると、千代は言葉に詰まり、やがて静かに目を伏せた。

「あんたには……分からないわ。意識がない間、夢を見たの。その夢の中で、小さな子が『僕のお母さんは池上由奈』って言ったのよ。あれはきっと、私の孫だったの」

その言葉に、祐一は息をのむ。

「千代、それは夢だよ」将平が優しく諭すように言った。

千代の表情には、拭いきれない寂しさが浮かぶ。

まるで、あの夢を現実として受け入れてしまっているかのようだった。

「でも……あの子が……」

千代の目に涙が滲む。

夢の中の子どもの顔はもう思い出せない。それでも、その存在だけは確かに心に刻まれていた。

――あの子がいなければ、自分は目を覚ませなかった。

そんな気さえしていた。

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