LOGIN私が通ってた学校では、小学4年生から家庭科の授業でミシンを使うんだけど、1台だけ、使用禁止のミシンがある。
そのミシンは比較的新しく見えるし、クローバーのプリントもされてて、すごく可愛い。 他のミシンは可愛いプリントがあるのなんてほんの一部だし、どれもうっすら黄ばんでいて、使おうと思わない。ミシンを選ぶときは、みんな極力白に近い色のものを選んでた。クラスメイト全員が一気に押し寄せてミシンを取りに行くから、時々バレないだろうと思って使用禁止のミシンを使おうとする子がいるんだけど、定位置においてあるからか、先生はすぐに気づいて違うミシンを使うように言う。
皆、特に女子は、可愛いミシンを使えなくて悔しがっていた。Aちゃんっていう子がいるんだけど、彼女が日直の日、家庭科があって、Aちゃんが「私、今日絶対あのミシン使うんだ」って言ってた。
家庭科の時間になると、Aちゃんは予告通り、例のミシンを持ってきた。 「すごい! どうやって持ってきたの?」 「日直だから先に来て鍵を開けるでしょ? その時、他のミシンと場所を入れ替えてたの」 その手があったかと、同じグループの子達は膝を叩いた。針や糸をセットして縫い始めてすぐ、向かいの席にいるAちゃんが悲鳴を上げた。ミシンの針がAちゃんの指を貫いていたのだ。
Aちゃんはミシンから手を放したのに、ミシンは動き続けて、Aちゃんの指を布に縫い付けた。先生が慌てて来て、救急車を呼んだ。私達は教室に戻され、Aちゃんは先生と一緒に病院に行った。
教室で皆があのミシンはなんなのか話し合っていると、教頭先生が来て、そのミシンについて話してくれた。7年前、女の子が誤作動で自分の指を縫ってしまった。今日のAちゃんのように。それからそのミシンを使うと絶対に同じような事故が起きる。だから使用禁止にしたらしい。
「そんなミシン、捨てたほうがいいんじゃないですか?」
「その通りですね。我々も捨てようとしましたが、家庭科室からミシンを出そうとすると、事故が起きてそれどころじゃなくなるんです。お祓いをするにしても、お金がかかりますし、誰もお金を出したがりません。なので、ミシンは使用禁止にしておこうということになったんです。 我々がケチなせいで、みなさんをキケンに合わせて申し訳ない」 教頭先生は深々と頭を下げると、アニメのDVDを見せてくれたし、給食の時間に、皆にお菓子を配って、「誰にも言わないでください」と言ってた。翌日、学校は何故か休みになった。
こっそり覗きに来たもの好きな子がいて、「神主さんみたいな人が来て、ミシンを持って行ってた」と言う。 半信半疑だったけど、次の家庭科の授業で家庭科室に入った時、ミシンは消えてたから本当なんだと思う。その後、教頭先生が自分のお金で神主さんを呼んだという噂が流れていた。
学生の頃、AとBがいた。Aは横暴なヤツで、気に入らないとすぐに暴れ出すような問題児。Bはおとなしいけど、成績優秀だった。 AはBのことが気に食わないらしく、よくいじめていた。殴る蹴る、暴言は当たり前。目の前で物を壊したり、絵の具や墨汁で汚れた水に、Bのノートや教科書を突っ込んだりしてた。 いじめっ子のAはいつもふんぞり返ってたし、苛められっ子のBは、いつも俯いていた。 俺も、クラスメイトも、怖くてBを助けられなかった。 Aは俺と部活もクラスも同じだから、よく一緒にいた。というか、向こうが友達と思い込んでつきまとってきた。嫌だけど、断ったら何されるか分からないので、適当に話を合わせたり、愛想笑いをしてたけど、これが結構疲れる。 いつ頃からだったか。Aは頻繁に怪我をするようになった。なにもないところで転んだり、飛び出していたフェンスの針金で腕を裂いたり――。 最初は「呪われてるんじゃね」とか「ドジだなぁ」とか、皆軽く見てたけど。毎日のように怪我をするものだから、笑い話にならなくなってきた。 心配した両親に連れられてお祓いに行ったらしいんだけど、効果なし。Aはこのことにイライラしたのか、前よりBに当たるようになった。 秋、AはBを突き飛ばし、Bは階段から落ちて骨折した。直後、Aも階段から落ちた。少し離れたところで見てたんだけど、誰かに突き落とされるように見えた。でも、Aの後ろどころか、周りに人はいなかった。 Aは右腕、Bは左腕を骨折した。 俺は先生に頼まれて、ふたりの荷物をまとめることに。「なんだ、これ」 先にBの荷物をまとめてると、中には札が入ってた。木製の札で、皿みたいな絵が彫られている。かなり古いものだ。その札は、田舎のジジババの家にある表札を連想させた。 Aのカバンを机の上に置くと、固いものが当たる音がした。形が崩れないように、薄っぺらい板が入ってることがあるけど、それよりも固いものが入ってる気がする。 カバンをひっくり返すと、カバンと同じ生地が、不自然に縫い付けられている。ほつれている部分を広げてめくると、Bのカバンに入ってた木札と似たようなものが見える。「あーあ、見つかっちゃった?」 振り返ると、保健室で寝てたはずのBが、出入り口に突っ立っている。腕は三角巾で固定されているが、目に涙を溜めている。「安静にしてたほうがいいん
真新しい水族館で働いてた時の話。 施設に魚を入れたりする段階からいたんだけど、オープンする前にトラブルが起きてた。 目玉の大水槽には、様々な魚が入れられた。海を切り取ってそのまま持ってきたみたいで、迫力もあって綺麗だった。当時研修生で、魚にそこまで詳しくなかった俺でも、人気になるって確信するほど立派だった。 問題が起きたのは、大水槽に魚を入れた翌日。 何百尾の魚がいたのに、翌朝には数える程度にしかいない。準備中ってこともあって、カメラもまだ設置されてなかった。 上の人達が相談した結果、新しく魚を仕入れている間に、カメラを設置しようということになった。 それまでは、普通のカメラを三脚で固定して、それで撮ることにしたらしい。結果、そのカメラには、不審なものは映らなかった。 半月後、大水槽に魚が入った。魚もタダじゃないから、上の人も必死なのだろう。俺と、もうひとりの研修生であるAは、見張りを命じられた。 最初は嫌だったけど、2万円を握らされたので、喜んで引き受けた。 夜中。さすまたを持たされた俺達は、パイプ椅子に座って大水槽を眺める。隣には三脚に固定されたカメラ。「犯人はどうやって魚を捕まえたんだろ?」「網じゃね? 1匹1匹釣ってたら、朝になっちまう」「やっぱ網か。でもよぉ、大量の魚捕まえて、どうすんだよ」「売るんじゃね―の」 他愛のない話をしていると、異変がおきた。 1尾のサバが、むくむくと膨れ上がり、5倍くらいの大きさになった。それだけでも驚きなのに、人間の体みたいなのが生えてきて、他の魚を捕まえては、手づかみで丸呑みにしていく。 魚達は逃げていくが、魚人の方が早い。 サバの魚人は残りが10尾前後になるまで食べ続け、数が減ると元の姿に戻り、のんびり泳ぐ。 その間、俺達は固まってしまって、通報さえできなかった。そもそも、どこに通報していいのかさえ分からないんだけど。 カメラを確認すると、サバが魚人になるところも、他の魚が食べられるところも映っていた。「やばくね、これ」「マジで意味わからん――」 証拠映像があることに安堵すると、俺達はスタッフルームに移動して、戸締まりをし、そこで朝が来るのを待った。 翌朝、上の人達が来ると、一緒にビデオを確認した。上の人はなんとも言えない顔で映像を見ると、俺達に「帰ってよし」と言うので、辞
お盆休み、実家に帰った時に起きた不思議な出来事。 俺には5歳になる可愛い姪がいた。それぞれ違う土地に住んでるので、会うのは年末年始とお盆くらいなんだけど、懐いてくれてるから、姪が可愛くて仕方ない。 滅多に集まらないし、実家はド田舎で遊ぶ場所があんまりないからって理由で、近くにある山で、バーベキューをすることに。 メンバーは、俺、嫁、兄、兄嫁、姪、父、母の7人。 最初は姪を中心にワイワイやってたんだけど、まだ5歳の姪は、すぐにお腹いっぱいになって、眠くなってしまった。 兄嫁が姪をテントに連れて行って寝かしつけた後は、大人の時間。久しぶりの再会、非日常。そして酒。それらが揃えば、大人達はすぐ話に夢中になる。会社で何があったとか、どこに旅行行ったとか、病気がどうとか、話はなかなか尽きない。 2時間も経った頃だったか。兄嫁が、姪に水分を取らせようと、テントに戻る。俺達が駄弁りながら兄嫁が戻ってくるのを待ってると、テントから兄嫁の悲鳴が聞こえた。 驚いてテントを覗くと、兄嫁が震えて泣いていた。「どうした!?」「姪ちゃんが、いないの」 俺達の酔いは、一気に醒めた。幸い、山の中でも電波はあるので、兄は警察に電話した。 兄嫁、母はテントで待機。姪が戻ってきた時のために、ふたりを置いて、俺と嫁、兄と父のペアで分かれて、姪を探すことに。「姪ちゃーん、どこにいるのー?」「姪ちゃん、出ておいでー!」 声を張り上げながら探すけど、どこにも見当たらない。1時間くらいすると、警察も合流してくれた。 姪がいなくなったことに気づいたのは14時頃。15時に警察合流。 17時頃、疲れて石に腰を下ろす。持ってきた水がなくなったから、1回帰ろうと嫁に提案しようとすると、「こっち」と声が聞こえた。 声がする方を見ると、30センチくらいの小人が、俺達を見上げている。小人は頭の毛がまばらで、ボロい布を体に巻いていた。「うお、なんだ、コイツ!」「怖い――」 嫁は俺にしがみつく。「女の子、こっち」 小人の言葉に俺達は顔を合わせ、そいつについていくことにした。「迷子、怒られる。だから、隠れる。子供、怒られる、死ぬほど怖い」 小人は上記の言葉を何度も繰り返しながら、根っこでぼこぼこした道をすいすい歩いていく。歩幅は俺達のほうが圧倒的に大きいのに、ついていくのがやっとだ。
僕が住んでた町は、海沿いにある。ただ、砂浜は小さいし、夏になっても海の家はないので、観光客は来ない。 だから地元の人達は、そういったトラブルとは無縁で、好きな時に海に来れた。 ただ、海に行くにはひとつ、決まり事がある。 砂浜のすぐ近くには洞窟があって、洞窟の奥には海神様の祠がある。海辺に行くのなら、その祠に挨拶をしに行かなくてはならない。 お婆ちゃんは、人の家に遊びに行く時にお邪魔しますって言うのと同じって言ってた。 大人達がどうだったかは知らないけど、こんな面倒な決まりを守る子供は少数派だった。 僕が良く一緒に遊ぶグループだって、決まりを守ってるのは僕くらいだ。いくら言っても、皆守ろうとしない。それどころか、「そんなことしてないで、はやく遊ぼうぜ」と言って、僕に破るように言ってくることさえある。 それでも僕は、決まりを守った。 海神様を信じてたからではなく、お婆ちゃんの言うことは絶対って思ってたから。 小学6年生の夏休み。皆で海に行って泳いでた。僕らは遊ぶのに夢中になってて気づかなかったけど、いつの間にか海が荒れて、波が高くなっていた。 やばいと思って陸に向かう頃には、波が迫ってきて、僕らは波に飲まれてしまった。 すごく苦しくて、このまま死んじゃうんだって悲しかったのを覚えている。 僕は病院で目が覚めた。両親とお婆ちゃんが心配そうに僕を見ている。 後から警察が来て、色んな話を聞いた。まず、僕は2日寝てたことを聞かされた。 近くの家の人が心配になって見に来たら、僕だけが打ち上げられていたらしい。他の子達は行方不明で、遺体すら見つかっていないという。 僕は悪くないんだけど、一緒に遊んでた子達の親に逆恨みをされてはまずいから、夏休み中に引っ越した。 お婆ちゃんは、危ないからもうこの町に来てはいけないって言ってて、すごく悲しかった。 それから、お婆ちゃんは時々遊びに来てくれてたけど、町のことは何も教えてくれなかったっけ。 そうそう、引っ越す前にお婆ちゃんが、「お前が助かったのは、海神様にちゃんと挨拶をしてたからだよ。そのことを忘れるんじゃないぞ」って言ってた。だから僕は、引っ越し先でも、神様は大事にしてる。
高校生の頃の話。私はバ先でいじめられてたし、教師は嘘の報告を親にするせいで、親に怒られるしで、居場所がなかった。 親は更年期なのか、ちょっとしたことですぐに怒鳴る。 例えば、「今ちょっと調子悪い」って言ったら「お母さんだって大変なんだよ!」って怒鳴られたり、先生から、授業中に走り回ってたと嘘の報告電話があると、私の言い分を聞かずに怒鳴ったり。ちなみに私は走り回ってなんかいない。 ただでさえ転校して、慣れない土地でストレスが凄まじいのに、これらのことがあって、追い詰められてた。 パワハラが酷いからバイト変えたいって言うと、「そんなんじゃどこでもやっていけない」とか言われるし、パワハラで泣いて帰ってきたら、怒鳴られるしで、毎日死にたくて仕方なかった。「もうやだ、死にたい――」 転校先で出来た唯一の友であるAに愚痴ることで、私はかろうじて自分を保ってた。「そんなに死にたい死にたい言ってたら、シトメ様が来るよ」「なにそれ」「この辺で有名な話だよ」 Aはそれだけ言って、話の内容は教えてくれなかった。 数日後、私は怖い夢を見た。何故か川で釣りをしてて、大物が引っかかるんだけど、引っ張られて川に落ちる夢。 水が胃や肺にまで入ってくる感覚とか、苦しみとかが妙にリアルで、起きてから少し泣いた。 その日から、毎日毎日死ぬ夢を見た。通り魔に刺されたり、家でくつろいでたら、足元から燃えたり、高いところから落ちたり――。 どの夢も、恐怖や痛みがリアルで、起きる度に泣いていた。 夢を見るようになってから、半月後、担任の教師は交通事故にあって、意識不明の重体になった。クラスはざわついたし、泣いてる生徒が何人かいたけど、私としては嬉しかった。「なんか嬉しそうだね」 昼休み、一緒にお弁当を食べてたら、Aが言った。「あんまり大きい声じゃ言えないけど、しばらく先生が来ないからホッとしてる」「あー、変なこと親に吹き込むんだっけ?」「うん、そう――。そういえばさ、最近変な夢見るんだよね」「どんな?」「死ぬ夢」「なにそれ」「分かんないけど、毎日毎日、夢の中で死ぬの。殺されたり、事故だったり――。痛みとかリアルなんだよね――」「へぇ、怖いね」 いつものAなら心配してくれそうだけど、この時のAは他人事って感じで、ちょっとさみしかった。 悪夢を見るようになっ
中学生の頃、毎日下駄箱に手紙が入ってた。最初はラブレターだと思ってワクワクしてたけど、童謡の歌詞でがっかりした。しかも、歌詞はところどころ間違っている。 最初はふるさとだったんだけど、↓こんな感じ。うさぎきいしかのやまこぶなつりしかみかわゆめをいまもめぐりてわすれがみきてるさるいかにひます ちちははつつがなしや ともときあめにいぜにつけてもおもいいずるふるさるにころざしをはたしていつのげにかかえらんやなはあおきふるさとみずさきよきふるさい 毎日毎日、誤字がたくさんある童謡の歌詞が、下駄箱にある。 当時の私はお金に執着してたのか、刑事ドラマの影響なのか、「これを証拠として取っておいたら、なにかあった時に慰謝料もらえるかも」と思い、百均でファイルを買って、手紙が入ってた日付と気付いた時間を書いたメモと一緒に、ファイリングしていた。 友達にその話をすると、「その誤字、何かの文章になってるんじゃない?」って言うから、ノートを引っ張り出して、誤字を書き記してみた。最初にもらったふるさとをまとめてみると、「きみをみてるひといるにげなさい」 君を見てる人いる。逃げなさい ゾッとして、私も友達も悲鳴を上げた。実はこの頃、私の私物がやたらなくなることが多かった。シャーペンとか消しゴムとかだったんだけど、水着や体操服までなくなって、大変だった。 親は失くしたのに嘘をついてると思い込んで怒るし、先生も、まともに取り合ってくれないし、学校に行くのが嫌になってた。 他の手紙も誤字を書き記すと、とんでもないことが書かれていた。「更衣室、隠しカメラ」「クマのキーホルダー、音」「後ろ、気を付けて」 怖いけど、真実は知りたい。私達は次々に誤字を書き記していく。 そして最後の誤字を書くと――。「犯人は青山先生」 青山先生は担任であり、バレー部の顧問の先生だ。 私達は顔を見合わせて、先生の机を引き出しをそっと開けると、私の写真が大量に入っていた。ノートも一緒に入ってて、そこには私の行動や、その日の戦利品(盗品)について書かれてた。 私はパニックになって泣いちゃって、友達は私の背中を擦ってくれた。 隣のクラスの山口先生という中年女性の先生が何事かと来てくれて、事情を話して、引き出しの中身を見せると、血相を変えた。 私を軽く慰めると、廊下を走って